第13話 鍛冶屋
ラヴェンナの町に来て二ヶ月が過ぎた。
俺達は冒険者として主に魔物の討伐依頼を受け、強くなっていった。今はまだEランクだ。倒した魔物もEランクでゴブリンのほか、一番最初にあった狼みたいな顔なのに二足歩行するコボルト、森の奥に生息するでかいアリのブルアント、クモだけどやたらでかいルブロン、人の高さぐらいの背丈のやたらでかいカマキリみたいなマンティスなど。
虫系はハルノさんが鳥肌を立たせて嫌がったけど、俺達が戦えるランクを考えるとやはり虫系だった。
虫は火に弱いが、火属性のないハルノさんにとってはほんとに天敵かもしれない。まあ、遠距離から水弾でザクザク倒してたけど。
そしていよいよDランクに上がるチャンスが巡ってきた。E依頼はすでに二十個の依頼を達成したのであとはDランクの魔物を五体討伐すれば上がれる。
「まあ、お前らならDランクの魔物でも倒せるさ。なんてったってダブルメイジがいるからな」
デスヨネー。
ハルノさんはメキメキと強くなり、五種類もの魔法を使えるまでになった。
今や目に見えるEランクまでの魔物なら遠くからほぼ倒せる様になっていた。
俺はというと数が多くて打ち漏らして近寄ってきた魔物を倒すぐらい。あまり強くなってない気がする。だけど日頃の鍛錬は欠かさずにこなしている。
その成果もあって体つきはだいぶ男らしくなった、と思う。
仮宿舎も卒業して、一日銀貨一枚の宿を長く借りて住んでる。当然個室だ。これはお互いに色々とあるからね。
なので次の依頼はD依頼になるが、その前にやっと溜まったお金で武器を作ることになった。
そう、この世界に来て初めて出会った鍛冶屋のガルムさんに作ってもらおうと思う。あれ以来顔も出してなかったからな。覚えててくれてるかな?
ガルムさんの鍛冶屋は町の東側だ。ギルドと東門のちょうど中間ぐらいの場所だ。中を覗いてみると部屋の真ん中に大きな四角い石の台があるだけだ。武器とか並んでると思ったらなんにもない。いや、奥にカウンターがある。
「ごめんください。ここはガルムさんのお店ですかー?」
ちょっと大きめの声で奥に向かって尋ねると誰か出てきた。ガルムさんだ。そうそう! こんなふうにずんぐりむっくりした体に髭が生えた、あれ?この姿はもしかしてドワーフっていうんじゃ?
「なんじゃ客か? おお、お前らはたしか森であった、」
「はい。その節は助けていただきどうもありがとうございました。お陰様で冒険者になってなんとか生きてます」
「そうかそうかそれはよかった。そういえば随分体つきが良くなったな。あのときはヒョロヒョロだったから冒険者なんか無理だろうとは思っていたが、頑張ったんだな。お前たち」
「は、はい。なんとかやってます。それで俺達Eランクなんですけど、いよいよDランクの魔物と戦おうと思ってて、なのでガルムさんに武器を作ってもらいたくて……」
「なに? お前らまだ二ヶ月ぐらいだろ? もうDまで上がるのか?」
「え、ええ、まあ。まだこれからなんですけど」
ハルノさんのおかげですけどね。
「信じられんがそうか。よくやったな。わかった。ワシがお前達にピッタリの武器を作ってやろう。で? 得物はなんじゃ?」
「それがそこから相談なんですが、俺はナイフを使ってます。これです。俺達二人パーティなので俺が前衛で、魔法を使うハルノさんが後衛です。というかハルノさんの遠距離攻撃で打ち漏らした魔物を俺が倒す感じです。ハルノさんは自衛で槍を持ってますがこれは棒みたいな安物です」
「ほう。魔法が使えるのか。なるほど遠距離攻撃が主体のパーティだな」
ガルムさんは使ってた武器と体格などを見て言った。
「コウ。お前はショートソードあたりにしよう。ナイフよりはリーチがあるし、素早そうな体つきだからロングでは活かせられん」
おお! いよいよ剣を使うのか!
「はい! それでお願いします。実は剣術も少し教わってるので」
「よし。じゃあ嬢ちゃんだ。槍を使うといっても体はヒョロヒョロだからな。魔法補助の杖に仕込み剣でどうだ?」
「いいですね。それでお願いします。長さはこれと同じ六フィート(一・八m)ぐらいのものでお願いします」
「わかった。重さと取り回しを考えて調整しよう。で、予算はいくらだ? なるべく安くはしてやるが素材で随分差があるからな」
「武器の相場がわからないんですが、二人で銀貨二十枚ぐらいで作れたりしますか?」
「めちゃめちゃ低いな。作れんこともないが銅素材だな。五十枚あれば鉄素材のが作れるぞ」
二人で悩んだ。ガルムさんが武器はそうそう替えないから長く使うなら鉄にしろというので銀貨五十枚で鉄の武器にしてもらった。
「よし、じゃあ十日待っとれ。バッチリのを作ってやる」
「はい。それではよろしくお願いします」
十日かかるか。じゃあその間は普通のE依頼を受けよう。数が多い虫でいいか。
しかしハルノさんの反対もあり、武器ができる間は薬草とゴブリン退治で過ごした。
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