第33話 ノズチ3

 村長の屋敷の改築が始まった。


「わんわん」(マスター♪)

「わんわん」(任せてワン)

「わんわん」(力はあるワン)


 大工のバークの手伝いとして、アイリッシュウルフハウンドのコボルト・ゼクスとグレートデンのコボルト・ズィベンが大きくて力強いコボルトを集めてきた。


 ニューファンドランドのコボルト。

 ナポリタン・マスティフのコボルト。

 セントバーナードのコボルト。

 グレート・ピレニーズのコボルト。

 レオンベルガーのコボルト。

 バーニーズマウンテンドッグのコボルト。

 ジャーマンシェパードドッグのコボルト。

 ………。


 その他、多くの力自慢の大きいコボルト達が集まっていた。


 バークの指導で廃材から使える材料を集めて改築は進む。


 屋敷の庭にタープが張られて、ノズチ退治の打ち合わせもしていた。


 参加しているのは、コボルトテイマーのレン、テイマーズギルドのヘレナ、錬金術士のジュリアに薬師のアンナの人間四人と。


「ワフワフ」(アンナさ〜んワン)

 秋田犬のコボルト・アインス。


「ワンワン」(マスター♪)

 ゴールデンレトリーバーのコボルト・ツヴァイ。


「ガウガウ」(護衛だワン)

 ドーベルマンのコボルト・ドライ。


「ワォンワォン」(任せてワン)

 フラットコーテッドレトリバーのコボルト・フィア。


「バウ〜」(ふぁ〜ワン)

 シベリアンハスキーのコボルト・フンフ。


「ガフガフ」(腹減ったワン)

 ワイマラナーのコボルト・アハト。


「ウォンウォン」(さっき食べたワン)

 ボルゾイのコボルト・ノイン。


「バフー」(眠いワン)

 チベタンマスティフのコボルト・ツェン。


 人間四人は椅子に座り、アインスはアンナの側にツェンはジュリアの側に寝そべり、他のコボルト達は周りに座ったり寝そべったりしている。


「で、ノズチの攻略法を教えてくれ。情報を共有しよう」


「そうね。ノズチの前に立たない事。絶対気を付けてね。前から攻撃したらAランクでも敵わないわ。後ろ、上から攻撃が大前提ね」


「みんな聞いておけよ」

 レンはコボルト達に注意する。


「ガウガウ」(了解だワン)

「ワォンワォン」(任せてワン)


「ノズチは歩みは遅いんだけど、転がって速く移動する事がある。そこが狙い目よ」


「狙い目?」


「転がるのは高いところから低いところに転がるのよ。けして低いところから高いところへは転がれないわ」


(なんか当たり前の事だよなぁ)


「なんでそんな当たり前の事を言ってるの?って顔をしてるわね。つまり進む先が予め予想出来るってことよ。重要でしょ。進む先に罠を仕掛けておくのよ」


「罠ねぇ。………どんな罠?」


「落とし穴よ」


(落とし穴?)


「そんな単純な罠でいいの」


「良いのよ。縦長でノズチがすっぽり入る落とし穴を掘っておき、その罠に落とせばいいのよ。あとはミスリルなどのナイフで生きたまま解体していけば、上質な胃袋がゲット出来るわ」


「ノズチの生きた胃袋、………最高ね!」

 ゴクリと喉を鳴らすジュリア。


「そんな簡単に落とし穴に向かって転がるかなぁ?」


「ノズチは火を嫌うわ。通常なら油を掛けて火をつけたりするけど、そこはほらフィアの出番よ。火の魔法でノズチを燃やせば。転がって火を消しながら逃げようとするのよ」


「なるほど………」


「落とし穴はコボルト達が大人数おおにんずうで掘るのよ。コボルトは穴を掘るのが好きだから喜んで掘るわ。むしろ掘り過ぎないように注意しないとね」


「じゃあ、ナイフを貸すわ」


 ジュリアは八本のナイフをマジックバッグから出した。


「おお、これがミスリル、オリハルコン、アダマンタイトのナイフかぁ」


 ナイフの輝きに見惚れるレン。


「そんなに見ないでよ。錬金で作っただけの装飾が何もないナイフよ」


「え? ナイフを錬金で作れるの!」


「え、ええ。作れるけど、………装飾は出来ないわよ?」


「装飾なんていらないよ。実用第一だ。もしかしたらマチェットも作れる?」


「ええ、材料があれば作れるけど、何か?」


「マチェットを百本作って! 材料は、………廃材でもいいかな?」


「え、廃材? まあ、鉄や金属だったら出来るわよ。百本ねぇ。………作り方をコボルトに仕込んであげるわ」

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