第85話 ロジーナ2

「わんわん」(マスター!ワン)

「わんわん」(失礼しますワン)


 レンの執務室にバセットハウンドのコボルトとラブラドールレトリバーのコボルトが報告してきた。


「ん、どうした?」


「わんわん」(森を抜けて王都にワン)

「わんわん」(侵入した者がいるワン)


 レンの両脇には、今日もワイマラナーのコボルト・アハトとボルゾイのコボルト・ノインが護衛している。


「ガフゥ?」(なにぃ!ワン)

「ウォン」(侵入者ワン)


「何故分かった?」


「わんわん」(巡回のコボルトがワン)

「わんわん」(気絶させられたワン)


「気絶?」


「わんわんわん」(目を覚ました者がワン)

「わんわんわんわんわん」(女性冒険者にやられたと言ってますワン)


「ふむぅ、巡回のコボルトを気絶させるとは、なかなかの腕だな」


「ウォン」(凄腕ワン)

「ガフガフ」(面白いワン)


 丿インは感心し、アハは興味津々だ。


「あ〜、アハトは俺の護衛だから行けないよ」


「ガフ?」(行けないのワン?)

「ウォン」(当然ワン)


「その者を捕らえよう。ツヴァイに報告して捕縛するように伝えろ! 俺からの指示だと伝えてくれ」


「わんわん」(了解だワン)

「わんわん」(任せてワン)


 バセットハウンドのコボルトとラブラドールレトリバーのコボルトは、そう返事して執務室を後にした。







「なに、なに、この街は? イッツ・ア・ファンタスティック・ワールドだわ! 夢の国よ!」


 街を巡回するコボルト達を見て、手をワキワキさせながらキョロキョロするロジーナ。


「この子達がコボルトなんて信じられない。あの汚い、臭い、狂ってるの3K魔物と同じなんて………。そうねぇ、綺麗、可愛いと、………後は何かしら、毛がモフモフ!」


 ボキャブラリーが足りないロジーナは、そんな事を考えながら王都の街を歩いていた。


「あら? ロジーナさん。お久しぶりねぇ」


 声を掛けられたロジーナはドキッとして振り向くと、そこにはプリシラがいた。


 プリシラはポメラニアンのコボルトと一緒に買い出しに来ていた。


「ヒダ王国の王都に居たと思っていたけど、この国の王都に居たのかしら? あの襲撃から身を隠せるなんて流石ロジーナさんですわ」


「プリシラ! ………その子は?」


「ポメですわよ。愛称ですけどね。可愛いでしょ」


「可愛い! 可愛いわ! 巡回している子達も可愛いと思ったけど、その子は何ていうか、特別可愛いわ。………ちょっと話を聞かせて貰っても良いかなぁ?」


「良いですわよ」


 プリシラのロジーナはポメラニアンのコボルトを連れてお洒落なケーキ屋さんに入った。


 そしてプリシラから事の真相を聞く。


「ええ! そうするとこんな可愛いコボルト達を、意地汚い冒険者の野郎達が襲った事が原因なのね。汚いコボルトを使ってスタンピードの様に無差別に街を襲って、中立の冒険者ギルドまで襲撃した訳ではないのね」


「そうよ、戦争ですもの戦いは仕方ないですわ。でもコボルト達は無抵抗のものには一切手を出していないの。冒険者の乱暴者達が捕まえて売ろうとしたのが発端よ。虐待野郎達は許せませんわ」


 ポメラニアンのコボルトをモフモフしながら会話するプリシラを見て、居ても立っても居られないロジーナが意を決してプリシラにお願いする。


「プリシラさん。その子を私にもモフらせて貰えないかなぁ?」


「あら、私にお願いされても困るわ。この子が良いと言ったら良いのですが……。ポメ、どうかしら?」


「わんわん」(初対面の人はヤダワン)


「な、なんて言ってるの?」


「具体的にコボルトの言葉を理解出来るのは国王のレン様だけですわ。でもあまり乗り気では無い事は分かりますわ」


「ねぇねぇ、プリシラはどうやってその子達と仲良くなったのかしら?」

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