第102話 冒険者ギルドの総ギルドマスター
謁見の魔の王座に腰掛けるレンの前に、ロジーナが冒険者ギルドの総ギルドマスターを連れて来た。
レンの両脇にはいつものようにワイマラナーのコボルト・アハトとボルゾイのコボルト・ノインが控える。
「ウォン?」(誰?ワン)
「ガフ?」(斬る?ワン)
ロジーナは冒険者ギルドの総ギルドマスターを縄で縛って引き摺って来ていたので、煩く喚いている。
「痛い痛い、儂に何をする。この縄を外せ!」
「ロジーナ、その老人が冒険者ギルドのマスターか?」
「そうよ、このジジイが諸悪の根源。冒険者ギルドの総ギルドマスターよ」
ロジーナが縄を放り投げるとレンが声を掛けた。
「俺を指名手配にしたらしいな。何か言っておく事はあるか?」
「ふん、儂を直ぐに解放しろ。魔物で国を襲いやがって、貴様は魔王認定だ。大陸全ての冒険者ギルドが黙ってないぞ。貴様は大陸中の冒険者ギルドから狙われるんだ。そして魔物は全て皆殺しにされるのだ」
「ほう、上等だ。コボルトに牙を剥くのか、大陸中の冒険者ギルドを根絶やしにしてくれよう」
「コボルトを皆殺しにするって!」
総ギルドマスターの言葉にロジーナが反応し、総ギルドマスターに蹴りを入れる。
「つぅ、ロジーナ! この裏切り者があああああ! 冒険者は魔物を倒すのが仕事だぞ。コボルトなんぞと共同しやがって」
「はあ? 嘘つきジジイが何を言ってるの。戦争中立と言いながら、先に手を出したのは冒険者だって言うじゃないか。アレスのコボルトが、まるでその辺にいる魔物と同じように人間を襲う、危険な魔物なんて嘘っぱちだったわよ。コボルト達は人間と同じさ」
「ウォン」(そうだワン)
胸を張るノイン。
「馬鹿な事を言うな。魔物は魔物。人間とは相容れないのだ。今だってこの国を襲っているじゃないか」
「これは戦争なのよ。戦争で敵国の武装勢力を襲う事は当たり前だわ。コボルトは無抵抗の民には手を出してない。村を襲う盗賊や敵国の民に暴力を振るい金品を強奪する兵より、むしろコボルトの方が人道的でしょ」
「ふん、今に手痛いしっぺ返しを食うぞ」
「ガフガフ」(それはないワン)
首を振るアハト。
「言い残す事はそれだけか?」
「くっ、儂を、儂を解放しろ。そして魔物を殺せ!」
「お前、あれか? 昔、南の六天魔王の国にいたのか?」
フェルダーが口を挟む。
「そ、それがどうした」
「魔王と魔物達に国を奪われたから、そんなに魔物を嫌ってるのかと思っただけだ。それで復讐の為に冒険者ギルドに入った口だろう。それから頭角をあらわして総ギルドマスターまで登り詰めたってところか」
「ふん、貴様も元冒険者なんだろ。冒険者は魔物と戦う職業だ。魔物達と一緒にいる事は間違っている」
「ははぁ〜ん。それでテイマーズギルドとも揉めてたのか。話が見えて来たぜ」
「な〜んだ、そう言う事だったのね。どうしてテイマーズギルドの活動を妨害するのか疑問だったわ。六天魔王の国の揉め事をこの国に持ち込まないで欲しいわね」
謁見の間にヘレナがいた事に驚くレンはノインとアハトを見る。
「ウォン」(知ってたワン)
「ガフガフ」(匂ってたワン)
(知ってたなら言えよぉ)
「ヘレナ、王都の守りはどうしたの?」
レンがヘレナに問う。
「あは、冒険者ギルドがちょっと気になってね。大丈夫、直ぐに帰るから」
「いつこっちに来たんだよ」
「ついさっきよ」
「はあ?」
(どういう事?)
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