Ⅳ 4
「キースって彼女のことなんですか」
「そう呼ばれてることは知っていますけど」
居酒屋はざわついている気がして、カプセルホテルの近くのワインバーに入った。
「よく知らないんです」
「インデペンデントも」
男は赤ワインを一口飲んだ。
「全部後からわかったことで」
タクヤはレッドチェダーをかじったあとに白ワインを口に含んだ。
「あとの祭りですか」
「どうしてなんでしょう」
「なんでこんなにつきまとわれるのか」
「お金が欲しいわけでも、物が欲しいわけでもないのに」
「いじめですね」
「教えてくださいよ。どうすれは解放されるのでしょう」
男はしきりに店の外の様子をガラス越しに窺っている。タクヤは場所を移動しようかと男に言った。
「いいですよ」
男はおびえた目でタクヤを見ている。
「それでどうしたの」夢見はピザを一切れ摘み上げた。
「カプセルに帰したよ」
「あそこは男性専用だからね」
「上野は彼女からの情報」
「それは僕の感かな」
「なかなかいい選択だったと思うよ。あの娘には想定外だろうからね」
「ホントに」夢見はコーラを飲みながらニヤニヤ笑う。
「逃げるかな」
「どうだろう」
「何も知らない新入社員とよろしくやろうと思ったんでしょ」
「自業自得」
いつになく楽しそうな夢見の様子をタクヤは見ていた。
「ねえ、ところであの依頼人はどうしたの」
「フミマロ、見つかったよ」
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