第106話 ヒダ王国国王軍
「陛下! 駄目です。もう、もちません」
「ぐぬぬ、エマの奴らめ。ここぞとばかりに全勢力で攻めて来るとは………」
エマ王国とヒダ王国国王軍の戦いはエマ王国軍に大勢が傾いていた。
「やはり、全軍には全軍で無ければ対抗は出来ぬか。仕方ない退却だ王都に籠城し迎え撃つ」
「籠城!」
「ああ、ヨリツナがレンの軍を蹴散らして戻るまで耐える。ヨリツナが戻ったところで挟撃するしかあるまい」
「な、成程」
「急げ! 殿は息子達に任せる」
「は! なんとしてもやり遂げる所存です」
国王は虎の子の高スキルを持つ庶子達を殿に残し、急ぎ王都へ向かうのであった。
「ワンワンワンワン」(大勢の人間が向って来るワン)
ゴールデンレトリーバーのコボルト・ツヴァイが匂いと音で退却してくるヒダ王国軍を感知した。
「ん、エマ王国にここまで攻め込まれたか?」
「バウバウバウバウ」(いや、戦ってる様子は無いワン)
と耳をピクピク、鼻をクンクンさせてシベリアンハスキーのコボルト・フンフが言う。
「まさか、退却……。負けたのか………」
幼い頃、国王の圧倒的な強さを見ていたレンは信じられない表情になる。
レンの予定では、ヒダ王国軍とエマ王国軍が争う中に割り込み、圧倒的な数で両軍を一気に飲み込むつもりだったからだ。
「ワォンワォン」(どうするワン)
フラットコーテッドレトリバーのコボルト・フィアが顔を傾げてレンを見た。
「やる事は変わらない。蹂躙するまでさ」
「ウォン」(任せてワン)
「ガフ」(蹂躙ワン)
ワイマラナーのコボルト・アハトとボルゾイのコボルトノインが力強く応えた。
「召喚!」
レンは大勢のコボルトを召喚した。
「ゲイル、エリー、ダリア! ヒダ王国軍を踏み潰して来い!」
「承知!」
「任せて!」
「よっしゃあああああ」
レンの側にはロジーナ、アハト、ノインを筆頭として、戦国時代の馬廻衆に匹敵する決戦戦力のコボルトの側仕え達が護衛を務めて残る。
そして、ゲイルとフンフの槍隊・第二騎士団を先頭に、ダリアとフィアの魔法師団・第三騎士団、エリーとツヴァイの弓術隊・第四騎士団が進軍した。
「陛下! 前方から正体不明の軍勢が迫って来ます」
「な、何いいぃ! 何処の兵だ? 数は如何程だ?」
「旗が無いので何処の軍勢かは分かりませぬ。数は───」
前方から巨大な火の玉が勢い良く放たれた。
「うわあああああ」
「ぎゃあああああああ」
「ぐ、軍使も出さずにいきなり攻撃しやがった」
そして、間髪入れずにエリーとツヴァイの弓術隊から矢が雨の様に降り注ぐ。
「突撃!」
「ガウウウウウ!」(突撃いいい!ワン)
ゲイルとフンフの号令で槍隊が駆けて行く。
「犬の魔物が武器を持って襲って来た」
「くっ、コイツら強い!」
「前方は総崩れだああああ」
戦闘に疲れ果てて退却中の兵達は、急襲に為す術もなく蹂躙されていくのであった。
「犬の魔物が兵士の様に武器を持って襲って来た様です。数は不明ですが我が軍の倍以上で、一匹一匹が我が軍の兵より練度が高く、とても持ち堪えられません。ここにも直ぐに来るでしょう」
「犬の魔物? ……コボルト、……レンか。ヨリツナは負けたのだな」
国王は空を見上げた。
「陛下! お逃げ下さい」
「何処に逃げる? ここまでレンの兵が来たと言う事はヨリツナは負けて、王都も既に陥落したのであろう。前はレン、後ろはエマ。どうせなら息子の手にかかろう。最後に一目会っておこうか」
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