第5話

 ちょっとした曲がり角。

 いつもの、通り道。人混み。改札。

 彼が死んでも、わたしの日常は残酷に続く。そしてわたしは、彼に会えないまま。日常に取り残される。ほんのわずかに残った、好意だけを持って。

 どうでもよくなった。思春期の色々も、他のことも。彼がいない。もう、すれ違わない。

 大人になってしまった。彼の不在が、わたしの心に穴を空けていったから。

 いつも通りの、曲がり角。最近、ひとに言い寄られることが多くなった。女男問わず。ほんの少し大人びただけで、周りの見る目は変わってしまうらしい。

 どうでもよかった。

 電車も、そろそろ乗らなくていいだろうか。どこかに行く意味を、見出だせなかった。

 でも、今日は。

 乗らなきゃ。

 彼のいない曲がり角を、曲がる。

 行き先は。

 彼がいた場所。

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