第53話 ゴブリンの穴3

 ゴブリンの穴を進むレン達。


 先行するのはそれぞれマチェットを持った前衛達。ドーベルマンのコボルト・ドライ、ワイマラナーのコボルト・アハト、ボルゾイのコボルト・ノイン。


 その後にレンとテイマーのヘレナが続き、更にその後を後衛である弓使いゴールデンレトリーバーのコボルト・ツヴァイ、魔法使いフラットコーテッドレトリバーのコボルトメイジ・フィアが歩く。


 蜥蜴の騎竜ドラッヘは穴の入口が小さくて穴に入る事が出来なかったので、入口前において来た。


「ドラッヘは入口において来て大丈夫なのか?」


「なにが?」


「逃げたり、入口を警戒しているコボルト達を襲ったりしないか、ちょっと心配だ」


「ん、テイムしてるから、そんな事する訳ないよ」


「あれ、テイムしてたの? いつから?」


「初めに村に来た時にテイムしたわよ」


「ああ、だから騎竜技術が高そうに見えたのかぁ」


「えへ、バレたか。それよりレンは本当に大丈夫なの? 戦う所なんて見た事ないわよ」


「いやぁ、何だか最近身体の調子が頗る良いんだよねぇ。身体が軽いって言うか、力が湧き出るような気もするし………」


「そんなの気の所為よ」


 レンとヘレナが歩きながら、そんな日常的な会話をしている隣りでは、ツヴァイとフィアがゴブリン達を瞬殺していた。


 ちなみにレンの身体の調子が良いのは、レベルアップしているからだ。


 狩りやレベル上げをしていない本人は全く気付いていないが、眷属達の経験値の一部が自動的に割り振られる。


 テイマーがテイムしている魔物と一緒に敵を倒せば、経験値が入ってレベルアップするのはこの世界でも知られているが、そもそもコボルト達と一緒に敵を倒す事が殆どないレンはレベルが上がるとは思ってもいないのだ。


 しかも、孫テイムしているコボルト達からも経験値が入るので、レンは毎日のようにレベルが上がっていた。


 レンは孫テイムしているなんて全く知らない。直接テイムした35匹は知っているが、その35匹に従属しているコボルト達も孫テイムとしてカウントされている。


 この世界のテイマーは通常テイムしても2から3匹だ。衣食住の世話をしないといけないし、元々それほど多くはテイム出来ない。


 しかし、コボルトテイマーは違った。コボルトに限るが何匹でもテイム出来るのであった。そして、レンが孫テイムしているコボルト達は現時点で300匹を超えているのであった。


 ツヴァイとフィアは競うようにゴブリンを倒している。


「ワンワン」(どうよワン)

「ワォン」(くっ、次は倒すワン)


 ゴブリンが現れるや否やゴブリンの額には矢が刺さっていた。


 それを見たフィアは悔しそうな表情を浮かべ、火球を浮かべてゴブリンが現れるのを待つ事にしたようだ。


 それを横目でニヤリと笑うツヴァイ。


 次にゴブリンが現れた時、火球と矢が同時にゴブリンに当たる。


「ワンワン」(燃やしたら喰えないワン)

「ワォ!」(次は上手くやるワン)


 次にゴブリンが現れた時、フィアは雷の魔法を放った。


 雷は矢より速くゴブリンを倒し、矢はゴブリンを掠めた。


「ワォン!」(雷なら喰えるワン)

 自慢気のフィア。舌打ちするツヴァイ。


「おお、フィアは雷の魔法が使えるようになったのかぁ、偉いぞ!」


 その上、レンにも褒められて意気揚々のフィアはレンの元に近付き、アタマをレンに擦り付ける。


「ワォンワォン」(褒めて褒めてワン)


「良し良し」


 レンに頭を撫でられてご満悦のフィアだったが、その様子を見て我慢出来ないアハトとノインはレンを上目遣いで見て。


「ガフガフ」(ゴブリンを倒したいワン)

「ウォンウォン?」(倒しに行って良い?ワン)


 とレンに尋ねる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る