第134話 レンとヴァイシュラ

「エチラル王国女王ヴァイシュラ様、助太刀感謝致します。アレス王国国王のレンです」


 レンが改めてヴァイシュラに挨拶をする。


「私は王妃ヘレナです。うちのコボルトを助けていただき有難う御座いました」


 ヘレナもヴァイシュラに頭を下げる。


「いや、女王は引退しました。今はただのヴァイシュラです。それより、本当に国王と王妃なのですね」


「そうですよ。国王です」


「国王らしくないですね。い、いや悪い意味ではないのです。部下達と随分フランクな関係で、しかもモフモフに囲まれて羨ましいというか、なんと言うか」


「そうですね。国外の人の前では不味いのは分かっているのですが、昔からこんな関係で直せないのですよ」


「レン様を含めて、みなさん平民出身なのですか?」

(貴族ではあり得ないわ)


「いや、俺はヒダ国王の息子で、ヘレナは伯爵の娘ですよ。まあ、他のメンバーは元冒険者ですがね」


「私も一応、貴族の娘で今でも貴族です。あ、始めましてアレス王国の軍師をしているサンディと申します」


 レンの後ろからサンディが顔を出した。


「軍師! 女性なのに軍師なのですか?!」


「そうです。性別で差別してはいけません。女性でも能力があれば発揮して貰うべきです。エリーとダリアも騎士団の団長をしています。ね!」


「え、こっちに振らないでよ。あ、名乗り忘れていてすいません。騎士団団長のエリーです」


「同じくアレス王国騎士団団長のダリアです」


「同じく、ゲイルです」


「あ〜、俺は将軍のフェルダーです」


「国王の側仕えのロジーナよ。と言うか、うちの国の重臣は女性の方が多いわよ。王妃が宰相をやってるし」


 ロジーナはヴァイシュラが女王を引退したと聞いて平常運転だ。


「そうなんですね。とても良い事だと思います!」


 ヴァイシュラは目がキラキラしてきた。


(この若さで女王引退って、何があったんだ? 性差別とかそんな感じかなぁ。女王だから強権を使えると思うんだけどなぁ)


 そんなヴァイシュラを見て、レンは考えていた。


「うちの子を助けてくれて有難う御座いました。こっちに来なさい。あなたからもお礼を言いなさいよ」


 ヘレナはブラッドハウンドのコボルトを呼んだ。


「わんわん」(有難うワン)


「本当にこんな子なのに………」

 ヘレナはブラッドハウンドのコボルトの頭を撫でている。


「あ、あのぉ、私もその子の頭を撫でても良いでしょうか」


 ヴァイシュラが恐る恐るヘレナに尋ねる。


「ああ、勿論良いですよ。良いわよね?」


「わんわん」(勿論良いワン)


 ヘレナはブラッドハウンドのコボルトをヴァイシュラの前に出すと、ブラッドハウンドのコボルトは頭をヴァイシュラに出した。


「まあ、可愛い!」

 ブラッドハウンドのコボルトの動作を見て、ヴァイシュラは声をあげた。年相応の女性の高い声だ。


「この子で良いのかしら? もっとモフモフの子もいますよ」


「いや、この子が良いのです。確かに他の子も可愛いのですが、この皺とか喉の皮のたるみとか、可愛いじゃないですかぁ」


 ヴァイシュラはブラッドハウンドのコボルトを撫で撫でしながら、喉のたるみもたぷたぷ触っている。


「確かにブサ可愛いけどね」

 ロジーナが呟く。

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