第54話 ゴブリンの穴4
レンに頭を撫でられてご満悦のフィアの様子を見て、自分達もレンに良い所を見せたくて、我慢出来ないアハトとノインはレンを上目遣いで見て。
「ガフガフ」(ゴブリンを倒したいワン)
「ウォンウォン?」(倒しに行って良い?ワン)
とレンに尋ねる。
「ガウガウ」(護衛を何だと思ってるワン)
ドライがアハトとノインを睨む。
「ドライ、まあまあ、そんな事を言わないで、アハトとノインも活躍したいのだろう。俺の護衛はドライが居れば充分だ。行ってきて良いぞ」
「ガフガフ!」(やったー!ワン)
「ウォンウォン」(有難うワン)
アハトとノインは前方に走って行った。その後ろ姿を睨むドライ。
「ドライ、いつも有難う。君の忠誠は心強いから、これをあげよう」
レンは自分の中型のマジックバッグの中身を超大型のマジックバッグに移し、中型のマジックバッグをドライに渡す。
「ガウガウ!」(有難き幸せワン!)
ドライは中型のマジックバッグを恭しく手に取り、大事そうに肩から掛けた。
「ガウガウ」(大事にするワン)
「さて行くか」
レン達は更に奥に進む。
「ガフガフ」(見て見てー)
「ウォン!」(倒したワン!)
狩ったコブリンを引き摺ってくるアハトとノイン。
「ガフガフ」(褒めてワン)
「ウォンウォン」(褒めて褒めてワン)
アハトと丿インは尻尾を大きく振ってレンに駆け寄り頭を擦り付けて来た。
「お、やったな。ドライ、マジックバッグに入れてやれ」
レンはアハトとノインの頭を撫でて褒めるとドライに指示する。
ニヤリと笑いマジックバッグにゴブリンの死骸を仕舞うドライ。
それを見て驚くアハトとノイン。
「ガフガフ」(マスターのバッグワン)
「ウォン」(羨ましいワン)
「ガウガウ」(真の護衛が貰えるワン)
胸を張り誇らしげなドライであった。
アハトもノインも強く、一瞬で複数のゴブリンを瞬殺しているし、ツヴァイとフィアの攻撃範囲に入ればあっと言う間に弓矢と魔法でゴブリンは倒されて行く。
「折角来たのに、何だかワクワクドキドキがないなぁ」
「そりゃそうよ。見てるだけだもの」
レンの言葉に即答するヘレナ。
「だよねぇ。戦わないと暇だよな」
「戦わなくても良いわよ。危ないから」
そんな時、
「ウォーンウォーン!」(何かあったワン!)
ノインの遠吠えが聞こえる。
「行ってみよう」
レン達がノインの元に駆け付けると、そこには宝箱があった。
「おお!宝箱」
「ちょっと触らないでよ。罠があったらどうするの!」
ヘレナは宝箱に近付こうとするレンを止めて、呪文を唱え従魔を召喚した。
「え! 従魔召喚! 使えるの?」
「ふふん。勿論使えるわよ。これでもテイマーズギルドのサブマスターよ」
「二人しかいないギルドだけどね」
「3人よ! 祖父と私とレンがいるからね」
「そうだった。あははは」
召喚された従魔は困った顔でヘレナを見上げていた。
それは黒いネズミの魔物だった。
「ネズミだね」
「ネズミよ。罠の解除が出来るの。さあ、罠の有無の確認と罠があれば解除して、宝箱を開けて頂戴な」
ネズミの魔物の目が光り。
「チューチュー」(罠はないチュー)
そう言って、細長い尻尾を動かす。尻尾は伸びて針金の様な硬さになると、鍵穴に入っていく。
ガチャガチャっと音がして、宝箱の蓋が開いた。
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