第21話 ヤタ
アンナの家を出て冒険者ギルドにやってきたレンとコボルト達。女性冒険者達が遠目から「モフモフー」と呟きながら見ている。
(注目されてるなぁ)
「ツヴァイ!」
「フィア!」
エリーとダリアが手を振っている。
「ワン!」「ワオン!」
ゴールデンレトリーバーのコボルト・ツヴァイはエリーの元へ、フラットコーテッドレトリバーのコボルト・フィアはダリアの元に駆けていき飛び着いた。
「やっと来たわね」
ヘレナも冒険者ギルド前で待っていた。
「おう、ヘレナも間にあったようだね。あれからまだ2時間経ってないけど?」
「この人達が知り合いの冒険者? ねえ、紹介してよ」
「ああ、フェルダーさん。彼女はテイマーズギルドのヘレナです。辺境の開拓村に同行する事になりましたので、宜しくお願いします」
「テイマーズギルドの………。プロフェッサーの孫娘のヘレナさんだね。俺達はBランクパーティの『朝焼けの光』だ。レンの従魔達の師匠でね。レン達の事が心配だから護衛をする事にした。俺はリーダーのフェルダーだ」
「あら、祖父の事を知ってるのね。流石Bランクパーティ、街のトップランカーだけの事はあるわね。レンは随分頼もしい知り合いがいるじゃない」
「俺はゲイル」
ゲイルはシベリアンハスキーのコボルト・フンフを撫で撫でしている。
「私はエリーよ」
「ダリアよ」
エリーとダリアはツヴァイとフィアをモフりながら名前を告げた。
「エリーさん、ダリアさん、これ街で流行りの饅頭です。さっきアンナさんの家で食べたら美味しかったですよ」
レンはエリーに菓子折りを渡す。
「あら、気が利くわね。有難う」
「フェルダーさん。では冒険者ギルドで指名依頼を出すので、クエストを受けてから出発しましょう」
「お、そうだな。宜しく頼むぜ」
「こちらこそですよ」
「ワン」「ガウ」
「ゲイル、馬車の準備をしておいてくれ」
フェルダーがそう言って、レンと一緒に冒険者ギルドに入っていくとその後ろを秋田犬のコボルト・アインスとドーベルマンのコボルト・ドライがついて行く。
「フンフ、手伝え」
「バウ」(了解だワン)
ゲイルとフンフは馬車の準備をし始めた。
「馬車って自前?」
「そんな訳無いでしょ。借りたのよ」
「馬は自前だけどね」
ヘレナの問いにエリーとダリアが応える。
「そりゃそうか。御者はどうするの?」
「フェルダーとゲイルは馬で同行するから、私とエリーが交代で御者をするわ。フィアとツヴァイも覚えるのよ」
「ワン♪」
「ワオン♪」
「ヘレナもテイマーと言う事は従魔がいるんでしょ」
「いるわよ。でも大きい魔物は怖いから小さい魔物だけだけどね。おいで、ヤタ!」
「カー♫」
三本足のカラスがヘレナの肩に留まった。
「へぇ、八咫烏か。随分レアな従魔を連れているじゃない。これなら自衛ぐらい出来そうね」
「楽勝よ。と言いたい所だけど、流石にBランクパーティにでかい顔はできないわよ」
「ふふ、当てにしてるわよ。レンは弱っちいからね。レンを守ってくれるだけで御の字よ」
「時間を稼いてくれるだけで良いわ。私達が絶対助けに行くからね」
「それくらいなら出来ると思うわ。レンくんは貴重なテイマーズギルドのメンバーだから、言われなくても守るつもりでいたわよ。弱っちい冒険者の護衛だったら従魔を総動員する気だったけど 、あなた達が護衛なら不要ね。ヤタが居なくても戦力オーバーは確実だもの」
「プロフェッサーの孫娘の実力を見てみたいんだけどなぁ」
「あら、乙女は秘密を持つものよ。そうでしょ」
「まあ、そう言う事にしておきましょうか」
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