第8話 属性魔法
朝。二人でギルド内のホールに行き、皿洗いと薬草採取の依頼を受けた。結果としてなんとかなった。薬草採取は二回目なので要領も良くなり森を往復しても昨日と同じ夕方前にはギルドに戻れた。
報酬は銅貨三十枚だ。宿はまだまだ無理だな。
晩ごはんを食べに酒場に行ったら昨日の人たちもいてまた少し分けてもらった。本当にありがたい。こんなに人の好意がありがたいものだなんて今までわからなかったよ。
今日の残りは銅貨二十枚。明日も頑張ろう。
◇
町に来て五日目、Fランク依頼を五つ以上こなしたので、あとは討伐依頼を一つ受けるとEランク昇格だ。
討伐依頼はEランクからあり、依頼は一つ上のランクのものを受けることができる。さて、どんな依頼があるのか。
今はアメリアさんから話を聞いている。
「今日のEランクの討伐依頼はゴブリンの討伐があるわ」
アメリアさんともすっかり仲良くなり、口調もくだけた感じになった。
依頼の話に戻ろう。
「ゴブリンて小型の人型の魔物ですか? 緑っぽい感じの」
「そうよ。子供くらいの大きさで一体だとそんなに強くないけど、大体複数でいるから遭遇したら数がどれくらいいるか気をつける必要があるわ。今日の依頼だと三体の目撃情報があるからあなた達にはまだちょっと早いかな」
ゴブリンはまだ見たことないし、生き物を殺すってなんか怖い。喧嘩もしたことのない俺にとって、何かと殺し合うなんて。考えただけでやりたくないと、臆病な気持ちになった。
でもいつかはやらないと。ちなみに報酬はいくらなんだろう?
「報酬は銀貨三枚ね。一体銀貨一枚が目安ね」
薬草採取よりいきなり高くなった。それだけ危険なのか?
ハルノさんが目をギラギラさせてる。まさか。
「コウ、これやってみよう!」
やっぱり!
「いや、やめましょう。まだ俺たち魔物とも戦ったことないんですよ。危険すぎます」
あっ、でも俺のこと名前で読んでくれた! なんか嬉しい! 仲良くなれてきたな。
「それじゃあいつまでたっても戦ったことないままになるじゃない! 小さい奴らなんでしょ? あんたが二体倒してあたしが一体やればいいんでしょ。きっと楽勝よ!」
「わかってます? 生き物を殺すんですよ? ハルノさんにできますか?」
「もう限界なのよ!! あんたと一緒の部屋なんて! 夜は一人で過ごしたいの! 誰かと一緒なんて気になって眠れないじゃない!」
全然仲良くなれてなかった。それに毎晩いびきかいて寝てますよね?
「ふとんで寝かせてー!」
騒ぎ出した。ほんとに限界みたいだ。
「でも危険ですよ。もしなんかあったらどうするんですか?」
ハルノさんはアメリアさんに尋ねる。
「ゴブリンとあたし達どっちが強いですか? 無理ですか? いけますか?」
「そうねえ、まず武器がいるわ。まあ武器は最初だけ貸せるわ。ニ対一なら確実に勝てると思うけど、一対一なら一瞬の差で勝敗が決まると思うわ。ゴブリンは小さいけど体力強化の魔力を使うから大人一人と戦うのと同じと考えたほうがいいわ。だから二体までの依頼ならなんとかなるかもしれないわね。早く見つけてまだ遠くにいるうちに何体いるか見極めて、数が少なければ先に魔法で攻撃すれば勝てるかもしれないわね。そんなところかしら?」
魔法か。そういえばハルノさんは二属性持ちだったな。俺は火属性だしなんか攻撃できそうな気がするな。何ができるんだろう?
「今まで魔法を使ったことない俺たちでもなにか攻撃できますか?」
「コウくんの場合はファイアボールとかね。火の玉を飛ばしてぶつけて燃やすの。でも練習は必要ね。いきなりはまず無理よ」
ファイアボールか、遠距離から攻撃できそうだな。
「じゃあ私は? なにか水の玉を飛ばすとかですか?」
「ハルノちゃんもウォーターバレットなんかで遠距離から攻撃ができるわ。光はよくわからないわね。使える人がこの街にいないから」
「どうすれば魔法を出せますか? やり方を教えて!」
「じゃあ、午前中は攻撃魔法を練習してすぐ使えそうなら午後から依頼を受けてみる?」
「はい! そうします! 教えてください!」
そうして俺たちはギルド裏の訓練場で魔法を試すことになった。でもアメリアさんはすぐ使えそうならって言ったけど、そんなにすぐ使えるものなのか?
