第10話 ツヴァイ、ドライ、フィア、フンフ

「お願いがあるんですけど………」


 レンは冒険者達に話し掛けた。


「なんだい?」


 リーダーが応える。


「アインスは、アンナさんに採取を教わって、採取が出来る様になったんです。俺は戦闘力皆無なので、コボルト達に街に着くまでの間、冒険者の技術を少しでいいので教えて貰えませんか? 勿論対価はお支払いします」


「ん〜、分かった。だが、対価はいらないよ。うちのレディ達が強引にテイムさせたからね。街に着いた後5匹のコボルトを養うのも大変だろう」


「いやいや、対価は貰って下さい」


「いやいや、良いって」


「何やってんのよ。対価はいらないから、まず名前をつけてよ。この子を名前で呼びたいわ」


 狩人の女がコボルトを抱きながら、レンとリーダーの間に割り込んで来た。


「そ、そうだね。有難う。え〜と、名前はツヴァイ、ドライ、フィア、フンフにするよ」


(ドイツ語で2がツヴァイ、3がドライ、4がフィア、5がフンフだったはずだ)


 狩人が抱っこしているツヴァイはゴールデンレトリーバーのコボルトだ。


 レンの足元でハァハァ言いながら食事をねだるドライはドーベルマンのコボルト。


 魔法使いが抱っこしているフィアは毛色が黒のフラットコーテッドレトリバーのコボルト。


 使用人のカミラが抱っこしているフンフはシベリアンハスキーのコボルトだ。


「んじゃ、私はツヴァイに弓と罠を教えるわ。宜しくねツヴァイ」


「俺はドライに剣と解体を教えてやろう」

とリーダー。


「私は〜、魔法はフィアには無理だから生活魔法かなぁ。余ってるスクロールが幾つかあったはずだから。後は杖術ね」


「え〜。私は冒険者じゃないからなぁ。フンフに旦那様から生活魔法のスクロールを買ってあげるわ。せめて自分でクリーンぐらい出来ないとね」


「ああ、俺だけ何もしない訳にはいくまい。戦う時はフンフに俺が槍と解体を教えてやろう」


 と槍術士も賛同してくれた。


「ワンワンワンワンワンワンワン」

「ガウガウガウガウガウガウガウ」

「ワオンワオンワオンワオンワオン」

「バフバフバフバフバフバフバフ」


((((お腹空いたワン、お腹空いたワン、お腹空いたワン、お腹空いたワン、))))


 4匹のコボルト達は名前などどうでも良いから、何か食べ物をくれとうるさい。


「はいはい。分かったよ」


 レンはコボルト達の頭を撫でると、


「この子達はお腹が空いてるってさ。カミラさん、食事は余ってる」


「う〜ん。余ってるけど、この子達の様子を見てると足りないかもね。何か見繕ってあげるわ。おいで」


 商人の使用人であるカミラがコボルト達を連れて食事をしていた場所に行く。


 コボルト達が食事をしている間、レンは商人にコボルト達の武器を買いたい事を告げた。


「コボルト達の武器として、弓と剣、杖、槍が欲しいんだ」


「コボルト用かぁ。小型の弓と、………杖は普通ので良いか。……槍は短槍で良いか? 数打ちの量産品しかないよ」


「ああ、量産品で良いよ、剣はないの?」


「コボルトに剣は大きいだろ、これはどうだい?」


「へぇ、面白い形をしていますね。大きさは丁度良いかも。これにします。これ五本下さい」


「気に入ってくれたか。これはマチェットと言って、通称山刀とも言われているが、森の中で草などを薙ぎ払う時に使う物なんだ」


 マチェットは持ち手側の刃が細く、先端にいくに従い太くなっていて、ナイフと剣の中間ぐらいの長さだった。


「後は解体用のナイフも五本下さい」


レンはコボルト達の武器を購入してそれぞれアインス、ツヴァイ、ドライ、フィア、フンフに渡した。


(乗り合い馬車でたまたま一緒になった人達が本当に良い人ばかりで良かった)


 と思うレンであった。

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