桜太郎

 男虎おのとら桜太郎おうたろうは、駅で配っていたケーキ店のチラシをもらった。桜太郎おうたろうは、スイーツ好きでケーキなどの甘いものに目がない。

 桜太郎おうたろうは、独り身で恋人はいない。両親とは離れて暮らしているため、今年も1人寂しいクリスマスをクリスマスケーキを食べながら食べる事になる。


「鬼塚さん!配り終わりました!」

 伊万里は、鬼塚の所に走って来た。

「お疲れ!皇さん!僕も本郷君もたった今配り終わったよ!」

 鬼塚は、ケーキ店に戻る準備をした。

「さ、そろそろ戻ろう!」

「はい」

 鬼塚達が、撤収しようとすると

「あの、ペン持ってますか?」

 1人の男が尋ねた。

「僕は持ってませんが、皇さんか本郷君、彼にペンを貸してあげて!」

 鬼塚がそう声をかけると

「私持ってますよ」

 そう言って伊万里は、男にペンを貸した。

 男は、伊万里を見つめたあと、ペンをじっと見た。ペンは、アニメキャラクターの絵柄と飾りが付いたものだった。

 そして、ささっと用紙を記入し、伊万里にペアを渡した。

「ありがとう」

 男は伊万里にお礼を言って去った。

「彼、皇さんの事気になっているのかなー」

「鬼塚さん、まさか⁉︎そんな事…」

「だって、皇さんの事見つめてたし、しかもよく見たらイケメンだったよ!」

「鬼塚さん、たまたまですよ!たまたま!」

「そうかな〜。本郷君はどう思う?」

 鬼塚にそう聞かれた本郷は

「今の時点ではわからない」

 とボソッと言った。

「ほら、本郷さんだってそう仰ってるじゃないですか!」

「そうかな〜」


 桜太郎おうたろうは、無意識にペンを貸したくれた女性を見つめてしまった自分に違和感を感じた。普段はあまり女性に対してしない事だからだったのだ。そして、女性が持ってたペン、よく見たら今大人気のアニメキャラクターだった。女性はというと、若干幼さが残っているため、パッと見たら大学生に見えるぐらいだった。

 桜太郎おうたろうは、仕事が終わり、自宅に帰るとカレンダーと手帳にケーキを受け取る日を書いた。

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