第81話 宣戦布告
「陛下!」
真っ青な顔をした近臣が国王ヨショリの執務室に入って来た。
「どうした? 具合でも悪いか」
執務室には執事長と嫡男ヨリツナがいて、二人とも入って来た近臣を心配そうに見ている。
「コ、コジマ公爵が、コジマ公爵がレンに敗れて死亡。………コジマ公爵領はレンに奪われました」
「は?」
驚き言葉が出ない国王、嫡男、執事。
「待て待て、何の冗談だ。いくら温厚な俺でも怒るぞ」
「冗談ではありません………」
国王の言葉に返事をする近臣。
「コジマ公爵にレン討伐の令を出してから、ひと月も立っていない。まだ、兵も集まらないはずだ。いくら何でも早過ぎるだろう」
「来月にはコジマ公爵から良い報告が届くと思ってたが………」
嫡男と執事が続けて発言するが誰も答えず、静まりかえる執務室。
「詳細を話せ」
国王が気を取り直し近臣に問う。
「詳細は分かりませぬ。しかし、この手紙とともに、コジマ公爵の首が送られて来ました」
「首!」
「………」
嫡男は驚き、執事は絶句する。
「どれ見せて見ろ」
国王が手を出して、近臣は震えながらレンからの手紙を渡した。
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ヒダ国国王ヨショリ殿
次男アキツナを使い、理由もなく我が村の接収を図り、その上国使による街の接収、更にはコジマ公爵に侵攻の命を下した事で、国王の意思を確認するに至り、一連の行動から我が領地への明らかな宣戦布告を確かに受け取った。
我が領地に対する数々の侮蔑行為と武力による侵攻に断固として、立ち向かう用意がある。
ここに国を起こす事を宣言するとともに、この書をもって我が国はヒダ国と戦争状態に入る事を宣言する。
アレス王国国王レン
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「くっ、レンの奴。まさか、国を起こしてまで歯向かうとは」
国王からレンの書状を受け取り一読した後、嫡男ヨリツナが吐き捨てるように言う。
暫く無言で考えを巡らせていた国王ヨショリが口を開く。
「レンの国は認めて、友好条約または休戦条約を締結するように進めよ」
「は? 国をお認めになるのですか。友好条約とは、何とも………」
近臣は驚きを隠せず国王に意見を告げてしまう。通常なら打首でも文句の言えない行為だが、長年仕えた近臣故に許される行為だ。
「うむ。………今までは背後をコジマ公爵に守って貰っていた事で、敵国エマと全力で戦えたが、背後にコジマ公爵に匹敵する敵国が現れたのだ。前後を敵国に挟まれて、レンとエマが手を結べばどうなると思う。いや、このまま指を咥えて見ていれば手を結ぶのは必定。国の存亡の危機なのだ」
「な、なるほど………」
嫡男ヨリツナの言葉に納得する近臣だが、(あの力もない、頭の悪いレンが)と小さい頃のレンを想像すると納得が出来ない様子だ。
「ヨリツナ、レンは英雄コジマ公爵を倒した。その事からコジマ公爵以上なのは考えるまでもない。しかも実力は未知。なればエマより強敵かも知れぬ」
国王が嫡男に言う。
「なるほど、そうすると交渉役にはそれなりの人物を派遣しなければいけませんね」
「うむ、少なくともレンを小さい頃に虐めていたような奴には任せられん。レンの気持ちを逆撫でするだけだ」
国王は嫡男、執事、近臣を見るが………。
「この城にいる者では駄目ですね」
嫡男ヨリツナは諦めたように呟く。
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