第73話 冒険者ギルド制圧2

「燃やせ!」


 レンがコボルトに指示すると、魔法を使えるコボルト達が呪文を唱える。


「「「「わんわん」」」」

((((炎弾))))

 炎弾の魔法陣が浮かび上がる。


「ははは、炎弾如きでギルドが、が、は?」

「馬鹿な! 幾つの魔法が重なってんだ」

「止めろ!」

「そんな魔法が放たれたら………」


 宙に数百の魔法陣が浮かび上がっていた。


「あはは、面白いわ。私も混ざろう。あそこのセクハラ野郎に炎弾を叩きつけてやる」

 女性の冒険者も呪文を唱えた。


「ちょっと待ちなさああああい!」


 冒険者ギルドの建屋の窓から、体格の良い初老の男が大声をあげて飛び降りて来た。


 ドッカーン!!!


 数百の炎弾が重なり、最早戦略級の大魔法となった炎弾がギルドの建屋に直撃し、炎が舞い上がる。


 冒険者ギルドの建屋に立て籠もっていた冒険者達もタッチの差で飛び出して来た。


「や、止めろと言ったろおおおお!」

 体格の良い初老の男が燃え上がる建屋を見て大声で吠える。


「あ、ギルマスじゃん。中に居たのね」

 レンの後ろに居た女性冒険者が呟く。


「何故、俺があんたの言う事を聞く必要がある?」

 レンはギルマスに冷静に答える。


「中にまだ人がいたんだぞ! 逃げ遅れた人が死んだぞ。貴様! どう償うのだ」


「死ぬだろうね。そのつもりで魔法を撃たせたからな。遊びじゃないんだ。これは戦争だ。降服しない武力を持つ敵は殺す」


「冒険者ギルドは参戦していない! 言わば中立。お前は全ての冒険者ギルドを敵に回したぞ。良いのか!」


「寝言は寝てる時に言え! 先に俺の部下に攻撃してきたのは冒険者ギルドだ。貴様らの宣戦布告を受けての結果だ。既に戦争は始まってるんだ!」


「な、何を証拠に!」


「そう言ってたよな? 何もしてない俺のコボルトに冒険者が攻撃したって」

 レンは女性冒険者に聞いた。


「コボルト! この可愛い子達はコボルトなのね! ………そうですよ! こんなに可愛い子達なのに、無理矢理捕まえようとして戦闘になったわ」


「ほらね、証人がいる。まあ、後先はどっちでもいいが、既に我が軍と冒険者ギルドの戦争は始まっているんだよ。そもそも俺がギルマスを呼んだ時に来なかったろ。その時点で敵対したと見なす」


「うぬ、貴様の領地に金輪際冒険者ギルドは開設しないぞ」


「いらないな」


「魔物退治や人々の護衛はどうする?」


「コボルトがするからいらない」


「くっ、貴様は冒険者ギルドから───」


「ペチャクチャ煩い! 殺れ!」


 コボルト達の矢が一斉にギルマスに放たれた。


「ふぬ! うらあああああ!」

 ギルマスは剣を振り回し矢を斬り落とす。


「流石ギルマス」

「元Bランク冒険者だけあるな」

「良いぞ! ギルマス」

「やっちまええええ!」


 冒険者達は歓声をあげる。


「どうだ───」

 ギルマスは矢が止んだので、レンを睨んで何か言いかけたが………。


 ギルマスの脇を擦り抜けたボルゾイのコボルト・ノインが、ギルマスの後ろにいてギルマスの首が落ちていた。


「ウォン!」(隙きがあり過ぎワン)


「ギ、ギルマスが殺られた!」

「もう駄目だああああ」

「すいません。降参します」

「助けて下さい」


 持っていた武器を放り投げ土下座して命乞いをする冒険者達。


「まあ、許せる奴らは許すが、………初めにコボルトを襲った奴はどいつだ」


「わんわん」(コイツらだワン)

「わんわん」(許せんワン)


 土佐犬とイングリッシュブルドッグのコボルトが素早く踏み込み、二人の冒険者の首を落とした。


「ひぃ」

「俺はやってない………」

「どうか命だけは………」

 それを見て、震えて青ざめる土下座の冒険者達。

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