第135話 フィルツェン

「宜しかったら、うちのコボルトを助けてくれたお礼もしたいので、王都に来ませんか? 歓迎致します」


 レンがヴァイシュラを誘うと。


「良いのですか?」

(実は行くところが無くて彷徨ってたのです)


「勿論です。うちの子の恩人ですからね」


「その子は辺境の巡回が仕事だから一緒に行けないけどね」


 とロジーナ。


「え! この子も王都に連れて行っても良いでしょうか?」


(折角出会えた、こんなに忠義心に厚い可愛い子だから、ここで別れるのは寂しいわ)


 ヴァイシュラはブラッドハウンドのコボルトを気に入ったようだ。


「え、あ、ああ良いですよ。良いよな?」


 レンがアラスカンマラミュートのコボルトとバーニーズマウンテンドッグのコボルトに確認する。


「わんわん」(マスターの言葉は絶対ワン)

「わんわん」(何とかなるワン)


「大丈夫だそうです」


「有難う、良かったぁ。ところで、この子の名前は何と言うのですか?」


「名前ねぇ………、良し、じゃあ命懸けで、身体を張って俺を守ろうとした忠義に応えて名を授けよう。君の名は、フィルツェンだ」


「わんわん」(やったぁ~ワン)


 尻尾を大きく振って、ピョンピョンと跳ねて踊り出すフィルツェン。


「わんわんわんわん」(フィルツェン、フィルツェンワン)


「フィルツェン、宜しくね」


 ヴァイシュラが優しい目でフィルツェンを見つめていた。



「お〜い! レン様、そろそろ九頭竜の解体も終わるから、マジックバックに収納してくれ」


 フェルダーがレンに呼び掛ける。


「ん、本当だ」


 レンとヴァイシュラが話をしている間、ゴールデンレトリーバーのツヴァイ、ドーベルマンのドライ、フラットコーテッドレトリバーのフィア、シベリアンハスキーのフンフ、ワイマラナーのアハト、ボルゾイの丿インがフェルダーとゲイルと一緒に黙々と解体をしていた。


「どれどれ。ジュリアさんに良いお土産が出来たよ」


 レンは超大型のマジックバックに九頭竜の素材を収納した。


「ガフガフ」(肉、美味いかな?ワン)

「ウォン」(きっと美味いワン)


 アハトがよだれを垂らして、ハァハァ舌を出している。


 レン達は騎竜のところまで戻る途中。



 先頭をロジーナが歩く。そして、アハトと丿インが歩き、レンとヘレナが並んで歩き、その後ろからヴァイシュラとフィルツェンが歩き、その後ろをフェルダーとドーベルマンのドライ、エリーとゴールデンレトリーバーのツヴァイ、ダリアとフラットコーテッドレトリバーのフィア。


 サンディが駆け足でレンの元に駆け寄った。


「レン様、みんなパートナーのモフモフがいるのに、私にはいないのです。是非に丿インを、丿インを私の護衛にしてくださああああい!」


 サンディはレンにしがみつく。


「ちょっとお! 離れなさいよ!」


 ヘレナがサンディをレンからヒキハナソウとするが、


「お願いしまあああああす!」


 サンディはレンから離れない。


「はぁ、仕方ない。王都に帰ったらサンディの護衛を丿インにしてやろう。無理矢理モフるなよ。強制モフモフは犯罪だからな」


「ははあ〜、有難き幸せええええ。神に誓って絶対強制モフモフは致しません!」


「良いの?」


「まあ、丿インには悪いけど、サンディも重要人物だからな。護衛は必要だろう。丿インの変わりの俺の護衛はドライツェンにするよ」


「うへっ、アハトとドライツェンって、イケイケで最凶じゃない?」


 ちなみにドライツェンはジャーマンシェパードドッグのコボルトだ。毛色は黒と黄褐色。短毛のダブルコート。


 レン達は、暫く歩き騎竜のところに戻って来た。


「ヴァイシュラさんは騎竜に乗れますか?」


「ええ、大丈夫です」


「じゃあ、俺とヘレナがドラッヘに乗って、ヴァイシュラさんはヘレナが乗ってきた騎竜に乗ってもらおう」


「分かったわ。私が前に乗るね。しっかり捕まるのよ」


 こうして、レン達は王都に帰るのであった。

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