第17話 ヘレナ
レンは夕食後、コボルト達を連れて、テイマーズギルドにきた。
テイマーズギルドは入口が広く大きい建物だったが、中に入ると閑散としていて…、と言うか誰もいない。窓口に一人の女の子がいるだけだ。
「あ………」
扉を開けた音を聞いて、女の子が顔を上げたのでレンと目があう。レンの後ろからコボルト達がゾロゾロとギルドの中に入って来た。
「ああ、どうも。今晩は」
「あ! もしかしたら、テイマーの方ですよね。コボルトを連れているし、やっぱりテイマーだ」
(あ〜、やっぱり見る人が見ればコボルトって分かるんだな)
「そうですよ。テイマーです」
「わ〜い。やっとテイマーの人が来てくれた。有難う。どうぞどうぞ、こちらにどうぞ」
女の子は受付のカウンターから出て来て、レンに走り寄りレンの手を握って、カウンターの中にあるソファーに連れて行くと、その後をコボルト達がクンクン周りの匂いを嗅ぎながらついて行く。
「あの〜、此処に従魔が泊まれると聞いて来たんですが、泊まれますか」
レンはソファーに腰掛けてすまなそうに女の子に話し掛けた。アインスがレンの隣りに寝そべり、他のコボルト達はレンの後ろや足元にそれぞれ座る。
「勿論、泊まれますよ〜。テイマーズギルドに所属してくれたら、泊まれま〜す。ちょっと待ってね、お茶を入れて来ます。」
女の子はそう言って席を外し、お盆に湯呑を乗せて来た。
「あ〜、冒険者ギルドにも所属してるのですが、テイマーズギルドにも所属出来るのですか?」
「ぜ〜んぜん、全く、何処にも問題はありませんよ~。はい、どうぞ」
女の子はお茶をレンに出すとレンが座る向かいのソファーに腰掛けた。
「人、いないですね………」
レンが恐る恐る口にした。
「そう、そう、そう、そうなのよ。テイマーって言うスキルは元々多い訳じゃないでしょ。それなのにテイマー専門のギルドを作っても人が集まらないですよね。ああ、ギルドを作ったのは私の祖父なんですけど、魔物の研究をしていて、偶々レッサーワイバーンをテイムすることが出来たので、レッサーと言ってもドラゴンの一種だから、亜種とは言えドラゴンをテイムした功績で、祖父は伯爵に叙爵されたんです。法衣貴族ですね。年金が貰えます。その年金で運営して、テイマーの地位向上と相互扶助の目的でギルドを作ったんですけど──」
「あのー、お名前をお聞きしても良いでしょうか」
会話に飢えていたのか堰を切ったように話し始めた女の子に、レンは話を中断させる為に口を挟んだ。
「あ、名前はまだ教えてなかったわね。ヘレナよ。それよりも聞いて下さいよ。1年ですよ、1年。誰も訪れないギルドの受付を1年間もしているのですよ。祖父はフィールドワークに行って、ギルマスなのに全く戻って来ないし、出会いも何もなくこのまま老いていくばかりの人生に……………」
「はぁ………」
結局、愚痴に変わったヘレナの話しは止められず、思いの丈を聞くはめになったレン。
周りではコボルト達が寝息を立てていた。
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