第24話 帝国と商業同盟対カモメ激突

 海峡を通過すると一旦大陸から離れようと思います。


 海峡の前で仕掛けられた罠は商業同盟の船が仕掛けて来たのだと思います。

 2隻の船の旗はナトネ国の物でしたが、その前からの訳の分からない追いかけっこは色んな国の船が混ざり過ぎていました。

 私達を罠猟の如く追い込んで行く勢子の役割だったのでしょうし、罠も2隻だけで無くもっといたのでしょうが、私達が早すぎてあの2隻だけが間に合ったのでしょう。


 サメのゴーレム(メドロンと命名するね by妹)は想定外だったでしょうね、いい気味ですわ。

 (脳筋モードに成ってるよ by妹)


 でもここまでするからには私に敵対していることは明白です。

 私も商業同盟を敵認定しましょう。

 (落ち着きな、敵認定は賛成するがまだ行動するのは早いぞ by大姉)

 む、そうですね、明白な敵対行動を低地連合国から行わせて叩き潰すのが理想的ですね。

 (脳筋が止まらん、どうにかしてくれ妹よ by大姉)

 (小姉、関係ない人達を巻き込んだらダメだよ by妹)

 そうでした、戦争で一番苦しむのは老人や女子供でした。

 仕方が有りませんここは騒動が起こらないように、遠回りして回避しましょう。


 エルゲネス国の沿岸を掠める様に北上します。

 北の海もさすがに7月近くになると日差しも暖かくなってきます、ヴァン国の首都に着く頃は7月に成っているでしょう。

 1日過ぎた翌日にヴァン国の港町ジュヘイモスへと北東へ舵を切りました、後は一直線にヴァン国へ帰るだけです。


 後2日も有ればヴァン国に着いたのですが、目の前の武装商船(低地連合国)と帝国の戦艦が意地悪にも通せん坊して来ます。

 戦って切り開くにしても相手に宣戦布告をはっきりと伝えたいじゃありませんか、カスミちゃんに音声画像付加魔道具に帝国や商業同盟の商船が使っている魔通信に繋げる事が出来るか改造してもらいました。


 カスミちゃんによると魔波の波長で同調機器を選択している為、幾つかの波長で試せば敵が何と言っているか分かるだろうとの事です。


 敵の魔通信を傍聴しましたが、言葉を符牒で喋る事で聞かれても内容が漏れないようにしているのが分かりました。

 これなら普通に喋れば繋がると思います。


 何回か聞いて恐らく旗艦と思しき最も口調の強い命令調の声の魔波長に返答する魔波長に合わせて喋ります。

 「これを聞いている帝国戦闘艦と商業同盟の武装商船へ告げる」

 「航路を遮るな、人に迷惑を掛けてはいけないと習わなかったのかね」

 「こちらの勧告に従わない時はしかるべく処置する、以上」


 「;lがgふぉれ90★kろ!!!」と話に成らない言葉が続いたが、しばらくして


 「こちらは帝国上級戦艦ハイネンク艦長イベルジ・アンプ・ボネ海軍提督だ。」

 「貴艦はカモメかな?」

 おやまぁ、海軍提督だそうですよ、お話しましょうね。


 「こちらはカモメ艦長カスミです」

 「なぜ前方を塞いでいるのか理由をお聞かせ願いたい」

 さてどう答えてくるでしょう?


