第7話 初めての依頼
朝。ふたりとも同じ頃に目覚めたので二人して早速依頼を探すことにした。腹が減ってるが一文無しなのでまずはお金を稼いでからだ。いよいよのときはリュックの中に梨モドキがまだちょっと残ってる。
ホールに行ってボードを見に行くと、ちょうど依頼書が次々と貼られていくところだった。
そういえば字が読めない、まずい!
急いで昨日のアメリアさんのところに行き、相談した。
「おはようございます。昨日はありがとうございました。あの、字が読めないので依頼書が見れません。なんとかなりませんか?」
「あら、ごめんなさい気づかなかったわ。ちょっと待っててね」
そう言ってアメリアさんはボードに行き、いくつか依頼書を剥がして持ってきてくれた。
「このあたりでいかがでしょうか? 食堂の午後の皿洗い、貴族様の家のお庭掃除、あとは薬草採取がありました」
貴族様はまだ対応がわからないから皿洗いか薬草だな。
「薬草採取はどんな仕事ですか?」
「町の外の西側にある森の入口あたりには薬草が生えてるんです。その薬草を二十本取ってくる依頼ですね。場所とどんな薬草があるかはご説明します」
なんか楽しそう? ハルノさんに聞くとハルノさんも薬草の方が報酬もいいからこっち! と言ったので薬草依頼を受けることにした。
「それではお気をつけて。行ってらっしゃいませ」
アメリアさんに見送られてギルドを出て西門から町を出た。昨日入ったのと反対の門から出ると数キロほど先の方に森が見える。俺達はそこを目指して歩いた。
森に着いた俺達は森の境目に沿って歩き薬草を探した。歩くこと三十分、やっと一つ見つけた。お姉さんの話の通り、薬草はほとんど一本ずつしか生えてなかった。これはなかなか大変だ。今日も一日歩きづめだな。
◇
夕方になってやっと二十本の薬草が集まったので町のギルドに戻った。
「おかえりなさい。どうでしたか?」
薬草を入れた袋を渡して中を確認してもらう。
「はい。たしかに二十本揃ってます。お疲れさまでした」
そう言ってアメリアさんから報酬を受け取った。これがお金か。
報酬は銅貨二十枚。価値はどれくらいだ?
「あの、これで宿に泊まれますか? あと、晩御飯とかも食べられますかね?」
「この町の宿は一泊大体銀貨一枚くらいでしょうか。 安いところでは銅貨二十枚くらいで泊まれると思いますがそれなら仮宿舎でもう一泊されたほうがいいかもしれません」
安い宿屋は部屋も隙間だらけで治安も悪いらしい。それならまだギルド内のほうが安心とのこと。
「そうですか。では今晩も泊めてください。あと、お風呂とかってありますか?」
風呂などはまずどこの宿もないらしい。体は布と水で拭くみたい。ワイルドだ。
まずは腹ペコだからなにか食べよう。ハルノさんと二人でギルド内の酒場に行き、水と一番安いピザみたいなものを頼んだ。二人で銅貨十枚だ。明日の朝も食べたらもう一文無しだ。まずい。Eランクに上がるのに五つの依頼と一つの討伐依頼をこなさないとだからあと四日はこの生活が続く。もたないかもしれない。明日の依頼をどうするか話さないと。
「ハルノさん、明日なんですが皿洗いも追加しましょう。でもそうすると昼に一度町に戻って午後にまた森に行くことになりますがどうでしょうか?」
「それでいいわ。まだ一人になるのは怖いし、明日は一緒に二つの依頼を受けましょう」
明日のことを話すうちに食べ物が来た。ほぼピザだ。美味しそう。
「「いただきます」」
二人で手を合わせていただきますをして食べようとすると、周りの席の人たちがこっちを見てた。なんだ?
「おい。今のなんだ? 神への祈りか?」
そういえば日本以外はそんな風習なかったな。こっちもか。
「まあ、そんなもんです。俺のいた国では神様がたくさんいて食べ物の神様もいるんです。ありがたくいただきますという意味で神様にも、この食べ物を作ってくれた人たちにも感謝して食べるんです。そんな風習ですね」
俺はなんとかわかりやすく説明した。あってるかな?
