第7話

「ここからは…少し君には辛いかもしれん…」

殿下はそうおっしゃると更に先へ進みました。

先程とは打って変わって道にはゴミが増え、少し異臭もします…


心なしか暗いような…

すると道の端に横たわる人が…

「…この街の貧民街だ…」殿下は苦しそうにそうおっしゃいました。

私はこのような思いをしている方がいることを恥ずかしながら初めて知ったので殿下の言葉に目を丸くしてしまいます。


「この国はまだまだ貧富の差が激しい…食べ物がなく死んでしまう者もいる…大体は働けない…身体の弱い者だ…」

道の端に横たわる方々はとても苦しそう…


「この国の医療を受けるには金がすごくかかる…金持ちしか医療を受けられん…国でそこをどうにかしたいのだが…」

「…それに…身体の弱いものでもできる仕事を用意してやりたい…何かしらあるはずなんだが…俺にはまだ経験が少ないからか…未だにいい案がでないのだ…どちらも…」

殿下は顔を歪めてらっしゃいます…

私も…なんとかして差し上げたいわ…


私はふと思い立ちました。


「殿下…街のお医者様やおくすり屋さんには国から支援金を出して差し上げてはいかがでしょうか?その分患者様を安く診て差し上げるように約束していただいて。」

殿下がこちらをじっと見つめています。

…なんだか驚いてらっしゃる?

私…変な事を言ってしまったかしら…


「その代わり貴族を診るお医者様からはたくさんお金を納めていただいてはどうでしょう?貴族からはたくさんの診療代をとるようにして…払えますでしょうから。」


これで国の負担もあまりなくバランスがとれるのではないかしら…?貴族から不満が出るでしょうか…

でも領民を助ける税のようなものだと割り切ってくださらないかしら…


殿下は私の手をギュウっと握ると

「なるほど…」と目を輝かせました。


「メイ…身体の弱い者の仕事はどう思う…?」

「そちらは…私もよくわかりません…でも肉体労働ではない…何か座ってできるような仕事があればいいですよね…」

私がそう言うと殿下は顎に手を当てて何かを考えているご様子…


「メイ…今日はもう帰っても良いか?考えねばならん事ができた。街にはまた連れて行こう。」

「はい。私も少し歩き疲れてしまいましたので…」私は少し名残惜しく感じながらもそうお伝えしました。


今日はとても楽しい一日だったわ…!

でも…私達が華やかに暮らしている裏でこんな悲しい街があるなんて…

私は…本当に世間知らずですね…


私が王妃になったら…あまり過剰に貧しい思いをする方が出ないような国を作って行きたいわ…

今の王妃様も気にかけていらっしゃるはずだけど、それを正すのは時間がかかるのでしょうね…

王妃様の意思を私も引き継ぎたい…

少しでも苦しい思いをする方が少なくなるように…!





ここから数年後街には毛糸工場ができました。

羊の毛を刈って糸にする工場です。


今まで我が国では羊は食肉に使用されていた家畜でしたが、国の外ではその毛で糸を作りお洋服を作ったりするそうなんです!

それはとても温かいそうで寒い日が多いこの国にはピッタリの素材ですよね。

自国で作るため運送費がかからないので比較的安くこの素材が手に入るようになりました。結果貧しい民たちも温かな服を手に入れ易くなったのです。


おまけに工場では座りながら作業することができるので体力に自信がない方でも就業が可能です。


この事業の提案は殿下がされたそうで

素晴らしい発想の持ち主ですよね。

私…尊敬してしまいます…!!



あの殿下からいただいたガラス玉はネックレスに加工して毎日首から下げるようにしました。

それを殿下に伝えると

「そうか…」と俯いてしまいました。

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