第14話 新しい武器

 十日後、ガルムさんを尋ねる。


「おう、できとるぞ。待っとれ」


 再度奥に入ったガルムさんが剣と杖を持ってきた。これが!


「まずコウの剣だが、お前らの黒髪を見て前にいた勇者を思い出してな。三日月刀と言うんじゃがどうじゃ? ショートソードよりは少し長くなったが、刀身が細いので軽いんじゃ。ただこれは製法が特殊でな。勇者の武器を作ったときは貴重な素材をふんだんに使ったが今回は費用がないから鉄で作ってみた。だがちょっと頼りないんでワシが持ってた風の魔鉱石を混ぜ込んでみた。火属性のお前でも魔力を込めれば切れ味がいく分か増すぞ。お前に丁度いい重さがこれくらいだ」


 凄い! これって刀だ! 

それに刃の部分がちょっと緑っぽいのが異世界の武器って感じがしてマジカッコイイ!!

「すごい。ここで刀が見れるなんて。ていうか俺本物の刀見たことないや」


「なに。そうなのか? 結構苦労したんじゃぞ。これ作るの」


「いえいえ! めっちゃ嬉しいです! 持ってみていいですか?」

 俺は刀を両手で持って構えてみる。

「ほんとだ。重すぎず、ちょうど重さを感じられるぐらいだ。振り回しやすいかも」

 これ、ホントの刀より軽いのかもしれない。


「そうか。後で裏の空き地で試すといい。試し切り用に巻藁を立ててある。次に嬢ちゃんの杖がこれじゃ」

 黒っぽいシンプルな杖だ。いや、これは槍だ。一・五mぐらいの長さで先が小さい刀みたいになってる。薙刀っぽい。


「これは槍の穂先を三日月刀にしてみた。ボウズのと同じ刀の作り方なので少し反りがあるがこれぐらいなら槍のように突く事もできるし、離れた敵を切ることもできる。嬢ちゃんは杖無しで魔法を使ってたから武器としての機能を優先したんじゃ」


「ええ、軽くて使いやすいわ。えいっ」

 俺の目の前で薙刀を振るう。ちょっと! 怖いって!


「よし、じゃあ裏で試してみろ」



 鍛冶屋の裏は空き地になってた。そこに木の棒に藁が巻いてある。あれを切るのか。


 俺は刀を小さいころに習ってた剣道のように中段に構えてみた。小さい頃はじいちゃんに何度も練習させられたっけ。でもお蔭で型を覚えてた。あの頃は辛くて辛くてじいちゃんを恨んだが、今この時となっては感謝の気持ちでいっぱいだ。ごめんよ、じいちゃん。


 巻き藁の正面に立ち、俺はまっすぐに刀を振り下ろした。巻き藁は普通斜めから斬るものだろうけど、正面切りが基本中の基本だと、じいちゃんの言葉を頭でも体でも思い出したからだ。


 スッと刀を振り上げて、そのまままっすぐに振り下ろす。当たる直前に脇を締めてその瞬間だけに力を入れて、切る。


スパッ、ドサドサ


 音もなく巻き藁を巻いた木ごと、縦に真っ二つに割れて倒れた。


「「えっ」」

 ガルムさんとハルノさんの驚く声が聞こえた。


「すごい。これめちゃめちゃ切れますよ!」


「……いや、そこまででは、いやそうなのか? コウ、お前今までなんかやっとったのか?」


「昔剣術を習ってました。小さいころなんですが。でもそのころは師であるじいちゃんにみっちり基本を教え込まれたんです。今のはその振りです」


「そうか。やはりお前は刀にして正解だったな」


「はい! ありがとうございます。これでやってけそうな気がします」


 次にハルノさんだ。両手を少し上下に離して薙刀を持ち、魔力を流し込んでいた。

 そういえば風の魔石を混ぜたって言ってたっけ。

左から横振りに木の先に付いた巻藁を切った。


スパッ

「えっ、すごっ、かんたんに切れた」


「嬢ちゃんは魔力量がすごいじゃろ? より切れ味は上がるぞ。あと三日月刀の風の魔鉱石を魔法杖として媒体にすればウォーターバレットもより遠くまで飛ばせる」


 そうなんだ。羨ましいな。まあ俺のもすごい切れ味だ。これはすごい武器を作ってくれたな。

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