第110話 エマ王国のその後

 エマ王国軍を倒したアレス王国軍はそのまま、エマ王国に進軍した。


 元々、地方の豪族が王国に従っているだけの、ヒダ王国に近い領地の領主達は、エマ王国国王が倒された事を知り、コボルトの軍勢を見て、次々と恭順の意を表した。


 始めエマ王国の各領地への交渉は、捕虜にした兵の中で役職が上の者に任せて、レンとコボルト達がその交渉を見守る形で行われた。


 その後、各領地の領主が恭順すると、その領主の外交を担う者達を、まだ恭順していない各領地に派遣した。


 そこで恭順を誓えば良し。誓わない領地の領主には、コボルト達で襲撃する。


 エマ王国は全勢力を持ってヒダ王国を侵略したが、その戦力が今回の戦争で壊滅した事により、エマ王国内ではアレス王国に贖える戦力は存在しない。


 コボルト達と周辺の領主の精鋭達が攻め込めば、一瞬の内に領都は陥落した。その中でも、初めに陥落したのは王都だ。


 制圧した王都で、レンはエマ王国国王は既に死亡し、エマ王国は無くなり、アレス王国の領地となった事を宣言した。


 領主を処分した領地は近隣の配下に入った領主に与えると、それを知って、まだ忠誠を誓っていない領主達は臣従していった。


「早く臣下になった方が得だ。近隣が従わなければ苦労せず領地が増える」


 そんな話が元エマ王国中に広まっていたのだ。


 一方、行軍に同行した周辺の領主の精鋭達は、戦力と言うよりはアレス王国のコボルト達の圧倒的な力を見せつける為に同行させたのだが、精鋭達はその圧倒的なコボルトの力を目の当たりにして、驚愕するとともに畏敬の念に打たれた。


 その中には、レンに臣従しそのまま臣下となり同行を願う者も現れたので、臣下となる事を許可し、同行も許したのだが、その者達は若い者が多く、しかも圧倒的に女性が多い。


 女性の精鋭達は殆どが臣従したと言っても過言ではないだろう。


「俺に従ったと言うよりは………」

 レンは精鋭達を見ていた。


「モフモフの守り人はコボルトを慈しみ愛でて崇拝するのです。モフモフは正義です」


 ロジーナが精鋭達になんだか訳が分からない事を説明していた。


「モフモフは正義ね」

「モフモフは愛よ」

「モフモフ命だわ」


 そして、それを聞いて心酔する精鋭達。


「何かヤバい方にいってないか? 新興宗教みたいだぞ」


「う〜ん、理解は出来るだけにコメントに困るわ」


 とゴールデンレトリーバーのコボルト・ツヴァイをブラッシングしながら答えるエリー。


「まあ、悪い方向ではないし、これくらい許容しなさいよ」


 とフラットコーテッドレトリバーのコボルト・フィアをモフリながら答えるダリア。


「そうかあ?」


「ガフガフ」(お腹空いたワン)

「ウォン」(もう少し待ちなワン)


 ワイマラナーのコボルト・アハトとボルゾイのコボルト・ノインは通常運転だ。


 精鋭達の中の若い男子達の中には、コボルトの武力に心酔した者もおり、その者達はシベリアンハスキーのコボルト・フンフ達の訓練に混ざって訓練に励んでいた。


「バウバウ」(そこ、甘いワン)


 フンフは槍の石突で足を払い、転倒した若者の目の前に槍の先端を向けた。


「ま、参りました」


「あれって言葉が分からなくても大丈夫なのかな?」


「武に言葉は無用」


 ゲイルは両腕を組んでうんうんと頷きながら訓練を見守っていた。


(と言うか、ゲイルが教えてやれば良いんじゃね?)

 と思うレンだった。


 レン達は元エマ王国の半分以上の領地を勢力下においた時点で、エマ王国の領地の臣従化は領主達に任せて、ヒダ王国の王都に戻る事にした。 


 勿論、臣従した精鋭達も一緒だ。何処から調達したのか、精鋭達はみんなマイブラシを持っていた。


 そしてコボルト達と仲良くなる第一歩として、ロジーナの指導の元、コボルト達をブラッシングするので、同行したコボルト達の毛並みが妙にツヤツヤしているのが気になるレンだった。

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