ちょっとした曲がり角

春嵐

第1話

 駅の、大きめの改札を通ったあとの、少し広いところ。改札までは人がたくさん一方通行だけど、乗る電車はみんな違うから散らばっていく、その、ちょっと空いた広いところ。

 わたしの乗り場は、ここを曲がったところ。この、曲がり角。

 ときどき、すれ違うひとがいる。

 なぜだか分からないけど。そのひとに、好意を抱いている。ひとめぼれ的な。

 相手の名前も連絡先も、知らない。なんなら顔もあんまりよく分からない。でも、そのひとだとなぜか分かってしまう。そして、それを好きでいる。

 自分でも、よく分からなかった。なぜ、そのひとが好きなんだろうか。

 今日は。すれ違うかな。

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