第11話 船を造ろう(7)

 エルフ族、ドワーフ族、妖精族は星々を宇宙樹船に乗って旅をしてきました。

 宇宙樹船に乗り組んで、星々の間を渡って迄して何が目的なのでしょうか?


 一言で言えば、それは人の可能性を広げるのが目的です。

 手段は単純に子作りです。


 エルフの女性はどのような人種族(条件は在ります)からでも子を成せますが、生まれる子はエルフの特徴を持ちます。

 だから女系の種族なのです。


 ドワーフの男性と結婚した人種族の女性は見た目はあまり変化がありませんが、中はドワーフ化するのです。

 そして生まれる子はドワーフの特徴を持って生まれます。

 ですから男系の種族なのです。


 エルフの男性やドワーフの女性は異種族と子が出来ないのかと言うと、少ないですが、子供は出来ます。

 しかし、エルフやドワーフの特徴は出難いようです。

 これまでの5万4千年の間に多くの樹人と人族の間に子供が生まれました。

 そして、人族の中には樹人の特徴を持っている人が居ます、しかし長命の人族はいません。


 そして私の種族妖精族ですが、エルフやドワーフとは別の手段を取りました。

 つまり自分の方を変えてしまうのです。

 性別も種族も関係なく子供を作りたいと心の底から思った時、相手に合わせて自分を作り変える(変異する)のです。

 生まれてくる子は相手の特徴を持って生まれます。

 変異をすると妖精族では無くなり、相手の種族の特徴を持ちます。

 ですから男系、女系とか関係ないのです。


 妖精族が最初に宇宙樹船を作り宇宙へと進出したのです。

 そして特異な能力が作り出したのが宇宙樹船です、宇宙樹船も妖精族なのです。

 降り立った星々で宇宙樹は其の地に根付き、宇宙樹の種を妖精族と作ります、そうやって宇宙樹船の数も増えていきました。

 だからシルフィードとは宇宙樹に住む者なのです。


 変異した妖精族は、変異した時の相手の種族になります、そして聖樹と子(聖樹の種)を成した妖精族をハイシルフと呼びます。


 では何故ビチェンパストの王族は女性エルフから人間の子が生まれ子孫がいるのか?

 エルフが産めばエルフになるはずなのに人間が生まれた?

 しかも千年を超えて連綿とその血脈が続いている。

 イスラーファ義祖母様が妖精族からエルフへ嫁いできたのが何か影響しているのかもしれません。

 でも一度変異して更に変異出来るのかしら。


 そしてマーヤ養母様の期待していたのは、この妖精族の能力だと思います。

 私は将来エルフと結婚することが決められています、その時の名前が。

 カスミ・マーヤニラエル・アリシエン・ジュヲウ・エルルゥフ

 先ほど名乗った名前からヴァンとシルフィードが無くなり、後ろへエルルゥフが着いて居ます。

 私が成長してエルフの男性と結婚すれば、私はエルフの女性に変異するでしょう。


 新たなハイエルフの誕生となりますし、子供もエルフになります。

 ここは前に妹に言ったように話し合いの必要な事なのです。

 因みにハイが付くのは単純に名前を引き継ぐからだけです。


 妖精族は妖精族の両親からのみ生まれます。

 やっと納得できた気がします。


 つまり父と母は実在して私を産んでくれたと言う事です。

 まだ疑問は残っていますが、気持ちはすっきりしました。


 そう、そもそも何故私があの宙に浮く男の思惑に乗ってあそこにいたのか?

 更には、今も神域で成長している世界樹とかカスミ姉ねネエネがヴァン神族の件とか。

 カスミちゃんが読んでた本の意味することは?

 ほかにビチェンパスト王族の事とかですね。


 お茶の時間も終わり、話題は次に移ります。


 「で、最後にエドワール皇太子と約束したけど、大丈夫かい王宮に招かれてそのまま監禁とかありそうだよ」と姉ねが約束した件を聞いて来ます。


 次の話題とは行かなかったようです、考え無しに約束をしていませんよ姉ね。

 姉ねは私を考えるより力で何でも解決しようとする脳筋女と思っているようです。


 「あそこで約束しなければ、エドワール皇太子としては何か直接的に接触するような手段になると思ったものですから」

 と私があの時考えた事を伝えます。


 「ここは養母様の関係する国ですから、帝国の大砲の事などを知らせないと戦争になった時犠牲が多くでます、それを知ったなら養母様が悲しむでしょうから」


 「捕まえて王様のお嫁さんにしたんだよね、恨むことじゃないの」と妹。

 「そうかもしれません、でもエドワール皇太子の話では子供の名前を知らせていますし、エルルゥフの名が王族の名前に残っているのは血の繋がりが出来たと言う事です」

 「そうなんだ、赤ちゃんが出来たんだね」妹は納得したのかな。


 「そっか、仕方が無かったんだね」と姉ねも分かってくれたようです。


 「じゃあ、カスミの冒険の話はこれでお終い、次はレタ、船の商談の話を頼むよ」と姉ねがレタに船商のステイスル商店でナミーゴ氏との商談の進展を聞きます。


 「はいであります、ナミーゴ氏と昼5時(午前10時)にステイスル商店で会いまして大破して修理中の船を買い取り、改修する件を凡そですが纏めてまいりましたであります」


 「ナミの調べでナミーゴ氏は現金での支払いに困っていると分かったので、船を現金で買い取る話をした所、金貨400枚での買取で承諾しましてございますです」


 「それって安いの?」と妹が聞きます。

 「はい、大破せずに無事進水出来ていれば金貨1000枚はする船でございまする」

 「修理に金貨500枚はするそうで、建造費と合わせれば金貨1200枚以上かかる計算になりますです」


 「ここで船が金貨400枚で売れて更に改修費が入ってきますので最終的に損はしない計算になると考えましたです」

 「ナミーゴ氏も最終的に儲けが出ると考えたようでニコニコ顔で承諾してくれましたでありまする」

 「今予算として考えていますのは、船の買取に金貨400枚、船の改修に金貨600枚であります、前金で金貨700枚、出来上がってから金貨300枚でありますです」


 「今考えている改修作業は帆柱を1本にして三角帆を付ける改修で行こうと考えてるのさ」と姉ねが船の改修について計画していることを話してくれます。


 「14ヒロ(20m)の船だから三角帆で風だけでも早いと思うよ」と姉ねが言います。

 「時速8ワーク(12㎞/h)ぐらいは出せると思うよ」


 「これに推進魔道具が付くから倍の速度は行けるね」

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