第2話

 そろそろ、疲れてきた。

 限界だなと思う。この生活も。任務も。

 人の夢に潜り込んで、悪い夢を殺す任務をしている。他にも色々任務をしていたが、いま実行を要請されているのは、このひとつだけ。

 ひとりの女の夢だった。思春期ぐらい。

 思春期ぐらいとは思えないぐらいに、どろどろの、どうしようもない夢を見ていた。どうしようもないところから任務は始まり、なんとか人並みの夢に戻したあたりで、いつも夜が明ける。

 しんだほうがましだった。毎晩、夢の中で女を助ける。ときには身体を殺され、ときには精神を砕かれながら。

 それでも、夢の中の出来事。目が覚めてしまえば、生きている自分がいる。ただ、感覚は消えない。

 身体は生きているけど、心のなかは。もうほとんど死んでいる。

 定期報告のために、仲間のいる場所に向かう。足取りも、もう、おぼつかない。駅の改札。なんとか潜り抜ける。


「あ」


 声。

 無視した。

 他人に構っていられるほど、余裕はない。

 いっそのこと、電車に轢かれてしまおうか。そう思うほどに。疲弊している。

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