第21話・1 海賊との衝突(1)

 火球砲改の魔力充填にかかる時間が現状5分だがこれを短縮することはできるのか?


 実は火球砲から火球砲改への改良をする時、私は到達距離を延ばすことを一番重要な改良すべき点だと捉えています。


 帝国はやがて大砲を装備して戦争を行うだろうと思っています。

 その大砲の射程距離は数キロ以上の距離を撃って来るのが確実です。

 対抗する為には距離が必要だったのです。


 通常の魔術は魔術を行使した時点で魔術陣は行使され魔術が発動します。

 通常の火炎や風の魔術が距離を出せないのはそこに原因があるのです。


 火球砲は魔術陣その物を飛ばして、信管魔術を行使し続け設定した行使条件で発動するところがこれまでの魔術と違います。


 通常魔術陣を飛ばす場合、何かに書き込んだ魔道具を飛ばして行います。

 帝国の大砲の砲弾の信管はこのタイプだと推理しています。

 火球砲は魔術陣その物を飛ばす所が違うのです。


 これまでの魔術陣は魔術媒体(ミスリルなど)に書き込んだ魔術陣から抜け出せていませんでした。

 これを私は空間に立体的な魔術陣を組み立てる事で飛ばせる魔術陣を作り上げました。


 そして魔術陣を打ち出してみると、音速で直進したのです。

 これは、魔術の行使を音声で行っているからだろうと思っています。

 音声での行使の条件はまだ外せて無いのです、只今研究中です。


 最初に戻りますが、充填時間を短縮できるのか?です。

 飛距離で7倍、威力も8倍必要な魔力量ですが、改良でこれまでの3倍程度の魔力で同じ効果を得る事が出来る様になりました。


 その時充填効率を上げる為、充填時間を5分まで遅くしたのです。

 これを1分で充填するようにすると、今6級魔石で10発撃てているのが5発ぐらいになるでしょう。

 充填効率があまりにも悪すぎですが、状況を考えると必要かもしれません。

 今後充填時間を早くしても効率が落ちない材質を探す必要があります。


 と言う事で火球砲改を更に改造します。


 ・・・・・・・・・


 今は何時でしょうか?

 外は暗いので夜か朝前でしょうね。

 時計を見ると、今は夜6時(午後11時)過ぎを指しています、ふふふ、火球砲改2完成です。

 それに、レタ達が喜びそうな物もついでに作っちゃいました。


 火球砲改2で再度討ち入りですわ、海賊共を地獄の炎で炙って差し上げましょう。

 (じゃ無いよ by大姉)

 (偵察バードで先に偵察しましょう by妹)

 (いや、ゆっくり休もうね、改造でここしばらく寝てないでしょうが by大姉)

 (はい、何か変なテンションに成っていましたね by小姉)


 と言う事で船のベッドで寝ます。

 この所船に乗っているので、姉ねとカスミちゃんが一緒では無いのが寂しいです。

 

 レタからは、水上、水中、空中に魔物も海賊も居ないそうです。


 朝までぐっすり眠れました、やっぱり疲れていたのでしょう。

 今日の朝食はライムギパンと朝から鳥のステーキにチーズを上に置いて半分溶けてる所へ甘辛いソースを掛けてあって付き合わせのトマトや葉物野菜も美味しいです。


 食事が終わった後、レタ、アイ、ナミに火球砲から派生したカ式連発小銃を渡します。


 これは、前までの火球砲をサイズダウンした物に今の火球砲改2の魔術陣を入れたオーナ姉妹用の新たな長距離攻撃手段です。


 性能は6級魔石専用で、毎分100発で1個の魔石で100発撃てます。

 単発、3連発、フルオートの切り替えが出来るレバーを付けています。

 小火球が6000m以上音速で直線に移動して、直径2/10スン(6mm)の火球が何かに衝突すると炸裂し、火球が直径1ヒロ(1.5m)と衝撃波が発生します、火球砲より小さいが十分な威力があります。


 どこまで進むのか確かめていませんが、何にも衝突せずに魔力が少なくなると魔術陣は消えます。

 因みにカ式とはカスミ型正式連発小銃のことですよ。


 レタ、アイ、ナミは小銃を渡された時、東邦への旅で長距離の攻撃手段が無いと嘆いたのを思い出したのか感激してレタなど涙ぐんでいました。


 その日は改造した火球砲改2の試射やオーナ姉妹の小銃の習熟訓練と試射で過ぎていきました。


 さて今日から海賊の張った索敵線に”西へ強引に突破するぞ作戦”を敢行します。

 火球砲改2は前の火球砲改より投射量が5倍に成っています、その分魔石の交換が2倍必要になります。


 火球砲改2担当のアイは魔石の交換操作に慣れるように何度も訓練を繰り返しています。

 用意は出来ました、後は実行あるのみです。

 偵察バードを先行させます、高度3000mまで上昇した偵察バードは周囲200キロ四方が見渡せます。


 偵察バードの索敵で、周囲100kmには海賊の索敵船や海賊船が居ないことが分かったので、偵察バードを船に戻します、海賊と接敵すれば魔石を交換する機会が無いかもしれないでの早めに交換し、メンテナンスを行っておきます。


 現在地は、シーロン島の北50kmの中の海のほぼ中心の位置に居ます、このまま西へと向かう事にします。

 この季節、風は南の大陸の砂漠で暖められた大気が北へと移動して風が常に吹くためやや東より(今いる北半球ではコリオリの効果が東向きに働くため)の南南西から北北東へと風が春から夏の終わりまで吹き続けます。


 海賊はこの風を利用して海賊都市ビチェスから出撃してくるでしょう。

 明日明け方ぐらいに中の海の一番大きい島サンテ・コルパが見えてくるでしょう。

 そして海賊の張った見張りの最初のラインもあるでしょう。


 明日からの激戦に備えて、私達も交代で休んでいきます。


 次の日の昼8時(午後1時)頃サンテ・コルパ島の南端の岬が見えてきました、そして 海賊の見張り船らしき漁船が見えてきました。

 その漁船から強い魔波が観測されたので、海賊船に違いないでしょう。

 私の計算では海では魔波の受信は50kmぐらい離れていても出来る様です。

 その計算で行くと海賊都市ビチェスに待機している海賊船までに中継で1か2隻ほどが必要でしょう。


 ところが、最初から海賊都市ビチェスの海賊が複数の集団に分かれて待ち伏せていました、彼等も前回の戦いを忘れていないようで近寄って来ません。

 3ワーク(4.5km)ほど離れた場所からボートに摘んだ火船での攻撃を仕掛けてきました。

 ボート同士をつないで広がらないようにし、ボートとボートの間を通っても綱でからめて火船でカモメに火を付けようと考えての事でしょう。


 南西に進路を変えて火船攻撃を避けようとすると、そちらにも海賊船が待ち構えていて火船攻撃を仕掛けてきました。

 これは何段構えにもなっているのかもしれないですね。


 試しに一番南側の左端のボートをレタにカ式連発小銃で破壊してもらうと海に油が広がり火が点き海面に燃え広がりました、重油でも入れているのでしょうか、厄介です。


 完全に囲まれる前に脱出しなければ、カモメが焼き鳥に成ってしまいます。

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