Ⅲ 6

「フミマロも実家に帰ってるのかな」

「さあどうだろう」

 夢見は回鍋肉のバラ肉を箸でつまんでご飯の上に置く。タクヤはレンゲですくったあんかけチャーハンを息を吹きかけて冷ましている。

「猫舌なんだから、普通のチャーハンにすればいいのに」

 夢見はバラ肉といっしょにご飯を口の中に入れた。

「実家ってどこなの。ミチノシタ」

「青森らしいの」

「足が出ちゃうね」

「引き籠ってるならしょうがないんじゃないの」

「美佐さんが言うように手付はもらってるんだから」

「そっちはどうするの」

「あとは依頼人に任せるしか」

「でもおかしいんだよね」

 タクヤはようやくあんかけチャーハンを口の中に入れる。

「真紀ちゃんがコスプレヘルス嬢ってわかったのは最近じゃない」

「彼が姿を消したのは僕らがここに来る前だし」

「ママも依頼する前からわかってたのよ」

「多分ほかの連中も」

 タクヤはちょっと不服そうな顔で夢見を見る。

「迂闊だったって、美佐さん」

「ねえ、事務所の前に誰かいない」

 夢見は《満帆飯店》のドア越しに事務所の前の人影に気づいた。

「お客かなあ」

 タクヤは後ろを振り返る。

「加奈ちゃんだ」

「カナちゃんって」

「昨日バイトを頼んだんだ。《ボステナー》で」

 夢見は鋭い目でタクヤを見つめる。

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