Ⅱ 1
タクヤは自分の前にいる女性の目の焦点がどこに合っているのかずっと考えている。タクヤにはぼんやりとどこも見ていないように思えた。女性のとなりには付き添いと言う感じでバーントアンバーの女主人がすわっている。
女性は二十歳前後で変わった服を着ている。ゴスロリというものに似ているようでちょっと違うような感じ。そもそも女性はノーメイク、すっぴんだ。こういう服を着る人はメイクにもこだわっているはずなのだが。
「彼女は」
女主人がタクヤにきいた。
「調査に出ています」
「本当に調査してくれるんですか」
か細い声が聞こえる。タクヤは向かいの女性がしゃべったこと自体に驚いている。相変わらず焦点の定まらない目をしながら。
「どんな依頼か話してくれます」
「バカにしないでください」
怒ったのだろうか、少し声が大きくなっている。見透かされたのだろうかとタクヤは思った。
「お店のほうはいいんですか」
タクヤが女主人にきく。
「いいのよ、あの子たちは。適当にやるから」
この女性も常連客の一人でタクヤは何度も見たことがあった。だいたいこんな感じの人たちばかりだから特に目立った存在ではなかったが、こうしてここにいるとその異様さがよくわかる。
「あたし邪魔かしら」
「そんなことない」
向かいの女性が無表情につぶやく。
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