第104話 ランドルフ

「しかし、ちょうど良いタイミングでヘレナは現れたよな」


「そうね、眷属で見張ってたのと、ちょうど良いタイミングで祖父が来たのよ。チャンスだと思って連れて来て貰ったわ。間に合って良かった。祖父も冒険者ギルドの総ギルマスに用があったみたいだしね」


「なるほどね。いつ、向こうを出たんだ」


「今朝よ。レッサーワイバーンなら1日も掛からないわ」


「レッサーワイバーンすげぇ」


「なんだか国王からも助けてくれって手紙が届きましてね。ヘレナから定期連絡を貰っていて状況は知ってたから、アレス王国の助っ人で来てみたのですが、助けは要らなかったようですね」


「いやいや、助かりましたよ」


「ははは」


 ランドルフはレンとの話が一段落つくとヘレナに声を掛けた。


「じゃあ、一旦帰るぞ。ヘレナ」


「はいはい。用は済んだしね。帰りますか」


「陛下、北で父上に引導を渡すのでしょう?」

 ランドルフはレンに尋ねる。


「ん、そうですよ」


「南は任せて下さい。後ろは気にせず思う存分暴れて来て良いですよ」


「どういう事?」


「あは、来る途中、王子の軍を半分くらいぶっ飛ばして来たのよ」

 ヘレナが答える。


「へ?」


「帰りもあと半分ぶっ飛ばして帰りますよ」

 ランドルフが平然と言う。


「あはは」

 笑うしかないレン。


「プロフェッサー、辺境に行っちゃうの?」

 ロジーナがランドルフに尋ねる。


「ん〜、どうせ戦いが終わったらここに集合すると思うよ。ね、陛下」


「あ、ああ。次の王都はここだ」

(良く分かるな。この人)


「ほほう、そうか。じゃあ待ってればチワもこっちに来るんだね」


「そう言う事になるね」


 ロジーナの問いに答えるレン。


「プロフェッサー、暫くは国にいるんだろ」

 フェルダーがランドルフに尋ねる。


「そうだな。アレスのコボルトは興味深いから暫く見てようかと思ってるよ」


「良し、戦争が終わったら打ち上げだからな」


「ははは、相変わらず。飲むのがすきだな」


 ランドルフは元Aランク冒険者で、若い冒険者達の憧れの人だった。


 若い頃のフェルダーもランドルフに憧れていた一人で、ロジーナはヘレナとは幼馴染であった。子供の頃からランドルフを知っているが、当時のランドルフはちょい悪オヤジで、ロジーナはほのかに憧れていたらしい。


 ちなみに、ヘレナとロジーナの両親は戦争で亡くなっており、短い間だがランドルフがロジーナも養育していた過去がある。


「そろそろ行くぞ」

 ランドルフがヘレナの頭を撫でる。


「止めてよ。恥ずかしい」

 ヘレナはランドルフの手を払いレンに振り向いた。


「あっ、レン! そう言えば」


「ん、どした?」


「ミノス王国のエロ王女は国に帰ったわよ」


「ふ〜ん、そうか」


「それだけ。じゃあまたね」


 ランドルフとヘレナは謁見の間から出ていく。


 サバスの遺体はコボルト達が片付けて、クリーンもしているので綺麗になっていた。


 暫くして、レンは何気なく窓の外に目をやると、レッサーワイバーンがランドルフとヘレナを乗せて飛んで行くのが見えた。


「ガフガフ」(お腹空いたワン)


「アハト、そうだな。取り敢えず飯にするか」

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