第3話 ビチェンパスト王国(2)
このジェリモネフリッカの町から王都パストまで80ワーク(120km)ぐらいですから、4か5日の旅ですね。
レタが帰ってきたようです、家に入ると買った物を早速倉庫へ仕分けしに行ってしまいました。
何を買い物してきたのでしょうか、食事の後にでも聞いて見ましょう。
今日は久しぶりにカスミ姉妹による夕食作成です。
と言っても、パンはナミが焼いたパンですし、基本は野菜ゴロゴロスープです、この野菜スープ(ヴィヨン入り)にソーセージとトマトの皮を剝いて細切れにした物を入れて煮たらハヤシ風の出来上がりになりました。
アイとナミは宿の食事を試食しているでしょうし、その後町で食材や家具などを物色しているでしょう。
4人で食べた後、お茶(ハーブティー)を飲みながら町の様子をレタから聞きます。
レタも船旅については調べたそうですが、ここは帝国との貿易の拠点なので、あまり情報は集まらなかったそうです。
やはり王都まで出ないと情報は無いのかもしれません。
他には新しい食材として、冬なのでナスとトマトの乾燥した物ぐらいしかなかったそうです。
では、何を先ほど大量に買って来たかと言うと、かんきつ類が何種類かあったそうでそれを買い込んできたそうです。
アイとナミも帰ってきました。
ナミは食材に神技に響く乾燥パスト(乾燥麺)を見つけて何やら熱い思いを秘めていそうです。
「このパスト(乾燥麺)は王国の名を名乗るだけあり画期的な食材でござる」
といきなり話し出しました。
「麺と言うそうでござるが、湯がくと言う調理法で細長い茹でたビタパン(クレープ)になるとの事、その食材を使えば思いもよらぬ美味しい料理が色々と出来るそうでござる」
ナミが乾燥パストを手に握って、熱弁を振るっています。
今にもくるくる踊りだすのではと思ってしまいます。
踊るように調理室へと消えていきました、美味しいスパゲッティー料理が食べれるのは早いと思います。
アイは揺り椅子を1台買って来ていて、さっそく食堂でゆらゆら座って気持ちよさそうに揺らしています。
私なら寝てしまうでしょう。
翌朝、レタとアイ、ナミを連れてジェリモネフリッカの町を散策します。
レタは執事服、アイは侍女服、ナミだけ何時もの武装した姿で私は帝都以来の普段着(超高級品)に防寒用にマント(ベルベンボネ市で着た物)です、顔は出しています。
私達の服は1年を通して同じ服ですが、見た目はともかく暑さ寒さには魔術付加で対策しています。
そしてそのような魔術付加のできる服を着ることが階級を誇示する一つの方法になっています。
服に流行り廃りは在りますが、魔術付加した服は貴族でも簡単には買えません、その為色々工夫をしているようです。
私達は、作った時から生地が厚地だったので、冬でも違和感なく着れます。
かといって其のまま着るのはセンスが無いと思われるため、各自マントやショール、飾り紐などで着飾っています。
町の朝市へと向かっています、朝市にはこの周辺で採れた新鮮な野菜が出ていると思います。
私達が着いた時は既に最高の賑わいに成っていて人も混雑して動きにくい状態になっていました。
でも私達が通ると自然に道が出来て、人々が左右に別れます、はて?
