第4話 探索
朝になった。三時間ぐらいで日が昇った。頑丈な感じの腕時計をつけてるのでどれだけ時間が経ったのかはわかった。ただ、何時なのかはあてにならなかった。時計は夜中の二時を指してたからだ。
昨日は夜八時とか九時ぐらいにこんなことになったから大体寝てた時間と時計の経過時間はあってるはずだ。なので少なくともここが地球なら日本の経度ではない国か、やはり違う星とかに瞬間移動したかになる。
「うーん。はっ、もう朝!」
ハルノちゃんが起きた。
「おはようございます。ハルノちゃん」
俺が挨拶をするがハルノちゃんは何か睨んできた。
「き、気安く名前で呼ばないでよね」
なんかツンツンしてる。俺のこと警戒してるな。
「あの、ではなんて呼べばいいですか?」
「……あなた年はおいくつ?」
「俺は十六歳です」
「年下じゃない。せめてハルノさんとかハルノ先輩とか呼びなさい」
お姉さんぶってきた。
「わかりました。ハルノさんは何歳なんですか?」
「女性に年を聞くもんじゃないわ。まあ、まだ若いから答えるけど。十八になったわ。高校をもうすぐ卒業よ」
「高校生だったんですね。俺はもうすぐ二年です。あ、そういえば誕生日おめでとうございます」
昨日のライブでハルノさんが二月十五日生まれでみんなからお祝いされてるのを思い出した。
「あ、ありがとう。でもここでは本当に二月十五日なのかわからないけどね」
ちょっと照れてる。かわいい。
するとハルノさんから、グゥー、とお腹が鳴る音がした。
「あ! こ、これはその……。聞こえちゃった?」
「あ、はい。でも俺も腹ペコです」
「そうね。じゃあ何か食べるものでも探しましょう。バナナとか成ってないかな」
「そうですね。じゃあ森に行ってみましょう」
俺達は森に入ることにした。バナナはなくとも木苺とかなにか果物があるかもしれない。
森に入って数十分。見つかったのは木の実だけだった。木の実というより柔らかいので果物にも見えなくもない。黄色くて松ぼっくりぐらいの大きさで形はどんぐりだ。見たことない実に二人は躊躇した。するとハルノさんが、
「あなた食べてみなさいよ」
と俺に毒味を命じてきた。まあ、やっぱりここは男の俺が先に食べてみるべきか。俺は恐る恐る実をかじってみた。
意外と柔らかい。シャリッと音がして、中は硬めの梨のような味がした。甘い。
「これ、美味しいですよ! 甘くて梨のような味がします」
それを聞いたハルノさんは、
「うそ、まじで!?」
と言ってかぶりついた。
この人本当にアイドル?なんか普通の女子高生の先輩みたいな感じだ。ライブのときの丁寧な口調と全然違う。ていうか俺、結構ぞんざいな扱いされてるな。昨日も「バカなの?」とか言われたな。
「おいひい! はまい!」
きっと素はこんな感じなんだな。この人多分キャラ作ってたんだ。ステージではおしとやかな感じだったのに、木の実にがっついてる今はとても同じアイドルには見えない。
どうやら俺の理想の好みとはちょっと違ってたみたい。
でも、なぜだか親近感が湧いてきた。
二人で森を歩きながら梨の実もどきを食べながら集めてまわり、リュックに入るだけ入れた。
これからどうしようかと話し合った結果、まずは人がいるところを探そうということになった。問題はどっちの方向に行くかだが、草原はだだっ広くて民家みたいなものが全く見あたらなかったので森の奥に行ってみることにした。梨の実モドキも成ってるしね。
獣道かもしれないが歩きやすい地面が見える道っぽいところを歩いて二時間。川を見つけた。向こう岸まで二十メートルくらいかな。
そして川沿いを下ることにした。民家とか、釣りしてる人とかいるかもしれない。
川下に歩いていくとだんだんと河原が広くなり歩きやすくなってきた。
喉が乾いても川の水は飲まなかった。民家があればなにか飲み物をもらえるかもしれない。
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