第79話 コジマ公爵

 隊列を保持出来なくなったコジマ公爵軍と、辺境街軍の戦いは乱戦になっていた。


 辺境街軍のコボルト達は、普段からの5匹1チームの狩りで鍛えたチームワークを発揮して、前衛後衛の連携もスムーズで優勢に戦いを進める。


 始めは尻込みしていた傭兵達も、コジマ公爵軍の惨状を見て勢いづいて戦闘に加わる。





「な、何が起こった!」


「罠が仕掛けられていた様です」


「罠? 罠如きでこの有様か!」


「その上戦略的魔法で先陣は崩壊したもようです」


「ええええい! コボルトと傭兵如き蹴散らせええええい!」


 後方で指揮していたコジマ公爵が側近の言葉に怒声を上げるが、戦況は変わらず。


 それもそのはず、元々必死に戦ってる兵士達だ、怒声を浴びたぐらいで状況が好転するはずもない。


「何をしておる! くっ、こうなったら儂が行くぞ! 者共、ついて参れ!」


 コジマ公爵とその周りの兵達は前線に駆けて行く。


「うらあああああああ!」


 コジマ公爵が雷を纏った大剣を横に払うと、雷の刃が飛び前方で戦っていた両軍の兵士達が斬り払われる。


「退けえええええ!」


 コジマ公爵の威圧が籠もった大声で前方の両軍の兵士達が道を開ける。


「大将出て来い」


 傭兵とコボルトを斬り払い大声で叫ぶコジマ公爵。


 コジマ公爵が雷の大剣でコボルトの首を斬り落とそうとしたが、大きなマチェットで受け止められた。


 雷の大剣を受け止めたのは、グレートデンのコボルト・ズィベンだ。


「ほう、我が剣を受け止められたのは久しぶりよ。コボルトの癖になかなかやるな」


「ウワン!」(お主もワン)


「ふん、これでも喰らえ」


 鍔迫り合いで不敵な笑みを浮かべるズィベンだが、コジマ公爵の雷の大剣から雷撃が放たれた。


「ウワンウワン!」(これしきの事耐えられるワン)


「ふはははは、これも耐えるか」


 コジマ公爵は更に力を込めるが、ズィベンは耐えて見せた。


「ワンワン」(ズィベン下がれワン)


 そこに、ゴールデンレトリーバーのコボルトツヴァイが矢を放つ。


 咄嗟にコジマ公爵はズィベンに蹴りを放ち、矢を斬り落とす。


「高速の矢だな──。っと」


 コジマ公爵の言葉が終わらぬうちに、フラットコーテッドレトリバーのコボルト・フィアの雷撃がコジマ公爵を襲うが、コジマ公爵は雷の大剣で雷撃を受け止めた。


「ワォンワォン」(ちっ、駄目かワン)


「ふ、連携も中々──」


「バウ!」(そりゃあワン!)


 間髪入れずに、シベリアンハスキーのコボルトフンフの槍がコジマ公爵を突き刺す。


 雷の大剣で槍を受け流したコジマ公爵は、返す大剣で下からフンフを斬り上げるが、フンフは槍で巻き弾く。


「はははは、コボルトと言っても侮れんな。大都市から連絡が来ないのはそう言う事か。貴様らなら数日もあれば落とせるな。ん?」


「ガウガウ」(仲間が世話になったワン)


 そこに現れたドーベルマンのコボルト・ドライ。


「ほう、コボルトとは言え、良い面構えだ。相手にとって不足無し!」


 コジマ公爵はドライの雰囲気、立ち姿を見て侮れ無いと気付き、満面の笑みで大剣を構える。


 ドライは一瞬のうちにコジマ公爵の懐に入ると、ゴブリンジェネラルの魔剣をコジマ公爵に高速で打ち込む。


 キン! カキン!


 金属音が鳴り、両者の剣撃が交差し、打ち合い、受け流す高速の技の応酬が止まらない。


「ちょい待てよ。勝手に走りやがって、お前ら速過ぎだ」

「あら、そこにいるのは?」

「コジマ公爵みたいね」

「おお、良い感じで打ち合ってるな」


 そこに、フェルダー、エリー、ダリア、ゲイルも駆け付けた。

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