第12話 船を造ろう(8)
船工房ウーミャ・ドリゴッソで今日は船を見る事になった。
船商のステイスル商店でナミーゴ氏と打ち合わせたレタはそのままナミーゴ氏と連れだって買う予定の船を見る事にした。
船は大破した時側面がつぶれて竜骨に肋骨を組むことからやり直すことになったので、今は側面を全て取り払い竜骨と肋骨の再建から行っていた。
幸い折れた肋骨は2本だったので、竜骨に新しい肋骨を組み込むことで対処出来た。
ただ倒れ方が激しくて歪みが全体に出ていて、そのため両側面を全て取り払う必要があって大変だったそうです。
今の船の状態は竜骨に肋骨を組んだだけなので船台の上に置かれた骨としか見えない状態になっていました。
ですが竜骨と肋骨は修理が終わっており、此れから舷側と内部を作っていく作業を控えて段取りを決めるまで一時の空きが出来た時だったのです。
レタが船を買い取り、修理から改修へと変更するには絶好の時期でもありました。
レタは船の状態を確認すると、ナミーゴ氏と売買契約書を取り交わし早速現金金貨700枚を全て支払ったのです。
こうして船が手に入った私達ですが、此れから船への改修作業についてこちらから具体的に指示していかなければなりません。
図面だけでなく実際の竜骨の間に張る板材のサンプルなどを提供して、作業員に理解してもらわなければ改修作業は出来ないのです。
船工房ウーミャ・ドリゴッソで今後の船の改修作業について話し合う事になり、レタは姉ねにお出ましを願う事になった。
姉ねは船工房ウーミャ・ドリゴッソにレタと出かけると持参した図面とサンプルを工房長のウサンポール氏に渡し、その材質の強度についての試験の結果を具体的な数字として挙げていった。
そして今回の合板を作るために必要な接着剤の提供を、使い方も含めて指導することにも理解を得ることが出来た。
今回積載量が少なくなるが船内に水密区画を多めにして船の強度を高める事も改修計画の最初から決めていた。
こうして、船の改修作業の準備は着々と進み、1月の終わりごろ船の改修作業は始まったのです。
今回船の改修工事に並行して一部の艤装工事を竜骨の段階から行っています。
一つは推進魔道具の取り付けと、その操縦系の回路の接続を改修工事の邪魔に成らない段階で順次行っていく事にしています。
後は、魔道具のセンサー部分を船の各所に付けて常時船体の状況を監視できるように最初から取り付け部分の工事を行っています。
姉ねと妹にセンサーは後から交換できるように設計してもらいました。
改修工事を行っていくにつれて、工房の職人から改修工事の内容が漏れたのか、見学に訪れる人が多くなり、ついには国の役人迄査察と称して見学に来る有様となってしまいました。
レタによると、一つは推進魔道具の件、それと水密区画の構造が今までに無い構造で、それを実現出来た合板について知りたい様だとの事です。
見る分にはこちらも仕方が無いと諦めていますけど、接着剤を勝手に持って行ってしまうのは流石に見逃せ無いのです。
仕方なく合板の作成を職人に任せずに専用のゴーレムを作って合板迄の作業を工房の一角で行うようになりました。
所が、中には悪質な人もいて、夜中に忍び込んで持って行こうとするので、私達で警備をする事になりました。
連日の警備でついには宿を引き払い船工房の一角(合板を作っている場所)にテントを張って寝泊まりする事になりました。
実際はテントの中に家(神域の部屋)を出して家で寝ています。
でも船工房は広く手が足り無ません、とうとう警備用のゴーレム迄作る破目になってしまったのです。
又横板を張る作業では、従来の工法では板の一部を重ねていたのですが、私達が持ち込んだ接着剤が板を重ねる必要を無くして隙間なく横板を張れるようになったのです。
これが又評判になってしまいました。
ついに私は見学者への対応で船の改修工事が遅れていることに我慢がならなくなってきました。
レタに命じて見学を一切禁じて、職人には改修工事の内容は外部へ秘密にすることを船工房へ申し入れさせたのです。
そして、工房へは半ば強引に承諾させて、警備用のゴーレムを増員して工房内を巡回させ勝手に工房へ入り込む人間を排除させたのです。
ここまでしてやっと改修工事は順調に進み始めたのです。
そして、2月一杯を掛けて船は進水できるまでに出来上がりました。
私は手早く船に「カモメ」と名付け大げさな行事も無く進水させました。
簡単な進水式とその後のご苦労様宴会はしました。
