第11話 朝焼けの光
「いやぁ、コイツら凄いな。素直で真面目で言われた事を一所懸命やるから成長は早い上に、元々の身体能力が高いし、野生の動きと言うか、躊躇なくやる思い切りも良いし、あっという間にゴブリンなんか屁でもなくなったぞ」
興奮してコボルトの成長をレンに話すリーダーの言葉は止まらない。
元々、コボルトは身体が小さく力は強くない。ゴブリンにも一対一では勝てない。
リーダーもここまで強くなるとは思っていなかった様だった。
まあ、死なないように動くのを教えられればいいかな? ぐらいの考えだった。
そもそも、野生のコボルトは武器を持つ事もなく、『噛み付き』だけが唯一の攻撃だから、口から襲ってくる横っ面を叩くか、剣で顔をカウンターで叩き斬るだけで倒せる。
だから、数を集めて攻撃するしかないのだが、数が多いと
飢えているからあまり考えずに、兎に角喰える獲物に向かって行くので、すぐに殺される。
なんでこんな魔物が絶滅しないかと言うと、多産だからだ。沢山生んで沢山死ぬ。
そんな底辺の魔物がコボルトなのだ。
コボルトより弱い魔物はこの辺りでは、スライムか一角兎のアルミラージぐらいだが、スライムは喰えないから襲わないし、アルミラージは一匹二匹では群れを成すコボルト達の腹の足しにならない。
そんな訳で安全に弱者を狩らないため、レベルは上がらない。そこそこの敵を倒しても群れで経験値は分散されて、あまりレベルは上がらない。
ちょっとレベルがあがっても、次の戦いでは生き残る事が難しい。
それでいつも無謀な戦いを挑むのだ。野生のコボルトは狂犬! まさに狂犬と呼ぶに相応しい。
誰も好き好んでそんな飢えて狂った目をした。そして臭くて汚い魔物をテイムする者はいなかった。
しかし、此処にコボルトしかテイム出来ないコボルトテイマーというスキルを持った者が現れたので、事態は一変した。
コボルトにクリーンの魔法を使い綺麗にして匂いを消せば、あら不思議モフモフのワンちゃん型魔物の出来上がりだ。
その上、群れで生活するコボルトは犬の特徴を色濃く持っていて、ボスの言う事は良く聞く。所謂、忠犬。
力はゴブリンより無いが、素早い動きが出来て、嗅覚聴覚が優れている。天性のハンターの素質はある。素質はね。
それを活かせる環境が無かっただけの話。
レンが腹を満たしてやり武器を持たせた事で、コボルト達の才能が開花した。
与えたマチェットもコボルトにハマった。鬼に金棒、コボルトにマチェットだ。素早さを阻害しない丁度良い大きさと重さで、凶悪な武器に早変わり、正に水を得た魚だ。
「こりゃ、Dランクの冒険者パーティは敵わなくなるのもすぐだな」
「本当にツヴァイは可愛いだけじゃなくて、強くなったわ」
ゴールデンレトリーバーのコボルト・ツヴァイを撫でる狩人の女。
「そうそう、フィアなんて可愛い上に賢いし。ね〜!」
フラットコーテッドレトリバーのコボルト・フィアを抱っこする魔法使いの女。
「フンフも槍の腕を上げたぞ」
シベリアンハスキーのコボルト・フンフを撫でながら、槍術士の男も満足げだ。
そんなリーダーが率いる四人組のパーティ『朝焼けの光』はBランク、街ではトップクラスのパーティなのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます