第111話 リリス再び

 レン達は元ヒダ王国王都に戻ってきた。


 元ヒダ王国王都をアレス王国王都にする事を予め決めていたので、ヘレナを始めとする仲間達・重臣達がレン達を出迎える。


「ロバート、ご苦労。ヨリツナの軍は倒したのか? ヨリツナはどうなった?」


 元ヒダ王国を統治する際、障害になるのは元王族だ。その中でも王位継承順位が1位だったヨリツナの存在は大きい。しかもヨリツナは高スキルの戦力兵器。生き残って居れば面倒な事になるだろう。


「心配は要りません。プロフェッサーのレッサーワイバーンのお陰で、問題なく撃破しました。ヨリツナも苦労しましたが、討ち取った事を見届けております」


「そうか、ご苦労様。これで憂い無く元ヒダ王国の統治も出来るな」


 ロバートはヨリツナ軍と戦ったアレス王国の将軍だ。元Aランク冒険者で、片足を失ってからは解体士として冒険者ギルドで働いていて、「とっつぁん」と呼ばれていた。フェルダーの師匠。


「レン様、お帰りなさい」


 その後、リリスが前に出て来てレンを出迎えた。


「何故、リリスがここに? 国に帰ったんじゃないの」


「一度帰りましたわ。そして戻ってきたの」


 セントバーナードのコボルト・ツヴェルフを従えて、胸元が開いたセクシーな服で、ふくよかな胸を張って出迎えるリリスの胸に、つい目がいってしまうレン。


 そんな視線をヘレナに見られると、ヘレナが怒るので、レンは慌ててヘレナを見た。


 ヘレナは下を向いていたので、ホッとしたレンは気を付けようと思うのであったが、目がいってしまうのは男の性。ポンコツとは言え美しい女性なら尚更だ。


 リリスは隣国ミノス王国の王女だ。絶世の美女。妖艶で聡明らしい、確かに美しい事はレンも認めるところだが、レンからすると以前はどう見てもポンコツに見えていた。


 だが今日は違った。いつもは「モフモフ! はぁ」とか言ってコボルトを追いかけているのに、余裕があるようで聡明と言われれば聡明に見える。


「あら、どうしたのかしら? 私に見惚れているのね」


 リリスはレンに近付き密着し、レンの耳に息を吹き掛ける様にして、吐息まじりで囁く様に言った。


 ゾクッとするレンは慌ててヘレナを見る。いつもなら「止めなさい!」って言うヘレナだが、何故か今日は大人しくリリスの行動を見ているだけだ。


「戻って来たばかりで疲れているでしょうから、後で話を聞いて貰うわ。重要な話よ」


 リリスはエロティックな笑みを浮かべて、スプリットタンの舌がチョロリと見えた。長い睫毛の奥の淫らな目が欲望を唆る。


 ゴクリと唾を飲み込むレン。

(流石、傾国の美女と言われるだけあるな。気を付けなきゃ)





 レンは自室のソファーで寛いでいた。ワイマラナーのコボルト・アハトとボルゾイのコボルト・ノインがソファーの後ろで護衛をしている。


 ポメラニアンのコボルト・ポメが紅茶を煎れて、お茶請けのクッキーがテーブルの上に置かれていた。


「クッキー、食べる?」


 レンがアハトに尋ねる。


「ガフガフ」(食べるワン)


「はい。あ〜んして」


「ガファー」(あ〜んだワン)

 アハトの口にクッキーを投げ入れるレン。


「ノインも食べる?」


「ウォンウォン」(護衛中だワン)


「ノインは堅いねぇ」


 そんな事をやっていると。


「わんわんわんわん」(ヘレナ様、ランドルフ様、リリス様がお出でですワン)


 柴犬のコボルト・シバが落ち着いた小声でレンに告げた。


(ヘレナとリリスが一緒? ランドルフさんも……、何の話だろう。リリスが重要な話と言ってたなぁ)


「入室を許可する」


「わんわん」(畏まりましたワン)

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