第32話 ノズチ2

「わんわん」(マスターだ)

「わんわん」(マスター)


 忙しそうに働くコボルト達はレンを見ると、頭を下げて挨拶し、レンは手を上げたり、頭を撫でながらコボルト達とすれ違う。


 アンナ、バーク、ジュリアを連れて村の奥まで進むと村長の屋敷の前に着いた。


 村長の屋敷の庭にはテントが張ってあり、その近くに大きな布でタープが用意されていた。


 タープの中には、テーブルと椅子が用意されておりそこに腰掛ける。


「まあ、日陰で良い感じね」


 アンナも椅子に腰掛けると隣りには秋田犬のコボルト・アインスが寝そべる。


「わん」(どうぞワン)


 ミニチュアダックスフンドのコボルトがお茶を出す。


「何かまた増えたんじゃないか?」


 レンはヘレナに尋ねる。


「そうね。百を超えた辺りから数えてないわ。フィア達が近くのコボルトの集落から連れて来たみたい。新しく仲間になったコボルトがまた連れて来るので増える一方よ」


「百………。はぁ、随分増えたなぁ」


「バークさん、この村長の屋敷を初めに改築して欲しい。それが済めばこの屋敷に取り敢えずみんなで住んで、後はヘレナの家とアンナさんバークさんの家とジュリアさんの家を作る順番かなぁ。そしてコボルト達の住処」


「私は当面、レンとこの屋敷に住んで良いわよ。一人でこの屋敷は広すぎるでしょ。それより村の防衛の方が先決だわ」


「うむ、村長の屋敷を改築したら村の防衛の為に塀を作るのを先にしよう。ゴブリンも多そうだし、ノズチもいたしな。安全第一だ。当面は俺達も領主の家に厄介になろう。いいだろ?」


「勿論。歓迎しますよ」

 レンはバークの言葉を了承するが、バークの言葉にヘレナが反応した。


「ノズチ! ノズチがいたの?」


「ああ、割と村の近いところにノズチがいたんだよ」


「それも大型のね。ヘレナちゃん、ノズチを倒して胃袋をゲットしたいんだけど、何とかならないかしら?」


 レンの言葉にジュリアが付け足して、ヘレナにノズチ討伐相談する。


「ノズチねぇ。何とかなるかもよ。倒し方は簡単だから………。ジュリアさん、ミスリルかオリハルコンのナイフを持ってない? アダマンタイトでも良いんだけど」


「全部あるわよ」


「じゃ決まりね。ノズチは倒して、胃袋をゲットしましょう」


「やりましょう」


(ヘレナとジュリアが握手して、ノズチを倒す事を決めたらしいが、こんな簡単で良いのか? Aランクなんだろ)


 レンは困った顔で二人を交互に見るが、二人は盛り上がっていて、レンのことはお構い無しだった。


「それじゃ早速俺は屋敷の改築を始めよう」


「有難う御座います。ゼクス、ズィベン!」


 レンはゼクスとズィベンを呼ぶ。


「アフ!」(お呼びですかワン!)

「ウワン!」(マスター、来た!ワン)


 遠くから駆け付けた二匹。


「ゼクスとズィベンは一番大きくて力が強いと思っている。そこでお前達に頼みたい。他にも大きくて力強い仲間を連れて来て、バークさんが改築するのを手伝ってくれ」


「アフ!」(任せてワン!)

「ウワン」(やりますワン)


 ゼクスはアイリッシュウルフハウンドのコボルト。ズィベンはグレートデンのコボルト。二匹はコボルトの中で一番大きい身体をしている。


 他のコボルトが小学生中学年の身長ぐらいで130cm程度だが、ゼクスとズィベンの身長は150cmはあるのだ。


 二匹は嬉しそうに、そして誇らしげに返事するのであった。

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