残りは艤装を行い、船に必要な諸々を装備するだけです。
今回艤装するにあたって、船室の内装も居心地の良いものにするため、寝室、お風呂場とトイレ、炊事場等みんなで知恵を出し合って設計しました。
船に私は居続ける必要があるので、頑張って考えました。
甲板部分は舷側の通路以外ありません、全て船室です大砲があるならガンデッキとか呼ばれる所です。
船室の部屋割りは、船首から船尾へ向けて左右に部屋を作っていきます、先ず船首の左右に4つの部屋、レタ、アイ、ナミ達は家(神域の部屋)に各自の部屋があるので、この部屋は全て予備の部屋か倉庫となります。
真ん中が廊下に成っているのですがその船首側に船首部分へ出る小階段と扉が作ってあります。
次が食堂、食堂の真ん中を帆柱が下から上へと貫いてあります。
そして船尾側に厨房があって、更に奥の船尾側にトイレとお風呂を左右に作ります。
通路を厨房の真ん中から最後尾の私の寝室兼居間の前まで通します。
私の部屋から操舵室へ出ることも出来る様に階段が作られています。
更に下の階は倉庫に成っています、食堂からは両舷側の通路へ出る小階段と上の砲塔の後ろ側と下の倉庫へ登り降りする事が出来ます。
食堂の上には帆柱の周りにドーナッツの型をした火球砲の砲塔が、備え付けられています。
操舵室は船の船尾側に作られた雨風が防げる透明な窓をした船室にしました。
窓には強化アクリルガラスになるべく近い性能にした、魔物由来の砂を錬金で加工して作り出したガラス様の物です。
このガラス様の物は船室の窓やドアの窓へも使用しています。
上甲板の真ん中には帆柱が垂直に取り付けて在ります。
その帆柱の根本にドーナッツの型をした砲塔が設置されています。
その中には火球砲改2門が据えられています。
火球砲はドーナッツ型砲塔から砲身は突き出ていなくて砲口のみ見えています。
ドーナッツ型砲塔は360度回転でき、グルグル回ることも出来ます。
ドーナッツ型砲塔の入り口は砲口の出ている反対側にあります、そこから入って椅子に座り全て一人で操作します。
人が居る場所は、砲口の反対側、帆柱の後ろになります、2門の火球砲に挟まれて、ドーナッツ型砲塔を回転させ、砲口を上下して狙いを付け撃つまでを一人で行えるように動作は全て魔石を使ったモーターで動かしています。
照準の為の映像装置と的を狙うための十字が画面に映ります。
砲手はこの画面の十字の中心に的を合わせて撃てば良いのです。
火球砲の欠点が火球の直進性に在ります、放物線を描いて遠方へ射撃することが出来ないので、直接照準のみの射撃となります、そのため船の中央で高い(水面から3ヒロ)位置に配備しました。
火球砲改の性能は火球が到達できる距離が2ワーク(3㎞)と大幅に伸びた事、炸裂の規模も半径20ヒロ(30m)と規模も大きくなりました。
当然使用する魔石は6級だけに成り、打てる数も10発に減りました。
射撃間隔は5分に1発とこれは大幅に落ちてしまいました。
ただしこの火球砲打てるか分かりません、実は帆柱を支える索具が多くて砲を何処へ向けても索具が邪魔をして打てないと言う悲劇が。
何としてでも火球砲を撃てるようにしようと、極力索具を減らして、帆は三角帆を後ろ側へ一枚にして、長い1本の棒に固定することで、その棒の位置を風に合わせて変更すれば推進力を得ることが出来る様になって、やっと火球砲を撃てる隙間が出来ました。
火球砲改には2種類の火球を撃てるようにしています、一つは今までの対空砲用の近接魔具信管、それと新しく作った火球が何かにぶつかると炸裂する徹甲弾用魔具信管です。
火球砲改にはこの2種類を切り替えるスイッチが新たに追加されました。
このように涙ぐましい努力をして実装した帆と帆柱ですが、魔道具の水流推進機を使うと、帆走が邪魔をして畳まなければならないと言う悲劇の2段目が。
何とも喜劇的な展開に成ってしまいましたが、艤装を船大工と一緒になって働いて少しづつ作っていくのは楽しい時間でした。
このころになると私達は船工房からテントを引き払い、完全に船で生活を始めています。
そろそろ出航に向けて食料や飲み物を用意し始める頃合いだと皆が思う頃です。
艤装の粗方が出来上がったころ、私はある約束を思い出していました。
レタに使者となって貰い王宮へ手紙を届けて貰います、あて先はエドワール皇太子です。
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