Ⅲ 3

 佐武という少年の情報は《バーントアンバー》の常連からわりと簡単に得ることができた。毎日のように顔を合わせていても話したことなどほとんどないはずなのに。

「三ちゃんは日雇いだから」

「違うよ、マンガ喫茶の店員」

「それはもうやめたよ」

 彼らは同じ店の中にいてもメールで会話していたようだ。まるでチャットルームにでもいる感覚。彼らの会話を聞きながらタクヤはそう思った。

「チャットはやらないよ」真紀がタクヤに言う。

「みんな自分の時間があるから」

「立ち入られるのは嫌い」

 そうはいっても、タクヤにはここにいるみんなは楽しんでいるように思えた。

「三ちゃんのことはみんな心配してるの」

 タクヤはいつになく鋭い真紀の視線を感じる。誰も佐武の本名は知らなかった。彼らにしてみれば名前なんてどうでもいいのだ。

「誰かいるかなここでバイトしてくれる人」

 事務所に入ってきた美佐にタクヤが言った。

「出来れば女の子がいいんだけど」

「おばさんじゃダメ」

 タクヤがちょっと微妙な顔で美佐を見る。

「それより佐武君の方はどう」

「一応当たれるところは当たったけど、特に新しい情報は」

「30くらいなんだけど、いいかな」

「ミーちゃんと同じくらい」

「見た目は少し若いかな」

「それはミーちゃんに言わない方が」

「今日もいないんだね。またお金にならない仕事なの」

「それが、今日は犬捜しなんだ。そこそこお金にはなる」

「それはいいこと」

「一つだけ気になることがあってね」

「明日あたってみるよ」

「女かい」

 美佐はそう言って事務所を出ていく。

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