第7話 コボルト3

 辺境に向う馬車の中で、レンは自分の事を皆に伝えた。


「へぇ、レンくんはコボルトテイマーだったのね」


 眠る秋田犬のコボルトを膝の上に乗せて、撫で撫でモフモフしながら老夫婦の婦人が言う。


「あんなに気味悪くて汚くて臭いコボルトが、こんなに可愛いモフモフになるなんて、まだ信じられない」

「モフモフいいなあ………」

「私もモフモフしたい………」


 魔法使いの女と狩人の女、商人の使用人の女は、その様子を羨ましそうに見ている。


「コボルトテイマーなんて、どうしようもないスキルだと思うけど、ちょっと羨ましくなってきたわ」


 狩人の女はコボルトを触りたそうにしているが、コボルトの悪口を言ってたので手を出せないでいた。


「辺境の開拓村の領主殿でしたか」


 商人の男は商機を感じ取ったのか、ニコニコと笑ってレンに話し掛けて来た。


「いやいや、村ですから良くて村長ですよ。村長だってやれるかどうかも分かりません」


「ははは、侯爵様の後ろ盾があれば誰も逆らわんでしょう」


「そうですかねえ?」


「そうです。そうです。ところでレン様。今後もコボルトと行動するなら、『クリーン』の魔法は必須じゃないですか?」


「確かに………」


「此処に誰でも『クリーン』の生活魔法が使えるようになるスクロールがあります。お安くしておきますよ」


 スクロールはダンジョンで入手出来る魔法を覚える事が出来る巻物だ。一回しか使えない。


 生活魔法のスクロールはダンジョンの割と浅い階でも入手する事が出来るので、通常の魔法よりも値段は安価である。


「そうですね。買います。お幾らですか?」


 商人はレンがお金を持っていると感じ取り、ここぞとばかりに色々勧めてきた。


 レンは取り敢えず、クリーンのスクロールと中型のマジックバッグを購入した。


「私はね、薬師をしていたの。そして昔、犬を飼っていたわ。とても利口な犬だったのよ。薬草の匂いを覚えて薬草採取に大活躍だったんだから」


 商人とレンの話が一段落すると、婦人がレンに話し掛けてきた。


「そうなんですか」


「そうなのよ。コボルトもきっと同じ事が出来るわ。コボルトテイマーもけして悪いスキルではないと思うのよ」


「そうだと良いのですが」


「大丈夫よ。だってこんなに可愛いんだから」


 婦人はコボルトを優しげに見詰めて撫で撫でしている。


「ねえ、またコボルトがきたらテイムしなさいよ」

 婦人がコボルトを撫でるのを見て、狩人の女がレンに言う。


「そうね、後二匹は絶対よ」

 魔法使いの女もモフモフしたいようだ。


「え〜、三匹テイムしましょうよ」

 商人の使用人の女もモフモフしたいようだ。


「街までのコボルトの食料は私達が保証してあげるからさ」

 魔法使いの女が言う。


「決定ね!」

 狩人の女が勝手に決定していた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る