 「ボネ海軍提督だ、貴殿への拘束命令により行動している。」

 「ここはおとなしく拘束されることを進める。」

 「当然反抗する場合は、武力による鎮圧が命令されている。」

 おお、武力による鎮圧ですか。


 「ボネ提督貴殿の命令内容を確認した、私は不当なる拘束命令には断固拒否する」

 「戦闘行為も辞さない、以上だ後は地獄で会おう」

 これで宣戦布告に成ったでしょうか。


 『レタ、戦闘態勢、敵は周囲の武装した船全てです、準備完了次第撃て!』

 カモメの速度を上げましょう、最大船速へ時速20ワーク(30km/h)へ速度を上げます。

 上空に飛行機が現れました、恐らく着弾観測のための飛行機でしょう。

 『レタ、偵察機が現れました、撃墜出来る様でしたら撃墜してください』

 レタとナミが上甲板に現れました、偵察機を狙うようです。

 波を乗り越えて移動するカモメの甲板上は酷く揺れます、撃てるのは波を越える時の一瞬ぐらいでしょうか。


 アイが火球砲改2を撃ち始めました。

 帝国の戦艦の何隻かから船首に大砲の発射煙が見えます、帝国も撃って来たのでしょう。

 撃ってきたのは帝国艦船の中核をなす2本マストのガレー船で、船首に大砲を1門乗せているようです。

 武装は他に魔弩砲(魔道具の弩)を何十門か備えているようです。


 帝国船は風下ですから、最初から帆走はやめて、櫂で進んできます。

 意外と早いですね、時速7ワーク(10km/h)は出ているでしょう。


 海賊のガレー船は櫂が片側に20本ぐらいでしたが、帝国のガレー船には30本も櫂があります。

 レタが収集した資料を海賊と争った後詳しく調べましたが、そこで分かって来たのが体力を上げる魔薬のガレー船での使われ方でした。

 海賊の時は1時間ぐらいで速度も落ちましたけど、帝国も漕ぎ手は櫂1本に付き一人だそうですけど、魔薬で体力を上げて漕ぐので2時間ぐらいは漕いでいられるそうです。


 海賊が使う魔薬は混ぜ物が多く飲んでいると体が蝕まれて直ぐに死んでしまうそうです。

 帝国の海軍は如何なのでしょう?


 武装商船は一斉に北西へ回頭し、間切って風上を取る積りでしょう。


 こちらの偵察バードを全体を見える様に上昇させます。

 武装商船にはメドロン君を差し向けます、船底を食い破って貰いましょう。

 (カスミちゃんお願いね by小姉)

 (了解です、メドロン君にお任せあれ by妹)

 (姉ねも待機をお願いします、万一の時の備えですから by小姉)

 (了解、玄関の間で何かあったら直ぐに緊急手術できるように待機しているよ by大姉)

 (お願いします、後魔通信に気になる事があれば何時でも連絡してください by小姉)

 (わかった by大姉)


 偵察機には中々当たらないようです、火球砲改2の方は命中が出たようです。

 帝国の船に火球が発生したのが見えました。

 流石戦艦です、火球砲改2の火球が当たっても簡単には沈まないようです。

 2発3発目が当たってやっと乗組員が海に飛び込みだしました、沈むようです。


 帝国の砲弾は今の所着弾箇所が分からないぐらい遠くの様です。

 カモメは帝国の戦艦の前方を横切るように、南東へ移動しています。

 帝国の艦隊はカモメの後を追うように移動しています。


 帝国の砲弾が遠弾に成ってカモメの右舷1ワーク(1.5km)ぐらい離れた場所に、水柱が立つのが見えた。

 既に帝国の戦艦3隻を撃破しているが、敵はまだ大型艦だけで40隻は居る、大型以外も20隻ぐらい周りに見える。


 メドロン君が商業同盟の武装商船に追いついたようです、行足が止まって沈み始めている船が何艘か見えます。

 (3隻船底を食い破ったよ by妹)


 帝国の大砲の着弾が段々近寄ってきます、そろそろ方向転換する頃ですね。

 『レタ、方向転換します、敵帝国大型戦艦の端が見えてきました、其処を横切ります』

 『向き北東へ、左舷へ90度転舵、用意、・・・・今!』

 時速10ワーク(15km/h)まで速度を落とします。

 転舵を始めるとぐっと船の右舷への遠心力が掛かり船も傾きます。


 大きく曲がった後、帝国の大型艦の南端を横切ります。

 レタとナミにもカ式連発小銃で戦闘に参加してもらいます。

 『レタ、邪魔をしそうな大型艦以外の排除をお願い』


 時速10ワーク(15km/h)のまま速度を維持します。

 レタとナミも偵察機から帝国の大型船以外の船への攻撃に切り替えます。

 火球砲改2が又発砲を始めました。

 帝国の大砲は狙いが付けれなくなったのか、着弾の水柱が無くなりました。


 帝国の大型船の横を通り過ぎる時、火球砲改2の砲撃で帝国の大型船が横から火球に包まれて半分に折れて沈んで行きました、其の奥の大型艦も火を噴いているようです。

 カモメの周りでは帝国の中型から小型の船がレタとナミに撃たれて何隻か火を噴いています。


 帝国の大型船から常に2ワーク(3km)離れて動く様に注意しています、中型から小型の船にはまだ大砲は積まれていないのか、大砲で撃って来ることは有りません。

 ただ近くを通ると魔弩砲を使って攻撃してくるので、レタとナミで撃退しています。


 アイの火球砲改2でまた帝国の大型艦が火を噴いて沈んでいきます、此れで9隻目です。

 カスミちゃんがメドロン君を操って武装商船を襲っています、姉ねは帝国の魔通信を傍聴しながら、玄関の間の診察室に詰めて万が一に備えています。


 カモメが帝国戦艦から離れてしまったので再度転舵します。

 転舵の為周囲を観察すると、いつの間にか飛行機が消えています。

 どこへ行ってしまったのでしょう。

 『レタ、方向転換します、敵帝国大型戦艦の端が終わります、再度北上して帝国艦をたたきます』

 今は転舵する事が優先です、消えた飛行機は気に成りますが、置いておきます。

 速度を落としながら左舷方向へと向きを変えます。


 『向き北西へ、左舷へ90度転舵、用意、・・・・今!』

 転舵が終わると速度を元に時速10ワーク(15km/h)へ戻します。


 偵察バードが所定の高度へ達したようです。

 偵察バードの画像を見ます。

 帝国の戦列はカモメを追って南西から南東へと移動しようとして、乱れてカモメの左舷側へ纏まってしまったようです。

 武装商船は更にメドロン君に沈められて残りが5隻に成っているようです。

 (カスミちゃん商業同盟の武装商船全部やちゃって by小姉)

