第15話 暗転か明転どっち?、起承転結の転

 リリエビッチ子爵と名乗る男はレタによると人の話は右から左へと聞き流して自分の言いたい事だけを言う男だそうです。


 エドワール皇太子も突然の闖入者に驚いているようです。


 私とエドワール皇太子との歓談中に突然リリエビッチ子爵と名乗る男が兵を数名引き連れて乱入してきたのです。

 「一体何事だ、リリエビッチ!私は今カスミ姫と歓談中なのだが」エドワール皇太子が大きな声でリリエビッチを問いだ足します。


 「これはご機嫌うる…わしくは無い様で御勘弁のほど願います。」

 「我が父、ビチェンパスト王国の宰相にして王都市長の職に在るビストール・ナンド・パストからの命令による物でございます。」


 「ビストールが一体何の命令を出したと言うのだ!」とエドワール皇太子は更に追及します。


 リリエビッチ子爵はいかにもと言った風情でもったいぶったお辞儀をしてから、さも得意げに話します。

 「は、数日前にございますが神聖ロマナム帝国大使カーク様より申し入れがありまして。」


「その申す所によりますと、帝国の東邦で帝国親衛隊と騒動を起こし、多数の死傷者を出した罪で騒乱罪に問われている、傭兵クラン”モクレン”の頭カスミと申す者の身柄の拘束を願う、との申し入れがありました。」

「しかも、そのカスミと申す傭兵、あろうことか帝都にて又もや騒動を起こし、次期皇帝とも目されるアルベルト皇子様の部下2名を死亡させ、あっては成らない事ですが皇子様をも傷つけ、彼をかばった側妃様を死亡させた大罪人だそうです。」


 あれれ、これは思わぬ情報が手に入りました。

 敵(魅了男)は帝国の皇子様だそうです、あの宙に浮く男の設定の神力はヴァン国だけでなく神聖ロマナム帝国までも自由に設定できるようです。


 しかし、帝国の一大事でしょうに他国にそこまで詳細にベラベラ喋っていいのかしら。


 「その件とここで歓談中のカスミ姫と何の関係が有るのだ?」とエドワール皇太子は分かっていながらリリエビッチ子爵に聞き返す。

 「しかも、たった今話の中でカスミ姫がビチェンパスト王国の王族だと分かったばかりなのだぞ!」と爆弾発言をリリエビッチ子爵に投げつけます。


 それは、私にも爆弾発言なのですが、なぜいきなり私がビチェンパスト王国の王族なのでしょう?


 私がよほど不思議だと思う様が顔にまで出ていたのでしょう、エドワール皇太子が私を見ながら言います。

 「カスミ姫、先ほどあなたが言われたダキエ国の姫イスラーファ様の娘マーヤニラエル姫の、貴方は娘になるのですからこのビチェンパスト王国の王族なのですよ。」と笑いながらおっしゃいます。


 「ビチェンパスト王国の王族というのは、初代様の孫にあたるカスミ姫様だけで無く他にお子様が居られればその方も王族となります。」

 「初代様とダキエ国の姫さまの子孫はあなた以外に我が国に後3人おります。」

 「ダキエ国の姫イスラーファ様の息子の前第5代国王ジョゼフィス様と、その息子で後を継ぎ第16代となったエリザヌス王です、我が父になります。」と。


 息子と言うからにはエルフの男でしょう、でもその息子に孫?しかも第5代からいきなり第15代ってエルフの寿命ならあり得るけど、エルフのお嫁さんでも貰ったのかな?


 「それは、マーヤニラエル養母様には弟と甥とその息子が居る事になりますね、養母様さまは知っていて黙っていたのでしょうね」と養母の顔を思い出しながら、岩をも断つ性格の養母を思い、ため息が出ます。


 などとエドワール皇太子と二人っきりの話をしていたら、リリエビッチ子爵が待ちきれなくなってエドワール皇太子に問いかけます。

 「皇太子殿下、王族と言われるが陛下のご承認を得ての事でしょうか?」何とか私を拘束したいリリエビッチ子爵が細かい事を論(あげつら)います。


 「ふん、陛下の承諾など必要ないよ、マーヤニラエル様は初代様の娘として広く知られる方だ、そもそも第5代国王の姉君なのだぞ、その娘なのだから王族で在る事は明白なのだ。」と分かったかとでも言わんばかりにエドワール皇太子がふんぞり返る。


 「……、失礼します。」とリリエビッチ子爵が憤懣やるかたなしと顔をしかめたまま、兵を引き連れやってきた道を通りバラの庭園から引き下がって行く。

 これで引き下がってくれると良いのですが、あの様子では、途中で待ち伏せとかありそうです。


 「エドワール皇太子殿下、帝国との間が悪くなりませんか?」帝国の皇太子を傷つけた犯人を匿うのは帝国に攻め込む名目を与える事になるやもしれません。

 ここは、大砲の件や飛行機などのアルベルトの作った物について話して置くべきでしょう。


 「昔から帝国はビチェンパスト王国へ攻め込む事を狙って色々事を起こして来たからね、こちらも準備だけはいつでも出来ているんだよ。」

 「彼と彼の父の件もね。」

 とこれも織り込み済みとばかりに、どや顔をして見せる。


 皇太子のどや顔を見れるとは珍しいですね、少しは帝国の情報を知らせなくては。


 「エドワール皇太子殿下、帝国の新しい兵器について知っていただきたいことがありますの」

 エドワール皇太子もその内容に気が引かれたのか、どや顔を引っ込めて聞く体制を取る。


 「今、ヴァン国では新しい兵器が開発されています、火球砲がそれです、他にも偵察バードと呼ぶ偵察する為だけの兵器もあります」とヴァン国の兵器として、私の作った物を言う。


 「帝国はヴァン国に刺激を受け、対抗するための兵器を作っています、大砲が火球砲に、飛行機が偵察バードに対応します」と、そして実際に見て貰った方が分かりやすいので船に招待する事にした。


 「エドワール皇太子殿下、我が小さき船ですが”カモメ”にご招待しますわ」

 と船に招待して色々見て貰おう。

 「その時に”カモメ”で火球砲の試射をご覧ください、そして偵察バードも同時に見て頂くことが出来ます」

 と話す。


 エドワール皇太子も前の話や噂から、”カモメ”と火球砲は見て見たかったようで、招待を喜んで受けてくれました。


 明日、昼7前(午前中)に港へ直接”カモメ”を横付けして乗り込んでもらうつもりです。

 そのため港(戦勝記念広場)に船を繋ぐ許可をお願いすると。


 エドワール皇太子から、王家の桟橋へ繋ぐことを提案されて、そうすることになりました。


 王家の桟橋へは”カモメ”は14ヒロ(20m)程度の小型船なので、今すぐにでも繋いでも良いと話が進み、”カモメ”に此方へ来てもらう事になりました。


 こんなはずでは無かったのです、私は王宮から早めに退散する積りでしたのに、何とも勢いとは暴走するのですね。

 (何他人事の様に言ってるの、自分から飛び込んだでしょ by大姉)


 桟橋に繋ぎっぱなしだと良からぬ輩(リリエビッチ子爵とか)が湧くかもしれないので夜は沖に停泊させていただくことになった。


 レタに”カモメ”を王家の桟橋まで移動するように伝え、姉ねにも、もう少しで待機も終わる事を伝えました。

 残念ながら転移もどきはお預けです。

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