第20話 ジュリア

 秋田犬のコボルト・アインスがクンクン匂いを嗅ぎながら先導する。アンナとバークの家に向かっているのだ。


「ワフワフ」(ここだワン)


 こじんまりとした家の前に辿り着いた。


「ワフー!」(アンナさんワン!」


 レンがノックをするより早くアインスは門を飛び越える。


「あ! まあ、良いか」


 レンは門のノッカーを鳴らした。


 門の中からは


「アイちゃん! よく来たわね」


「ワフワフ」


 とアンナとアインスの会話?が聞こえる。


「あなた! レンくん達が来たみたい。出迎えて貰えないかしら」


 とアンナの声がした後、門が開いた。


「おう、よく来たな。まあ、入ってくれ」


「良い家ですね」


 とお世辞を言うレン。


「がははは、見え透いたお世辞は止めてくれ。借家だよ、借家。本当は俺があちこち改築したいんだが、借家だからなぁ」


(そういえばバークさんは大工だったな)


 バークに案内されて、庭にまわったレン達を待っていたのは、椅子に座るアンナともう一人の老齢の女性。


 アインスはアンナの膝に頭を乗せてなでなてされている。


「始めましてレンです」


「あら、礼儀ができているのね。真面目そうで賢そうな坊やね。私はアンナの幼馴染のジュリアよ」


「アンナさんにはアインスが大変お世話になっているのですよ。アンナさん、これは街で流行りの上品な甘さの饅頭らしいです。どうぞ召し上がりください」


「あらあら、そんなに気を使わなくても良いのよ。まあ、嬉しいわ。お茶を入れるからあなたも腰掛けなさいな」


 アンナはアルコールランプの様な魔道具でポットを温めて、お茶を入れて饅頭の箱を開ける。


「みんなで食べましょう」


 アインスが顔を上げてアンナを見上げる。


「ワフ?」(食べ物ワン?)


「あらあら、アイちゃんも饅頭がほしいのかしか?」


「ワフー」(食べたいワン)


「はい。どうぞ召し上がれ、あなた達も食べたいのかしら?」


「ワン」、「バウ」、「ガウ」、「ワオン」

((((食べたいワン!))))


 アンナはコボルト達にも一つずつ饅頭を渡した。


「実はこれから開拓村に行くので、暫く会えなくなるので、挨拶に来ました」


「あらあら、それはご丁寧に有難うね。アイちゃんの顔が見れて良かったわ」


「え! 開拓村? ゴブリンに襲われたらしいけど大丈夫なのかしら?」


「この子達はこう見えても結構強いのよ。『朝焼けの光』に訓練されていたから実力はなかなかよ、ね! アイちゃん」


「ワフー」(強いワン)


「へぇ、それは頼もしいわね。それに本当に可愛い子達ね。アンナから聞いてた以上だわ。甘えてくるなんて私も何か教えようかしら」


 ジュリアもコボルト達に興味津々だ。


「それは良い考えね。ジュリアは錬金術士だからきっとアイちゃん達の役に立つわよ」


「ワンちゃんが錬金術を覚えられるかしら?」


「アイちゃんは短い期間で採取や簡単な回復薬を作れるようになったのよ。真面目な彼らならきっと出来るようになるわよ」


「そうね。子供も孫も領都に行ったきり帰ってこないから、寂しかったのよ。こんな可愛い子達と一緒なら楽しくやれそうね」

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