Ⅳ 5
日が暮れかけている。タクヤは川沿いのテラスで百合を待っていた。事務所からはそんなに離れていない。相変わらず無邪気そうな格好の百合がタクヤのいるテーブルに近づいてくる。見た目は少し洒落た高校生にしか見えない。
「場所はわかりましたか」
「この辺にもこんなところあるんだ」
見た目は本当にケバい感じがしないんだよね。良家のお嬢さんて感じでもないし。百合はタクヤの視線を感じながらも全く気にせずに席に着いた。
「それで見つかったんですか」
「見つかりましたよ」
百合は表情を変えず黙ってタクヤの目を見る。
「どこにいたんですか」
「まあ、そう焦らずに」
「それよりも、最初の依頼人が見つかったんですよ」
「ミチノシタ・フミマロ。ご存知ですよね」
百合のタクヤを見る表情が変わり、明らかに不機嫌そうな顔をする。
「ごめんなさいね。事務所の受けた依頼としてはこちらの方が先なので」
そう言いながらタクヤはずっと百合のほうを見ている。
「なんなんですか」
「もうその話は…」
「フミマロさんとはもう長い付き合いなんでしょう」
タクヤは百合を遮るように落ち着いた口調で話す。そして百合の目を見て微笑んだ。
「それよりもあの男は」
「大丈夫、逃げたりしませんよ、ご自宅に戻っていましたから」
「でも、それじゃ」
「何か問題ありますか」
「それよりも、僕たちは事務所で最初に受けた依頼をきちんと終わらせなければ」
百合はタクヤの視線に気づいて振り返った。
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