第112話 結婚と婚約

 レンの部屋のソファーは、一人がけのソファー2つと、3人がけのソファー1つがテーブルを挟んで置いている。


 レンは一人がけのソファーに座っていて、3人がけのソファーにヘレナとランドルフが座った。


 一番最後に入室したリリスはレンの横の一人がけのソファーに座る。


 胸元が開いたセクシーな服のリリスが正面じゃなくて良かったと胸を撫で下ろすレンだった。


(ついつい目がいっちゃうけど、正面じゃ無ければ、誤魔化せる。大丈夫だ)


 レンは拳を固く握りそう決意した。


「わんわん」(紅茶だワン)

「わんわん」(持って来たワン)


 そこにポメラニアンのコボルト・ポメとチワワのコボルト・チワがヘレナ、ランドルフ、リリスに紅茶を持って来た。


「わんわん」(おかわりは如何ワン)


「お、気が利くねぇ」


「わんわん」(お茶請けもあるワン)


 そしてトイプードルのコボルト・トイがレンにおかわりの紅茶とお茶請けのクッキーを持って来る。


 ヘレナ、ランドルフは無言でその様子を見ていて、 リリスは嬉しそうにコボルト達を見ていた。


 レンは紅茶を啜り、ひと息ついてから口を開いた。


「リリス、それで重要な話ってなんだ?」


「結婚の話よ」


「結婚? 誰の?」


「レン、貴方と………」


「へ、俺?」


「ヘレナ」


 ヘレナは顔を真っ赤にして俯いていて、ランドルフはニヤニヤ笑っている。


「お、おう」

(まあ、ヘレナとはいずれ結婚しなきゃとは思ってたからなぁ)


「そして、わ・た・し。ふふ」

 長い睫毛の奥の目と官能的唇が、艶やかな笑みを浮かべた。


「へ?」

(何でリリスと俺が………)


「まあ、所謂いわゆる政略結婚なのです。これを読んで下さいまし」


 リリスが書状をレンに渡した。それはミノス王国国王からの親書であった。


 その内容はアレス王国建国とヒダ王国、エマ王国との戦勝に対する祝辞と、そのご祝儀の目録、そして同盟を結ぶ用意が有ること、その一環としてのリリスとの結婚を前提とした所謂婚約の打診だ。


(ミノス王国の国王はもう戦勝の事も認識しているのか、情報収集が早いな)


 ちょと警戒しリリスを見るが、リリスは落ち着いた表情で澄ました顔をしていた。


「リリスと婚約ねぇ………。俺はヘレナといずれ結婚するつもりだったから、ヘレナと結婚するのに否はない。俺は二人を妻にする事は出来ない。ヘレナも同じ気持ちだろ?」


 ヘレナは嬉しさを隠しきれない顔をしていたが、真面目な表情に戻してレンに答える。


「レン、私を選んでくれてとても嬉しいわ。だけどレンは国王になったのよ。妻が複数いてもおかしくないし、後継者を考えれば寧ろ複数いるべきなの」


「とは言ってもなぁ………」


(リリスに不足は無いが、そう言う事でもないだろう)

 レンはちらりとリリスを見る。


 妖艶な笑みを浮かべて余裕のリリスは前屈みになり、レンに話かけた。


「そう言う事も含めての婚約ですよ。結婚までに時間はあります。ゆっくりと考えて、時間を掛けて私を見定めてくださいまし」


 レンはリリスの胸元に目がいってしまう。


(だって胸元が開いた服で前屈みになるなんて反則だ。服の隙間から、ふくよかで官能的な胸が見えるんだぞ! 男の性だ、仕方ないだろう)


 レンは心の中で言い訳をしてリリスの目に視線を戻す。


 笑みを浮かべるリリスは「どうぞ、お好きに見て下さいまし」と言っているようだ。

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