「ほー。そんなのあるんだな。精霊じゃなくて神を信奉するとは結構な田舎だな。お前らどこの国から来たんだ?」
ヤバ、深入りされると面倒だな。でも、ここでは神様を崇めたりはしないのかな。
「ずっと東の方にある国から来ました。多分この辺の人たちはご存じないかと。町はトウキョウっていいます」
「ほー、そうか。遠くから来たんだな。でもそれだけで足りるのか? お前らまだ成人なりたてとかだろ?」
そういえば異世界の成人は早いかもしれない。十五とかかな。
「ええ、まあ」
「俺の一つやるよ。食べな」
えっ、いいのかな。なにか裏ないかな? 後で金払えとか。
「心配するな。金とか取らねえよ。今日はな、でかい獲物をしとめたからなかなかの報酬が出たんだ。まあいいから食え」
「あ、ありがとうございます。そういうことなら、いただきます」
「ははは。その挨拶、言われるといいもんだな」
俺たちのとはまた違った感じのピザみたいなものをもらったのでハルノさんと分けて食べた。味がちょっと薄いけど腹ペコだから美味しい!
「「おいしい!」」
ハルノさんとハモった。
「そうかそうか! じゃーこれもやるよ!」
そのまた隣のおじさんは肉の塊みたいなのもくれた。何だこれ? お皿で分けてハルノさんと食べた。
うまっ!
「「うまっ!」」
またハモった。てかまた声出ちゃった。
「そうかそうか。しっかり食えよ!」
そうやって隣の人たちからちょっとずつおかずを分けてもらい、お腹いっぱいになった。腹一杯は久しぶりだ。
ハルノさんはパンパンに膨らんだお腹をさすってる。あなたアイドルですよね?
「あの、皆さんありがとうございます。このご恩は絶対忘れません。今は何もできないけどいつかお返しができたらと思います」
俺は礼を言う。ハルノさんも隣でべコリとお辞儀した。かわゆい。
「これぐらいで大げさだな。まあ、これから頑張れよ! お前頼りなさそうだからな! そんなんで彼女守れるのか?」
かかかのじょ!
「別に付き合ってないわ! ただの知り合いよ!」
ハルノさん、そんな強く否定しなくても……。
おじさんは俺を見てバツが悪そうな表情をした。なんか勘違いしてるな。俺の片思いとか。
「そ、そうか。まあ、仲良く頑張れな。俺達はこの町で冒険者やってんだ。パーティー名は「ブラックストライカー」だ! 討伐専門にやってるぜ!」
ヤバ! カッコイイ! パーティ名超イカス!
俺達どんな名前にしよう!? 考えとこ!
もう一度お礼を言って仮宿舎に入った。今日も二人だけだ。
でもいい人たちだったな。お陰で明日も頑張れそうだ!
「さっきの、本気にするんじゃないわよ。付き合うとか、あり得ないからね」
うっ、釘刺された。そこまで言わなくてもいいのに。
「は、はい。それはもう」
一気に明日のやる気が霧散したよ。
でも、それにしても俺達は今後も二人でやっていかないと。そのためには仲間としてお互いを理解してないといけないと思うんだ。
「あの、ハルノさんはどこの学校に通ってるんですか?」
まあ、聞くなら普通に普段のことからだな。
「何よ。彼氏面するつもり?」
「いやいや、そうじゃなくて。これからも二人でやっていかないといけないですし、目的はもとの世界に帰ることですし。そのためにはお互いのことを知っておいたほうがいいかなと思いまして。だめですか?」
俺は素直に気持ちを伝えた。
「ま、まあ。別にいいけど。南城学園よ。わかる?」
おおー! 芸能科があるあの有名な。
「知ってます。芸能関係の人がたくさん通ってらっしゃいますよね。すごいなあ」
「そ、そうね! すごいんだから! 入試は面接があってオーディションみたいだったわ!」
またドヤりだしたぞ。まあ、ここは気分よくしてもらって明日も頑張ってもらおう。
「どんな方がいますか?」
「そうね。
ハルノさんの自慢話は一時間続いて、話しつかれたのかその後すぐ寝た。俺も寝よう。明日は頑張らないと。
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