第86話 ロジーナ3

 亡命したいと熱望するロジーナの願いに根負けして、王城にロジーナを連れて来たプリシラ。


 ガシャガシャ……。


 義足の音が聞こえて、ロバートが前から歩いて来た。


 ロバートの両脇には、土佐犬のコボルト・エルとイングリッシュブルドッグのコボルト・ブルが護衛として同行している。


「ロジーナ! 何でお前がここにいる!」


「ロバートさん。貴方もここで働いているの?」


 ロバートは王国屈指の元Aランク冒険者。当然現在Aランク冒険者のロジーナとは顔見知りだった。


「お、おう。俺は何故かこの国の将軍にされちまってよ。ロジーナは何故ここに?」


「貴方からもお願いして貰えないかなぁ。私もこの国で働きたいわ! そして、可愛い子達を愛でたいの!」


「可愛い子ぉ?」


 ロバートはロジーナを訝しげに見る。


「ロバートさんだって、そんなブサ可愛い子達を連れてるじゃない。羨ましいわ!」


「ああ、コイツらの事か。エルとブルは俺の護衛だ」


「わんわん」(護衛だワン)

「わんわん」(この女、目が恐いワン)


「ねぇねぇ。良いでしょ」


「ロジーナ、言ってる事の意味を分かってるのか? 冒険者を止めて国に仕えるんだぞ」


「分かってるわよ。そしてこの子達は守るわ。守らなきゃいけないのよ」


「はぁ、守るって言ってもコイツらもそれなりに強いぞ」


「わんわん」(強いワン)

「わんわん」(負けないワン)


「お願いよ」

 上目遣いでロバートを見るロジーナ。


「ふむ、国王レンに紹介しても良いんだけど、最近何者かがこの国に侵入して来たって話もあるしなぁ」


 ギクッとなるロジーナ。


 そこに………。


「わんわん」(見つけたワン!)

「ワンワン」(コイツかワン)


 ビーグルのコボルトとゴールデンレトリーバーのコボルト・ツヴァイが現れた。


 その後をエリーが駆けて来て。


「ツヴァイ、速いってば………。あ! ロジーナさん。侵入者はロジーナさんだったのね」


「わおおおおん!」(侵入者だあああワン)


 遠吠えをするビーグルのコボルト。


「な、何の騒ぎ? あ! あの時のコボルト」


 ビーグルのコボルトを見てヤバいと思うロジーナ。


 コボルト達がわんわんと現れる。


「何の騒ぎよぉ! あら? ロジーナじゃない」


 そこにヘレナも現れた。


「ヘ、ヘレナぁ。助けてぇ。この国に害を成す気はないのよぉ」


 半泣きでヘレナに縋るロジーナ。


 ヘレナもロジーナの事は知っていた様だ。


「ロジーナ、どうしたのよ。ちょっと落ち着いて話を聞きましょうか。皆、一旦解散」


「わんわん」(ヘレナの指示ならワン)

「わんわん」(仕方ないワン)

「わんわん」(行くかワン)


 コボルト達はヘレナの指示でゾロゾロと持ち場に戻って行く。


「じゃ応接室に行こうか?」

 ヘレナがロジーナを連れて行こうとする。


「顔見知りだから俺も話を聞こう」

 ロバートがそう言ってエルとブルもついて行く。


「私も行くわ」

 エリーとツヴァイと、


「私も」

 プリシラとポメもついて行く。


 その後、ロジーナは正直に全てを語り、ヘレナはレンに相談の上、ロジーナを受け入れる事になった。


 Aランクの冒険者が仲間になるのだから、戦力増強を考えれば大きなメリットを享受するレンだった。


 しかし、この事が冒険者ギルドとレンの国の間に決定的な亀裂を作り、対決姿勢を明確にしていくのであった。


(既に対決姿勢は明確だよ)


ナレーションに突っ込むなよ。

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