第136話 大将軍ヴァイシュラ

 その頃のエチラル王国では………。


「ヴァイシュラ様あああああ!」


 ヴァイシュラが女王を引退し行方不明になった話を聞いて、エチラル王国の心ある者達は必死にヴァイシュラの捜索をしていた。


「何処に行かれたんだぁ」


「ヴァイシュラ様が居ないとこの国は終わりだ」


「探せ! 探すんだあああああ!」


 必死の捜索も虚しくヴァイシュラの行方を突き止める事が出来なかった。


 まさか、アレス王国の王都に居るとは誰も考えられない。


 もしも、レン達とヴァイシュラが出逢わなければ、ヴァイシュラは再びエチラル王国に戻り、レンの最大の敵になったかも知れない。



 王都に行ったヴァイシュラは、可愛いコボルト達と幸せに暮らす王都の民と、性差別のないアレス王国を見て、肌で実感して、レンの配下に入る事になった。


「ヴァイシュラは将軍だな」


「そうですね。軍事の最高責任者が相応しいです」


 レンの言葉をサンディが支持する。


「そうだな。ヴァイシュラが将軍になるなら、俺は将軍を退き、ヴァイシュラの下でただの騎士団団長で良いぞ」


 とフェルダーが将軍職を譲ろうとする。


「いや、私は一兵卒でも良いですよ」


 とヴァイシュラが言う。


「俺の変わりに将軍でも良いぞ」


 ロバートもヴァイシュラに将軍を譲ろうとする。


「フェルダーはコボルト部隊。ロバートは人の部隊を見て貰うから将軍はそのままだ。ヴァイシュラには大将軍になってもらって、フェルダーとロバートの上の役職にしよう」


「まあ、それが妥当だな」


「ああ、ヴァイシュラを使いこなす自信がないから、ヴァイシュラが上司で命令された方が良いな」


 ロバートとフェルダーも了承したので、ヴァイシュラはアレス王国の大将軍となった。


 最近ナンバーズ達は伸び悩んでいた。いつの間にか師匠達より強くなっていた。技術が追い付き、レベルも上がりスピードとパワーが師匠達を上回ったからだ。


 文句無しにアレス王国トップの実力になっていたのだが、九頭竜戦では思いの外苦戦した。一対一では、九頭竜に勝てない事が分かった。


 世界は広いと実感した。


 しかし、ここに九頭竜でさえ、一対一で倒せる者が現れた。


 大将軍ヴァイシュラ。


 彼女は戦いの申し子。ツヴァイ、ドライ、フィア、フンフの4匹掛かりでも勝てない。更にアハト、丿インが加わっても、それにエルとブルが加わっても勝てない。


 ヴァイシュラは個人の武術の腕も超一流だった。ナンバーズ達の個々の弱点を指摘し、連携の隙きをつく。


 ナンバーズ達は水を得た魚の様にヴァイシュラの技術を吸収し実力を伸ばしていく。


 ヴァイシュラの優れている点は個人の武力だけではない。寧ろ集団の戦いにその真価を発揮する。個々の力の集合、その最適解で軍を動かす。


 フェルダーの騎士団対ゲイルの騎士団、フェルダーの軍対ロバートの軍、ヴァイシュラの指導で模擬戦を重ねて、軍は精強になり団長、将軍の采配の能力は向上していた。


 アレス王国の兵は他国とは異なり、コボルト達が稼いだ資金で常備兵としている。


 訓練を重ねる事により、こうしてアレス王国の兵は最強の兵となっていくのであった。

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