Ⅱ 5

「浮気調査片付いたんだ」

「まあ片付いたというか」

 夢見はカツ丼の上に軽く七味をかける。

「報告する前にあの子が対象に会っちゃったんだっけ」

「会うっていうより突撃だね」

「まあ、本人もわかってたんじゃないの、ある程度は」

「調査を依頼したって事実が欲しかったんだよ」

「そんなの嘘でもよかったじゃん。お金かかるんだよ」

「そこが彼女のこだわりなのかな」

 夢見は一枚の写真を見ながらカツ丼を掻き込んでいる。

「これ本当にタク君が作ったの」

「カツは近所の肉屋で買ってきたけど」

「お店できるよ。出前のカツ丼なんてちっとも美味しくないんだから」

「取調室の」

「あれは違う。容疑者にそんないいもの食べさせないよ」

「タバコは」

「あれは本当かな」

「でも、今は禁煙のところが増えてるって」

「それにしても、コスプレのヘルス嬢だったとはね」

「あいつ本当に真紀ちゃんに浮気はしないって約束していたみたい」

「浮気っていったって、ほかのお店には行かないってことなんでしょ」

「同じ店でも他の子じゃダメだよ」

「同じ店であの子以外ってできるの」

「普通はないね。でもあいつならわからない」

「そんな奴なの」

「そんな奴」

「それじゃ良かったじゃない、あの子にとっても」

「まあね」

 夢見はカツ丼を食べ終えて、熱いお茶を湯呑に注いだ。

「おいしかった」

「これからはご飯作るのは、タク君にしてもらおう」

「ご飯はミーちゃんって決まってたよね」

「大丈夫、犬の世話もできるんだから」

「それより真紀ちゃん、あの百合って子知ってるらしいよ」

「そうか。同業者だもんね」

「ついでに言うとあの男も」

「それはいいね」そう言って夢見は熱いお茶をすする。

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