第80話 コジマ公爵2

「貴様が大将か?」


 ドライがフェルダーの元に戻り、ひと息ついたコジマ公爵がフェルダーに尋ねる。


「そうだ。俺がこの軍の大将………。辺境街の将軍フェルダーだ」


「そうだっけ?」


「そうだよ。良いところなのにチャチャを入れるなよ」


「あはは、カッコつけてたからね」


 フェルダーとダリアが掛け合いをしていると、


「じゃあ、俺が行くぞ」


 ゲイルが愛用の槍を構えて前に進み、エリーは無言で弓を構えていた。


「む、やるな………」


 気の抜けた会話をしながらも隙がないフェルダーとダリア。歴戦の戦士の風格を持つゲイル。鋭い視線で隙きを狙うエリー。


 更に周囲で一瞬の隙きも見逃さぬように、虎視眈々とコジマ公爵を狙うコボルト達。


 グレートデンのズィベン。

 ゴールデンレトリーバーのツヴァイ。

 ドーベルマンのドライ。

 フラットコーテッドレトリバーのフィア。

 シベリアンハスキーのフンフ。


(良くもここまでの戦力を集めたものだ)

 冷や汗を流すコジマ公爵。


「しかぁし、儂も辺境の抑えとして長年王国を守護してきた公爵よ」


 大剣を強く握りしめるコジマ公爵。


(とは言え、このままでは勝ち目はないな)


「大将同士の一騎討ちと行こうじゃないか!」


(全員は無理だが、一対一なら負けん。大将さえ討ち取れば戦況はひっくり返せるはず)


 そう考えたコジマ公爵がフェルダーの方に、身構えながら歩み出る。


「へぇ、俺になら勝てると踏んだか」


 フェルダーは周りの仲間に目配せをするとみんな頷く。


 フェルダーも大剣を構えて前に出た。


 フェルダーの大剣は、冒険者の頃に手に入れた光の魔剣。コジマ公爵の雷の魔法を纏わせた、ミスリルの大剣に勝るとも劣らない。


 最初の一合で互いの実力を知るコジマ公爵とフェルダー。簡単には決着が着きそうに無い事を肌で感じていた。


 二合、三合、四合と打ち合うが、


 ブスッ!


「ワンワン」(やったワン)

 ツヴァイが矢を放っていた。


 コジマ公爵の右腕に矢が突き刺さり、


「くっ………」


 歯を食いしばりフェルダーの剣を受けるが

 更に矢がコジマ公爵の足にも刺さる。


「隙き有り!」

 エリーが叫ぶ。


 フィアが炎弾をダリアが雷撃を放ちコジマ公爵を襲い、何とか躱して大剣で払うコジマ公爵の腹と背中に槍が突き刺さる。


「バウバウ」(油断大敵ワン)

「………」


 鋭い目でコジマ公爵を睨むフンフと無言のゲイルが槍で突き刺していた。


「卑怯な───」


 ドライがコジマ公爵の首を落とした。


「ガウガウ」(ふ、所詮この程度かワン)


「き、貴様らあああ! 卑怯だぞ! 公爵は一対一の勝負を挑んだのにいいい!」


 コジマ公爵の側近が泣きながら大声でフェルダー達を批判するが。


「卑怯上等! 俺は一対一の勝負を受けると言った覚えはない。勝手に勘違いした公爵が馬鹿なだけだ」


「な、なにぃ!」


「俺達は冒険者だ。敵を倒す為になら何だってやるぞ。正々堂々と戦って魔物に殺されるなんて馬鹿らしい」


 フェルダーは胸を張り、恥じる事は無いと言う表情で正々堂々と答えた。


「大将同士の一対一の勝負を何だと思っているのだ。これではコジマ公爵も死んでも死にきれ──」


「アフアフ」(ゴチャゴチャ言うなワン)

 ズィベンが側近の首を刎ねた。


「ガウガウ」(戦いはまだ終わってないワン)

 そう言ってドライが次の戦いに身を投じるとツヴァイ、フィア、フンフ、ズィベンも後を追う。


「そうだな。終わらせないとな」

 フェルダーは息を大きく吸って


「コジマ公爵を討ち取ったりいいいいい!」

 大声で叫ぶ。


 戦場にフェルダーの声が響いた。

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