 (うん、もうすぐ終わるよ by妹)


 アイの火球砲改2が再び火を噴きます。

 帝国の絡まり一塊になってしまった最前列の2隻に同時に当たったようです、2隻が火を噴いた瞬間大爆発しました。

 びっくりしてしまいましたが、どうやら火薬に火が点いたようです。

 アイがこのチャンスに火球砲改2を左右に広がった帝国軍に撃ち続けます。

 火の付いた帝国軍艦が連続的に爆発していきます。


 大砲を備えた大型艦は中央に20隻ぐらいのようです、装備が間に合わなかったのでしょう。

 自爆した大型艦が火の海の中で消えていきます。


 その大型艦が自ら火を噴いて自爆していきます、右に左に振り回されて慌てて火薬の扱いが雑になった所に、仲間の艦が火を噴いて爆発したのを見てしまったのでしょう。

 乗組員が恐怖で正気を失い、あわてて火薬や弾丸に大砲を海へ捨てているようですが火薬の包と思える袋から何かこぼれて居ます、見ていると大砲を捨てようと群がった乗組員を吹き飛ばして艦が自爆しています。


 どうやら大砲を扱うのにまだ未熟な部分が在ったようで、恐らく火薬や砲弾を側に野積していたのでしょう。

 火の付いた帝国戦艦が隣の戦艦にぶつかっています、連鎖的に火と火薬の爆発で帝国軍が自滅していきます。

 すでに大型艦の大半が火を吹いているか、他の艦とぶつかって身動きできなくなっています。

 乗組員も船から海へと飛び込んでいます、船を救うことをあきらめたようです。


 帝国軍の中型艦や小型艦が大型艦の乗組員を救助に行きます、ボートを下ろして海に漂っている人を拾って行っています。


 (カスミちゃん商業同盟の方は終った? by小姉)

 (うん、今終わったよ by妹)


 『レタ、この場を離れます、攻撃態勢継続、向き北東へ、右舷へ90度転舵、用意、・・・・今!』

 速度を落とさずに逆方向へと大きく軌跡を描くように向きを変えます。

 転舵が終わると速度を最大船速の時速20ワーク(30km/h)へと上げます。


 帝国大型艦からの大砲の砲撃が無いか注意して見張ります。

 ランダムに方向を変えたりして砲撃を警戒しています。

 帝国の大型艦はこちらに対応出来ないようです、戦闘は終わりの様ですね。

 帝国軍から30分は離れた頃やっと戦闘態勢から抜け出る事が出来ました。

 『レタ、戦闘解除、警戒態勢』

 時速14ワーク(20km/h)の巡航速度にします。


 (甘いと忠告すべきか、商業同盟との差は何だと聞くべきか? by大姉)

 (えー、なんで戦いは終わったんだよ甘くなんて無いよ by妹)

 考えがあっての事です、商業同盟への対応は因果応報です。

 帝国海軍に先ほど追撃をしても恨みが全てこちらに向かうだけです、全滅させることは時間的にできなかったでしょうしする意味もありません、まだ全面戦争にはなっていないのですから。

 それより、火薬への恐怖感を持ってもらいたかったのです。

 先ほどのタイミングで攻撃すれば火薬への恐怖は私への恐怖にすり替わるでしょう。

 今後大型艦への大砲の搭載は急がれるでしょうが、乗組員が恐怖を持っていればそれが遅れるかもしれません。

 (情けは人の為ならずね by大姉)

 (ええ、情けって掛けたらダメなの? by妹)

 (まぁ狙いがあって、単純に情けを帝国の乗組員に掛けたわけじゃ無いって事だよ by大姉)

 (ま、大甘ちゃんだけど、そんなカスミが好きだよ私は by大姉)


 偵察バードからの戦闘中の記録と戦闘後の画像で分かった戦果は。

 直接撃沈破が大型艦が12隻、中型艦が1隻、小型艦が7隻。

 商業同盟の武装商船(低地連合国の船)が30隻。

 そして帝国大型艦で自滅したのが17隻。

 あまりにも自滅感が出ていて、かわいそうな帝国海軍に火薬への拒否感情が出てくれないかなぁ。


 次の日にヴァン国の港町ジュヘイモスにやっと着きました。

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