第21話・2 海賊との衝突(2)
完全に囲まれる前に脱出しなければ、カモメが焼き鳥に成ってしまいます。
ここで手の内を見せるのは業腹ですが、仕方が在りません、倍速で離脱です。
カモメの速度を時速14ワーク(21km/h)に上げてまだ包囲出来ていない火船の間をすり抜けます。
最初の火船の連なりは西への進路へ仕掛けてきました、南へと舵を切ってかわそうとしたカモメに対して南側にも火船を繋げて流してきます。
今は西と南の火船攻撃を、まだ西と南が繋がっていない隙間を縫って抜け出そうとしている所です。
火船は小舟以外に筏や樽を繋げたりして作っています、長さは横に2ワーク(3km)はあるでしょう。
海賊船が新たな火船を用意しようとしています。
アイが火球砲改2を前を塞ぐ海賊船に撃ちかけています。
『レタ、海の上の火船を攻撃して炎上させてください、壁にして海賊の行動を阻害します』
とレタとナミにもカ式連発小銃で戦闘に参加してもらいます。
レタとナミが西と南の火船の繋がった小舟を撃ちぬいて炎上させていきます。
見る見る内に海の上に火の壁が出来てきました、これで、東から囲もうとして接近する海賊は近寄れないでしょう、私たちも戻れませんけどね。
最初と2回目の火船の間をすり抜け、海賊都市ビチェスの海賊船に殴り込みを掛けます。
『レタ、西への進路上に居る海賊船を優先的に狙ってください』
命令後、アイが狙いを付ける為、火球砲塔を動かします。
船首方向へは帆柱を支える静索が邪魔して打てませんが少し角度を変えれば撃てます。
やがて得物が決まったのか何時もの「ボン」、「ボン」と言う音が聞こえて来ました。
海賊船の内、右舷の船首側の船が火球で撃ち抜かれ沈没してしまいました。
火球砲塔がゆっくり回転し次の得物を探して火球砲改2を撃ちます。
あっと言う間に5隻ほどがバラバラになって沈没し、海賊船はカモメを避けて風下方向へと逃げ始めます。
しかし3回目の火船の展開が終わって此方の進行方向を塞いできます。
敵の火船の展開が早いです、ここまで組織的に動けるとは思ってもいませんでした。
敵はこちらの動きの先を読んで火船の展開を指示しているようです。
偵察バードの画面から状況を読み取ります。
その展開は南から西へと5段で計10の火船を繋いだラインを展開しようとしています、このままでは本当に焼き鳥になりそうです。
その時なぜ西と南なのだろうと思ったのです、この罠を考えた人は常に風を考えて風に沿って風上から風下へと仕掛けていると思えるのです。
帆船は風上へは間切って進みますが、風上その物の方向へは進めないし風上へ間切って進むのは帆風(後ろからの風)で進むより遅い、との思い込みが隠れているようです。
今はまだ火船ラインを展開している最中で展開が完成した火船のラインは2列だけです、今なら風上へ移動しながら展開の隙間を抜けることが出来そうです。
まだ1列目と2列目の間です、でも西と南の間は空いています。
カモメ全速前進です、時速20ワーク(30km/h)へ速度を上げて隙間を抜けます。
そのまま次の展開を終わらせようとする海賊よりも早く展開する隙間を先に通り抜けます、火球砲改2は連続で撃っていますしレタ達も火船を撃って火の壁を後方に作っています。
カモメは逃げる海賊船を追いかけて迄、打ち払う心算は在りませんが手の届く位置にいる海賊船には容赦しません。
海賊船にとって風下は火の壁で逃げようがありません、そこにカモメが風上の海賊船を虱潰しに沈めて行ってます。
50隻程沈めると目の前には海賊船は居なくなりました。
『レタ、攻撃停止、戦闘態勢解除、警戒態勢へ』
後方は地獄の有様です、火に包まれた海賊船が何隻も見えます。
偵察バードからの情報でも前方に海賊船は居ないようです、漁船が何隻か見えるので海賊の見張りだと思います。
海賊の見張りの漁船を攻撃しても、此方を見張っているだけなので後で間違いだと揉めるのは嫌です。
偵察バードの情報を活用して、出来るだけ海賊の見張りの少ない場所へと掻い潜りながら、西へと進みます。
強い魔波を南西方向から何度も感じましたので海賊都市アデュパスから監視船に矢継ぎ早に指令が出ているのでしょう。
それに対して、海賊都市ビチェスの在る南東からは数回強い魔波を感じただけで後は何も感じなくなりました。
速度を時速14ワーク(21km/h)まで落として進みましたがそれでも早かったのか海賊の意表を突いたようで、次の日の昼8時(午後1時)過ぎ海賊都市アデュパスの直ぐ側で海賊船400隻が一塊と成って襲って来ました。
(偵察バードの画像から船の数を数えるのって、大変なんだからね by妹)
何時もの体当たり戦術で我先に襲って来るようです。
船列を組んでいるようには見えません、各船毎がバラバラにこちらへやって来るようです。
『レタ、戦闘開始、各自狙いが定まり次第撃ち方始め』と今日は火球砲塔のアイ以外に最初からレタとナミにもカ式連発小銃で戦闘に参加してもらいます。
レタは右舷、ナミは左舷の上甲板に待機しています、私も操舵室で船の操船を行います。
射程距離の長いレタとナミのカ式連発小銃が発砲を始めます。
20秒ぐらいして、6kmは離れていましたが、幾つかの火球が海賊の船に発生したのが見えました。
レタとナミは魔石を入れ替えながら撃ち続けています、その姿はとても頼もしいです。
そのまま1コル(15分)もすると今度は火球砲塔のアイが撃ち始めました。
海賊船に炸裂する火球の大きさが海賊船よりも大きく見えます、当たった海賊船がバラバラに爆散しています。
今日も南南西からの風が強く吹いています、海賊は風任せに最大速度で接近し近くから魔弩砲を使って攻撃してきます、中には衝角攻撃を仕掛けて乗り込もうとする船もあります。
しかし、近寄ってきた船も魔弩砲の攻撃はせいぜい200ヒロ(300m)で攻撃が当たる距離になる前にこちらの攻撃で沈んでいきました。
戦闘は一方的なカモメの優勢で最後まで推移しました、昼10時(午後3時)には海賊船の姿は見えなくなりました。
(カスミちゃん偵察バードに海賊船は見える? by小姉)
(後方には見えるけど、前方にはいないわよ by妹)
『レタ、戦闘停止、警戒態勢解除、ご苦労様でした』
姉ねに家(神域の部屋)から出て来てもらい、レタ、アイ、ナミを家へ帰します。
家では妹が飲み物と軽食(サンドイッチ)を用意して待っています。
「お疲れ様、此れで海賊共から解放されたね」と姉ねが労ってくれます。
「ええ、さすがに疲れたわ喉も乾いたし何か飲んで、お風呂に入ったら戻るわ」と声が疲れを感じさせる低い声になっているのが分かります。
「行ってらっしゃい」と姉ねが声を掛けてくれます。
2時間後姉ねと入れ替わって、船の船室へ戻って来て偵察バードの録画を確認すると、戦闘時間2時間で海賊の船を100隻以上撃沈破していました。
6級魔石も40個以上空になっていました、此れからゆっくり充填していきましょう。
レタとアイ、ナミの報告では海賊船が接近攻撃を仕掛ける為こちらへ近づいて来るのが狙い安く命中率も良かったそうです。
後2日もすれば中の海から外の海へと出ます。
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