牛鬼の学校訪問

 鬼塚と八巻が学内に入ると2人の男性教師が声をかけた。1人は30代ぐらいの髭を生やした男性でもう1人は50代ぐらいの眼鏡をかけた男性だ。

「あのーもしかして…牛鬼の…」

 そう言ったのは眼鏡をかけた教師だった。

「はい。昨日お電話した何でも屋の鬼塚と申します」

 鬼塚は、2人の教師に名刺を渡した。

「お忙しい中ありがとうございます。本日は、貴校の生徒で少しお話したい事がございまして…」


 鬼塚と八巻は2人の教師と共に面談室へ入った。

 髭を生やした方は雪之丞の担任教師の出川という教師で、眼鏡をかけた方はいちじくの担任教師の石松というだ。

「今回は、出川先生のクラスの皇雪之丞君からどうしてもいちじくトーマス君からクラスの文化祭の出し物で使うホットケーキミックスを返してほしいという依頼を受けまして…」

 鬼塚は真面目に話した。

「ちょっといいですか?なんで皇君が何でも屋さんに依頼したんでしょうか?」

 出川は考えながら言った。

「うちの部下に皇君のお姉さんがいたからでしょう…」

「そういえば、10歳離れたお姉さんがいるって話してましたね。なるほど…。家族がいる所だと安心しますもんね」

「はい。それで皇君から伺ったのは、いちじく君が球技大会の…」

「バスケですね」

「そうです。球技大会で負けて皇君のクラスを恨んでクラスの模擬店で出す…」

「ベビーカステラですね」

「そうです。クラスの文化祭の模擬店で出すベビーカステラの材料のホットケーキミックスを盗んだと」

 鬼塚は緊張しながら話した。それを出川がフォローした。

「鬼塚さん、大丈夫かよ」

  八巻は心配した。

「仕方ありませんよ。妖怪が人間社会で学校行ったり仕事に行ったりしたのが、最近ですからねー」

 石松はフォローした。

 石松が言った通り、妖怪が人間社会で生活するようになったのは、10年ぐらい前からだ。

「とりあえず、いちじく君、今日は学校に来てますか?」

 鬼塚は聞いた。

「はい。来てますよ」

 石松は頷いた。


 石松に案内され、鬼塚と八巻はいちじくがいるB組の教室に行った。

 石松はすぐにいちじくを見つけ声をかけた。

いちじく、何でも屋さんが話をしたいんだって」

 いちじくは鬼塚達を見て警戒し、教室から逃げた。

「待ちなさい!いちじく!」

 石松はいちじくの後を追いかけた。

 その様子を鬼塚と八巻は唖然として見るのだった。

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