(分かってやってるだろう by大姉)
(誰が見てもお貴族様って恰好をしてるからね by妹)
お店を見ると、チコリの様な葉物野菜が何種類か出ています。
これがこの辺りの冬野菜なのでしょう、さっそく店の店主に購入の打診をレタが始めます。
フリックと言う名のチコリに似た野菜はこのジェリモネフリッカの町が産地として有名なのだそうです。
色や形も様々で、今日購入したのは赤紫の色をした葉肉が厚い野菜で煮ても漬物でも美味しいそうです。
そういえばこの辺りの町では、ナミの話では油で肉や野菜を煮る料理があるらしく目下研究中だそうです、パスト(乾燥麺)の具にすると相性が良いそうで期待できます。
ロマーネ山脈で手に入れた魔石は6級1個と7級6個ですが、初級の8,9,10級の魔石が無くなりそうですので購入したいですね。
野菜のフリックを買ったお店の人に聞くと、魔石は大手の商店が扱う品物なので、まちの中心部に近い場所にボーディアーノ商店と言う店が在るそうです。
そこで買うことが出来るけど買取の方が本業なのだそうです。
ビチェンパスト王国にはダンジョンが在りませんが、深淵の森ダンジョンと呪いの森ダンジョンの2つの森ダンジョンに挟まれて、魔物は多いそうです。
ジェリモネフリッカの町は深淵の森ダンジョンからの魔物が多く出る為、冒険者ギルドが在って冒険者に魔物の退治を依頼しているそうです。
ボーディアーノ商店は冒険者ギルドと魔石の買取を引き受けている大手の商店の1つだそうです。
(ここで魔石を買い付け、ビチェンパスト王国中に広く売るのだろうな by大姉)
(そんなことより、また冒険者ギルドだよ by妹)
冒険者ギルドですか、ベルン市での冒険者ギルドの一件を思い出しますね。
私にとって鬼門の様な気がします。
初級の魔石なら魔物を退治して手に入れても良いかもしれませんね。
取り敢えず魔石の値段を聞きにボーディアーノ商店へ行って見ましょう。
市場のある通りを抜けると直ぐに東西に道路が通っている、この通りが町の中心でしょう、そこを右へ曲がり西へと向かいます。
因みに右側通行ですよ。
町の中心部へ少し歩くと大手商店が軒を連ねている一角に着いた。
その一角をウインドショッピング(間口一杯に入り口を広げているので外から良く見える)をしながら魔石を売り買いする店を探していく。
食料品、武器金物屋(金属製品の修理もするらしい)、薬屋、馬車屋、銀行(両替と為替も扱う)、家具木工屋(大工兼用)、魔石屋。
おっと通り過ぎるところでした、ボーディアーノ商店の看板には魔石屋と書かれていました。
早速中に入ります、中はカウンター越しにお店の人が数人いますね。
その中の一人に魔石の値段を聞いて見ます、レタが。
「魔石を買いたいのである、初級の魔石は売っているであるか?」
店員の若い男性は、レタを見ながら何故か眩しそうに眼を細めて答えます。
(男装の麗人に見えるからね by妹)
「はい、お客様、しかしながら私どもの魔石は取り扱う量が多ございます、一度の取引は金貨でのみお引き受けしております。」
「今の国が定めた定価は、10級は1000個が金貨1枚です、9級では200個でございます、8級は金貨1枚で50個となっております。」
「帝国の金貨でも良くって?」と私が割り込んで聞いて見る。
店員の後ろの上司と思える男が若い店員に奥のブースへ誘導するように目で合図しているのを見たので、早く買いたかったのも有り無視させてもらった。
「はい、お嬢様、ビチェンパスト王国の金貨は帝国金貨と同じ価値をしておりますので帝国金貨でのお支払いでも大丈夫でございます。」
若い店員は後ろの上司の合図に気が付かずに受け答えする。
「レタ、10級と9級と8級それぞれ金貨1枚分買いなさい」とレタに伝えます。
レタがお辞儀をして「はい、お嬢様」と返事をする。
レタは金貨3枚と袋を数枚対応してくれた店員に渡す。
店員は、深々とお辞儀をして、金貨は上司と思われる後ろに控えていた男へ渡すと、5枚袋を持って奥へと向かった。
後ろの上司の男はこちらの意図に気が付いたのかあきらめ顔で金貨を受け取っていた。
奥から直ぐに戻ってくると、レタに3袋を渡して「こちらが10級が入っている袋です、中の小袋は100個づつ入っています。」
レタが受け取り中を見ると、3袋、3袋、4袋と小袋が入っている。
レタはそれをアイへ渡すと、店員が差し出す次の2袋を受け取る。
「右が9級です小袋2つで、左が8級の魔石で小袋に50個入ってございます。」
レタが袋の中を確認する。
レタが私に頷いて言う「お嬢様確かに魔石受け取りましてございますです」
私は頷くと、「世話になりました」と店内へ誰となく言う。
レタ、アイ、私、ナミの順に店を出る。
(何これ、お嬢様のお買い物ってこんなんなの? by妹)
(いや、店員は対応が悪すぎだね、店先でやり取りするような事じゃ無かったよ by大姉)
(そうね、でも目的の物は手に入りました by小姉)
(それじゃ、あの店員さん大目玉食らうんでしょうね by妹)
(だね、かわいそうに by大姉)
(何それ、わたしが悪い事したみたいじゃない by小姉)
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