第103話 ランドルフとサバス
「始めまして陛下、孫娘のヘレナがお世話になっております。テイマーズギルドのギルドマスター、ランドルフと申します」
ヘレナの後ろからイケメンの老人が現れてレンに跪いた。
「「プロフェッサー!!」」
フェルダーとロジーナが揃って声をあげる。
「ガフガフ?」(プロフェッサー?ワン)
「ウォンウォン」(ヘレナと似た匂いがするワン)
ワイマラナーのコボルト・アハトとボルゾイのコボルト・ノインが鼻をクンクンしていた。
ランドルフはフェルダーとロジーナをチラ見して、笑みを浮かべると頭を垂れた。
(ヘレナが孫娘と言う事は、ヘレナの祖父! と言う事はワイバーンをテイムして伯爵になった人か!)
「と、言う事はワイバーンでここまで来たのか? ヘレナ」
「ははは、レッサーワイバーンです。陛下」
「ガフガフ」(ワイバーン?)
「ウォンウォン」(変な蜥蜴の匂いはしたワン)
「あ、ああ。無視したようですいません。どうぞ立って下さい。国王のレンです。ランドルフさんにお会い出来て光栄です。ヘレナには大変お世話になっています」
「ははは、陛下、臣下に敬語は不要です」
「ラ、ランドルフ! 貴様もヒダ王国を裏切ったのかあああああ!」
冒険者ギルドの総ギルドマスターは、ランドルフを見て騒ぎだした。
「ウォンウォン」(この男煩いワン)
「ガフガフ?」(斬って良い?ワン)
「待てよ」
レンはアハトと丿インを止める。
「いや、サバス。俺がいない間にお前がテイマーズギルドを辺境に追いやったんだろ。領主が建国したんだ、領地に属する組織は従うに決まってるよな。つまりお前がそうなるようにしてしまったんだよ」
冒険者ギルドの総ギルドマスターの名前はサバスと言うらしい。
「ぐぬっ、しかしお前──」
「サバス! 判断を誤ったな!」
「何をおおおお」
「サバス、お前の目的は何だ? コボルトを殺したいのか? 魔物を全滅させたいのか? 違うよな。打倒六天魔王だろ。同胞を、仲間を、家族を殺した。強力な力を、恐ろしさを肌で感じたはずだ。あの強大な敵を倒すには、普通にやってちゃ駄目な事は分かってるよな」
「………」
「覚悟が足りないんだ。目的の為には泥水を啜っても、這いつくばっても、悪魔に魂を売ってもやり遂げる覚悟が無いから、こんな中途半端な終わりを迎えるんだよ」
「くっ………」
唇を噛み締め、涙が滲み出るサバス。
「ヒダ王国じゃどう見ても六天魔王を倒すには役不足だ。コボルト、良いじゃねえか。こんなにあっさりヒダ王国を倒せるんだぜ。将来を考えりゃあ、お前は土下座してでも、全財産差し出してでも、頭を下げてアレス王国の臣下に入り、その勢力の拡大に寄与すべきだったんだ」
「し、しかし! 魔物は………、魔物は家族を殺した敵なんだ。敵なんだよおおおお!」
「はぁ、ちっちゃい事言うなよ………。お前は………、事ここに至っても、魔物への嫌悪感は拭い去れないか………」
ランドルフはため息をついた後、諦めた表情をしてレンに振り向いた。
「陛下、サバスは駄目だ。本当は仲間にして陛下の世界征服に協力させようと思ったんだがなぁ。仲間にすれば凄い頼りになる奴なんだ。だけど魔物に対する嫌悪感を克服出来ない。それが出来ないと、コボルトをベースに発展するアレス王国にとって百害あって一利なしだ。ここで一時的に命を救っても、必ずどこかで裏切り、陛下に害を成すだろう」
「そ、そうか」
(元々助ける気は全くなかったけどね)
「サバス! 六天魔王は陛下が倒す。お前は悪いがここで終わりだ。俺がお前の敵を討つ陛下を助けるよ」
「そ、そん───」
ランドルフは素早く腰の剣を抜き、サバスの首を刎ねた。
「えっ、陛下が六天魔王を倒すの?」
ロジーナがレンを見る。
「おう、陛下は世界征服を狙ってるらしいぞ、それならいずれれは六天魔王とぶつかるさ」
レンが喋る前にランドルフがロジーナに答えた。
「かっこいい!」
ロジーナが憧れの目でレンを見ると。
「駄目えええ! レンは駄目なんだから」
ヘレナがレンの前に出て、レンを守るように両手を広げる。
「はは、まいったなぁ」
照れるレン。
「ウォンウォン」(マスター、顔が赤いワン)
「陛下、ヘレナを頼みますよ」
ウィンクするランドルフ。
ドキッとするレン。
「ガフガフ?」(こいつ斬る?)
「斬っちゃ駄目だって」
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