訓練場についた。
「じゃあまずはウォーターバレットからね。ハルノちゃん、水を出してみてもらえる?」
えっ。
「水を出す? どうするんですか?」
「えっ」
「えっ」
あれ? なんかおかしいぞ?
「魔法で水を出すのよ。普段使ったりするでしょ? かんたんな生活魔法よ?」
そういうことか。ここでは魔法は身近なんだ。だからちょっとした応用で攻撃魔法が使えると思ったんだな。
「あの、実は俺達は今まで魔法を使ったことがないんです。だから魔法がどんなものなのかから教えていただけたら……」
「えっうそ。魔法を使ったことがない?」
「はい」
「信じられない……、今までどうやって生きてきたの?」
やっぱりそうか。ここでは魔法は日常的に使われているんだ。生活魔法か。
「俺の火属性だとやっぱり火しか出せないんですか? 水とか出せないですか?」
「魔石を使えば他の属性でも使えるわ。火の魔石ならそれに魔力を注ぐと火が出るのよ。使ったことない?」
「ありません」
「そうなんだ。ちょっとまっててね」
アメリアさんが訓練場から離れ、しばらくして戻ってきた。なんかチャッカ○ンみたいなの持ってる
「これが火をつける道具よ。先に火の魔石が付いてるの。これを持って魔力を注いでみて」
ハルノさんが魔石を渡され試してみる。
「むむむむむー」
なんか力んでるけどあってるのかな?
「ふふ。そんなに力まなくても魔力は出るわ。こんな感じよ」
アメリアさんがチャッ○マンを持つと、手がなにか白っぽく光りだしてきた。と思ったら石にボッと火がついた!
「どう? かんたんでしょ? やってみて」
ハルノさんがもう一度やってみる。
「まずは目を閉じて体の中の魔力を感じてみて。そうね、お腹、体の中心あたりになにか感じない?」
「中心? あれ? なんかある。なんだろこれ? 自分の体と違う何かがあるみたい」
「それが魔力よ。魔力は体を使って外から吸収するの。だから体と違うものなのよ。多分今感じてるのが魔力よ。それを手のひらに流すように持ってきて石に注ぐようにイメージして」
「イメージ……」
すると、なんということでしょう! 手のひらの石の上からポッと小さい火がついた。
「できた!」
「すごいわ! 初めてでこんなにすぐに出せるなんてすごい!」
「エヘヘー」
「あとは魔道具無しで出してみる練習ね。魔道具は詠唱を破棄するために使うのよ。だから道具無しで魔法を使う場合は詠唱がいるわ」
「詠唱ってなんですか?」
「魔力を使うには精霊に手伝ってもらうの。精霊は古代語しか理解できないから、古代語を使って詠唱を行えば答えてくれるのよ。じゃあ水を出してみるね」
「アクア スフェーラ」
アメリアさんが何か呪文のような声をだすと掲げた掌から水の玉が出てきた。すごい。
「うわ、すごい。これが魔法なのね」
「そうよ。魔法を使うには詠唱を覚えないとね」
「わかった。アクア スフェーラ、アクア スフェーラ、」
何度も何度も呪文を唱えるハルノさん。
「そうよ。そして掌に魔力を集めるの」
何度も試すうちにコツがつかめたようで、すぐに自身の持つ属性である水を作り出せるようになった。属性を持ってるから魔石がいらない。俺は火属性だけど自分では火を出せなかった。魔石でも何度か試したけど火が着くことはなかった。初めてなら誰だってそうだ。ハルノちゃんがすごすぎだと、アメリアさんは励ましてくれた。そうだ。もっと練習しよう。
結局この日は一日中魔法の練習に費やした。ハルノさんはウォーターバレットができるようになった。二十メートルくらい飛んだ。おそらく有効な攻撃魔法になるだろう。
あとの話になるが、俺はチャッカマ○に小さな火をつけるのに、三日かかった。
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